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『情報の哲学のために』を読みました

Amazon でポチり、1 ヶ月ほど積読の儀式を経てから『情報の哲学のために』を読みました。

本書は以下の章で構成されています。

・はじめに
・第 1 章 情報革命
・第 2 章 情報のことば
・第 3 章 数学的な情報
・第 4 章 意味論的な情報
・第 5 章 物理学的な情報
・第 6 章 生物学的な情報
・第 7 章 経済学的な情報
・第 8 章 情報の倫理学
・エピローグ
・<解説に代えて>

https://www.keisoshobo.co.jp/book/b586333.html より引用

もう面白そうな感じがしますよね。

出版元の勁草書房さんのサイトで解説ページ(<解説に代えて> の一部)が公開されており、本書の概要に触れることができます。

本書はタイトルどおり情報がテーマである。情報とはいったいなにか。この問いは、実に簡単なようでいて、実に難しい。普段暮らしているうちは知っているように感じているが、いざきちんと説明しようとするとわからなくなってくる。そんな類いのテーマである。

(中略)

多種多様な情報を体系的に整理しようとする試みはあまたあるが、本書はフロリディの視点から複数の情報の結びつきを示し、一般の人たちを読者層として想定してコンパクトに書かれた案内書であるといえる。

https://keisobiblio.com/2021/07/27/atogakitachiyomi_johonotetsugakunotameni/ より引用

ほら、面白そうですよね。

読書メモ

# 第 1 章 情報革命

日常生活がこのように変容していく結果、ますます(時間的に)同期化、(空間的に)非局在化し、相互に関連し合う(相互左右する)情報圏でわたしたちは生活を営むことになる。

『情報哲学のために』(P.26) より引用

いまやあらゆるモノが情報化されて情報圏 (インフォスフィア) で人々は生活しており、かつ人工物 (IoT) も住人としてコミュニケーションをとっている、というものです。
※「いま」と書いていますが、原著 が出版されたのは 2010 年です。


# 第 2 章 情報のことば
「データとはなんぞや?」と General Definition of Information (GDI) に沿って説明されます。そこから「情報概念の見取り図」が提示され、情報の体系化・ラベリングがなされます。以降の章で様々な分野へ話題が広がっていきますが「いま触れているのは見取り図のココの部分」と説明があるので迷子にならずにすみました。


第 3 章以降は、それぞれの分野から「情報」をフレーミングしています。

# 第 5 章 物理学的な情報
熱力学の法則(制約)が情報処理にも適用できる考え方であると紹介されています。例えば、エネルギー保存の法則 (閉じた系の中ではエネルギーの総量が一定)から「情報を処理するには外部からのエネルギー投入が必要であり、投入エネルギーを減らすためには処理の効率化を。」と触れられています。

というように、その章の学問の見地から「情報」を眺めていくのが面白いです。

# 第 6 章 生物学的な情報
「遺伝子は事実的な情報か?指令的な情報か?」のトピックがあり、「IaC の宣言的モデル・命令実行型モデルの話だ」とか思ったり。


# 第 7 章 経済学的な情報
情報自体の価値について、ビジネスと紐付けやすい考察がありました。一度情報を利用可能な形で生成したなら、基本的にはどんどん流通させた方が効用が最大化される背景ですとか。

原著も買ってみた

原著は『Information: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)』とのこと。 Kindle 版も提供されています。

本書の中で “dedomena” という言葉が登場する箇所がいくつかあるのですが、なかなか頭の中に入ってこず。。原著での表現を直接確認したくなってポチりました。

と、情報圏 (インフォスフィア) の説明事例として本書では攻殻機動隊の例が出てきたので、原著でも登場したのか気になったのも購入理由です。
そして原著には登場しませんでした。この例の追加で、私は情報圏をビジュアルとして理解しやすくなったので、こういう翻訳の仕方もあるんだなと。

情シスは読んでおいて損はない

「情報」について考えるときに、その振り幅を広げることができる本でした。各学問の専門性を含む話が続くのですが、難解でとっつきづらい印象は受けません。その点に気をつけて翻訳作業をされたそうで、本当にありがたいです。

実務のレベルがいきなりアップするわけではないですが、教養として多方面の知識をもっておくことは何かで行き詰まったときのヒントになるはずなので、情シスに携わる方にはオススメしたいです。「情シス (情報システム)」->「組織をとりまく情報を体系化する」役割だと思っているので、「情報」と向き合う引き出しはこんなんなんぼあってもいいですからね!

本棚の見えるところに置いて、折に触れて読み返そうと思います。

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