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COVID-19にさらされた可能性があります

ゴールデンウィークに入った5月2日。
いつものように家族誰より早く目が覚める。
いつものようにスマホを見ると6時ちょうど。
しかしそこにはいつもと異なる通知があった。

「COVID-19にさらされた可能性があります」

誰もがオワコンだとおもっている接触確認アプリ「COCOA」からの通知だった。
慌てて飛び起きてアプリを起動。「陽性者との接触確認1件」となっている。
ご存じのように「COCOA」はBluetoothを使用し、陽性者と1m以内15分以上接触した可能性を検知している。
陽性者との接触一覧を確認すると「2021年4月27日1個」との情報。
27日の行動を思い出す。「27日は火曜日・・・って事は・・・あっ!」どこで接触があったのかはすぐにわかった。
その日はテレワークをしており、外出したのは1度きり。俺がテレワークをする事で妻に対しストレスを与えないように考え「ランチでもするか?」と言って訪問した天ぷら屋さんだけだった。
4人掛けのBOX席、俺の背中合わせには20代と思われる女性2人組がいた。あの2人のうちどちらかが陽性者である可能性が高い。
シチュエーションを考えると一緒に食事した人が陽性者だった訳ではないしリスクは低い気がするが、マスクを外してなおかつ唾液の飛散が発生しやすい状況のため自分自身の感染リスクがあるのは間違いない。

自分自身の自覚症状はゼロ。ただアプリで通知が来た以上保健所への連絡は必要と考え、日曜祝日でも電話受付をしている、
「京都府帰国者・接触者相談センター」へ電話。朝6時過ぎだが通話中になる。TV越しの話だった内容が突然目の前に鮮明に広がる。
何度かリダイヤルしてみたが通話中は変わらない。とりあえず体温を測ってみる35.9℃。
「もしものため」と考え購入した「パルスオキシメーター」で血中酸素濃度を測定97%。どちらも普段と変わらない。
再度電話、今度は繋がった。

係員「もしもし、こちら帰国者・接触者相談センターです」
自分「お疲れ様です。COCOAで陽性者との接触連絡を受けたので連絡したのですが・・・。」
係員「COCOA?」
自分「はい。接触確認アプリです」
係員「・・・あぁCOCOAですね。わかりました。少しお待ちください」

なんで待つんだ?対応マニュアルあると思うがデォルト対応できないレベル位アプリからでの連絡はないのか・・・。

係員「・・・お待たせしました。COCOAで接触確認があったんですね?」
自分「はい、そうです」
係員「接触日はいつになってますか?」
自分「4月27日です。」
係員「4月27日ですね・・・。今体調の方いかがですか?発熱や咳はありますか?」
自分「いや、全くないです」
係員「わかりました。お住まいはどちらですか?」
自分「〇〇市です」
係員「〇〇市ですね・・・〇〇市だと保健所の管轄が〇〇保健所になります。そちらに情報回しますのでお名前、ご住所、電話番号お願いします」
自分「(必要情報を全て伝える)」
係員「今日は日曜日なので少し遅くなるかもしれませんが〇〇保健所から先ほどの番号に連絡が行きますのでその指示に従ってください」
自分「わかりました」

地元の保健所から連絡が来るらしい。日曜日は電話の受付は行っていないが業務は実施しているらしい。
状況を考えれば当然なんだろうけど、ただの風邪でも電話をかけてくる人は多くいるだろうし、保健所の方々もなかなかハードだ。

普段は自宅内でマスクなど着用しないが、マスク着用。29日に家族で鍋を食べているし、1日にも俺が食べていたドーナツを子供たちにが欲しがったので一口食べさせているし、もし感染しているなら我が家は全滅だと思うのだが、それでも気持ちの問題でマスク着用。

10時前にスマホを見ると不在着信。電話番号的に管轄の保健所である可能性が高い。着信から3分後に折り返す。

係員「はい、〇〇保健所です」
自分「私〇〇と言います。先ほどこの番号からお電話を受けたので折り返しさせて頂いたのですが・・・」
係員「〇〇さん?ちょっと待ってくださいね」
  (電話越しに周囲の職員へ)〇〇さんって人から電話かかってきてるけど誰かかけたか?・・・誰もいない??
  「〇〇さんスミマセン、誰がかけたかわからないんで少し確認させてください。お名前と電話番号お願いできますか?」
自分「はい、わかりました。(必要な情報を伝える)」
係員「そうしましたら確認してお電話いたしますので少しお時間下さい」

保健所かなり混乱してますね・・・。まぁ当然か。
8分後電話がかかってくる。先ほどとは異なる係員だ。

係員「〇〇保健所ですけど、〇〇さんですか?」
自分「はいそうです。〇〇です」
係員「申し訳ありません。何の件でお電話したのか確認したのですがわかりませんでした・・・そちらでどのような件かわかりますでしょうか?」

おいおい・・・電話かけてきたのに何の件かわからないとかそれ大丈夫??

