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Rob Gourlay著:Walking in the footsteps of Paul Chambers

どうも。リーマンコントラバシストです。今回はジャズベースの教則本のお話です。今回取り上げるのは「Walking in the footsteps of Paul Chambers」。

ポール・チェンバースといえば最も有名なジャズベーシスト。ジャズを聴き始めた頃にCDレンタルすると全部のアルバムのベーシストがポール・チェンバースでした。ジャズってめっちゃ狭いコミュニティなんだな、と思いましたが、当時それぐらい大人気のベーシスト。

音質、ビート、メロディ。全てが誰が聴いても間違いないジャズなベース。完璧です。でも実際に切り取ってコピーしてみると意外と所謂典型的なウォーキングの手法とは異なります。つまりあまりオーソドックスではない。音源を通して聴くと気持ちいいのに自分で弾くと気持ち悪い。なぜなのか。

通常の感覚ですとコード感を提示するために1拍目にルートを置くのが落ち着きます。どんなジャンルでもだいたいのベースのそうなります。ところがポール・チェンバースは1拍目から3度(ミ)や5度(ソ)を置く頻度がかなり多い(2拍目にルートを持ってきてルート感を補うことも多い)。

ジャズはコーラスを延々と繰り返すのが基本型です。さらにスタンダードとして同じ曲ばかりを演奏します。演者も聴衆も曲のコード感に慣れてくるので、1拍目の音(この場合はルート)を予想します。そこで1拍目からルートを外すことで意外性を与えることができます。その代わりサウンドが不安定になりますので、バンドサウンド全体を俯瞰的に捉えていないとしっくりこないのです。私がコピーしてしっくりこないのはフレーズだけを切り取っているからです。

録音メンバーはおそらく全員がアルペジオを前提としたビバップをマスターしていました。つまり各自自身でコード感を表現できていたのでしょう。その意味でも1拍目にルートを置く優先順位はやや低く、その意外性が却ってバンドに求められたのかもしれません。もっと言えばメンバーの力量が高ければよりポール・チェンバースはより挑戦でき、結果的に素晴らしいサウンドとなって、現存する音源の多くがそのような演奏となったのかもしれません。

彼は若くして亡くなったので活動期間は1954~1969年の15年間。この時代はまさにジャズのサウンドが急激に変化していった時期。急速に変化するサウンドに対して柔軟に寄り添うようでしっかりと土台の役回りがこなせたベーシスト。ほんとにすごい。

譜面はこちらで購入できます。ソロは収載されていません。

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こちらはルート1拍目派。魂のベーシスト サム・ジョーンズのコピー集はこちら。

コントラバスの自宅での練習環境づくりのアイディアはこちら。



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