自分「私にCOCOAで陽性者との接触確認があり、その件で今朝6時過ぎに京都府の帰国者・接触者相談センターに連絡したのでその件かと思います。」
係員「帰国者・接触者相談センターに連絡されたという事ですね?」
自分「そうです。その際管轄の保健所から連絡が行くとの話がありましたのでその件だと思います」
係員「そうですかわかりました・・・。えっと・・・陽性者のこころさんと接触されたのですね?」

はっ??さすがにこの質問にはびっくりした。しっかり説明が必要なようだ。
少しキレ気味になりながら説明。キレ気味になった自分には反省が必要だと思うが・・・。

自分「厚生労働省が推奨されている接触確認アプリの「COCOA」がありますよね?そのアプリで今朝陽性者との接触があったとの連絡を受けました。4月27日に陽性者との接触があったという連絡です。アプリで接触が確認された場合は公費でのPCR検査を受けられる事になっていますし、こちらとしては保健所からはPCRを受けるための方法に関して連絡頂くという認識なのですが。」
係員「あぁ・・・接触確認アプリの「COCOA」ですね。わかりました。それで接触が確認されたので連絡頂いたという事ですね」
自分「そうです」
係員「わかりました・・・少しお待ちください」
(電話越しに周囲の職員へ)〇〇さんの連絡って受けてる?・・・受けてない??接触確認アプリらしいけど検査受けてもらったらいいんやんね?・・・わかった。
係員「センターからの連絡は来てないんですけどPCR検査を受けてもら・・・(えっ?来た??よかった!)〇〇さん!センターから連絡きました!PCR受けてもらいますね!」

そもそもあなた達がセンターからの連絡受けて私に連絡したから折り返したのだよ。メールなのかなんなのか知らないけど、連絡あるに決まってるじゃん・・・。
こうなるとオフィシャル発表の色々な情報に関しちゃんと管理できてるのか不安になるわ。

係員「PCR検査受けてもらいたいので、今日の夕方って〇〇保健所に来れますか?」
自分「はい。伺わせてもらいます」
係員「そうしましたら・・・(〇〇さん4時でいい?4時半??・・・4時でいいんやね?)4時に保健所まで来てもらえますか?」
自分「16時ですね。わかりました伺わせて頂きます」
係員「何で来はります?」
自分「車で伺わせてもらいます」
係員「お車ですね?わかりました。お車で保健所にお越しいただきましたら駐車場の奥に〇〇銀行のATMがあるのでちらの近くに車を停めてお待ちください。」
自分「わかりました。車の中で待機していれば良いのですね?」
係員「はい。お車の中で唾液を採取いただき検査させて頂きます。お待ちいただければ検査キットをお渡しするのでお車から一歩も出ていただかずに結構です」
自分「わかりました。では16時に伺わせて頂きます。」

とりあえず公費でのPCR検査が決定した。
今後の事を考える。GW中は元々外に出かける予定は組んでいないし、前日に大量にDVDを借りてきている。
その点は問題なさそうだ。問題になるのはやはり食事か・・・。
陽性と判断されると家族全員濃厚接触者になるのでアウト。その場合どうしようもない。
陰性と判断されれば特に気にせず今まで通りの生活。いずれにせよ巣籠できるように準備するに越したことはない。
妻がスーパーに巣籠出来るだけの食材を購入しに行く。
(今から考えると俺のリスクと妻のリスクは変わらないのだが、その時はその判断ができなかった。冷静さを欠いていたのかな・・・。)

時間になり保健所に向かう。保健所の駐車場には多くの車と・・・人が溢れていた。
はぁ?なんでこんなに人がいるの??てか、車で待機すればいいんじゃないの??

車を駐車場に停め、周囲の様子を確認。
入り口付近に2人の保健所職員とおぼしき人。
1人は手にリストを持っていて、そこにいる人と会話してチェック、検査キットと思われるものを渡している。
もう一人は検査キットを受け取った人数人に検査方法の説明をしている。
そしてチェックをしている人に向けてソーシャルディスタンスは取られているが並んでいる人々。保健所管内では中学校でのクラスターが発生している事もあり、家族連れが多い。
鼻が出た状態のマスクの子供が走り回り、知り合いと思われるママ同士が手を振り合う。

俺には地獄にしか見えなかった。

なんだコイツら?京都府内のPCR検査陽性率は10%程度。ここにいる人の10人に1人は陽性になる計算。なのに呑気な雰囲気。
今、ここで、感染するというリスクを感じないのか?自分が死に至るかもしれない感染症がそばにあるという危機感を駐車場にいる人たちからは俺は微塵も感じなかった。
あなたの前に並んでいる人は無症状の感染者かもしれないとなぜ考えられないのか?

その温度差が怖かった。

これが今の日本の実態なのだ。感染のリスクと真摯に向かい合い自分を、自分の大切な人を守ろうとする多くの人がいる一方で、「自分は大丈夫」「自分はかかっても死なない」と考えているのか、PCR検査を受けるという場面でも危機感を持たない。
想像力の欠如なのだろうか?理由はわからないが俺にはあの場所で危機感を持たずに行動している人たちが全て凶器に見えた。
凶器なのか狂気なのかその両方なのか・・・。

5分、10分・・・時間が経過し、地獄の景色に見えた列はなくなり、検査キットを持つ人がバラバラと保健所の建物の裏に行き帰ってくる。
どうやら検査キットを受け取り唾液を採取した後は建物の裏で回収しているようだ・・・。
列はなくなったがリストを持った係員が車の方に来る様子はなくあたりをキョロキョロ。検査キットはいくつか残っている。電話では「車の中にいてください」という話であったが、混乱している保健所。待っていてPCRを受けられないのでは意味がない。
これは行くしかないようだ。周囲に人がいない事を確認しタイミングを計り車を下車。リストを持った職員に近づく。

自分「スミマセン、〇〇ですけど」
職員「〇〇さんですね・・・(リストを確認し)、はい、じゃあこれが検査キットになります。検査説明はそちらの職員から聞いてください」

と、検査キットを受け取る。
別の職員からの説明を受ける。キットに入っている容器にストローを使って唾液を採取。泡の部分を除き容器の線の引かれた部分まで唾液を採取。採取後は建物の裏で回収する。

車に乗ったまま検査という話からは程遠いですね・・・。キットを見ると容器には俺の名前と番号。この番号で俺は管理されるのですね・・・。キットの中に入った説明書に検査結果は2~3日後に判明とある。
症状のあった知り合いは大阪の病院での検査だが検査から2~5時間後に判明と言われ4時間後に検査結果が出ているので、検査に関してちゃんと優先順位付けは行われているようだ。
梅干を思い浮かべながら唾液を採取。建物の奥に提出。提出する際は容器をそのまま紙コップに置く形。保健所の人々の感染へのリスクヘッジを考えると、先ほど目の前で繰り広げられた地獄のような景色との温度差を強く強く感じた。

検査結果が判明するまでは、もし陽性だった場合の対応を考えたり、様々な事を調べながらステイホーム。
コーヒーを飲むときは「匂いや味を感じなかったらどうしよう」という不安を感じながら、「あぁいい匂い」といつも以上にコーヒーの匂いに喜びを感じる日々。

その中で考えた事。「接触確認アプリって本当は有効なのに・・・」という事。

俺は完全に無症状。仮に陽性であったとしても普通に行動してる。どこかに遊びに行くことはなくとも買い物や外食はしていただろう。
もし、それをしているのであれば、「自分が気付かないトコで人を死に至らしめる事のある危険なウイルスを撒く可能性があった」という事実。これって恐怖でしかない。自分が自分の意図とは違う形で他人の生死を左右する可能性があるのだ。ある意味「ウイルスに乗っ取られた体でウイルスをばら撒く」それがこのウイルスに一番恐怖しなければならないトコなのだと思う。陰性であった場合は「心配したし、アプリから連絡なければ普通の生活だったのに」という思いを持たなくはなかったが、「自分が思っているよりもはるかに身近に危機がある」という事を感じるいい機会になった。
俺ですら「オワコンなアプリでしょ」って思っていたし、保健所の人々もアプリで接触確認があったという連絡はほぼ受けていない状況のようだが、一人一人が高い意識でアプリを使っていれば今のような感染拡大は抑えることができたのではなかったかと思う。
俺が見た地獄のような景色のように個人個人の意識の違いといえばそれまでだが、「今よりコロナ以前が良かった」という思いはみんな共通だと思う。
政治家たちが過去に実施してきた施策には最適ではない施策があったのは間違いない事実。
でも、日本は日本人が持つ倫理観により世界の中では感染を抑制できている事や国民皆保険のおかげで死者が少ないのも事実。
政治家たちは過去の誤りは認めた上で、今どうするのが良いのか、将来どのような日本にしていきたいのかを語るべきだと思う。お願いばかりしてても「はい、わかりました」ってならない人もいるよ。

ここまで読んでくれた人で「接触確認アプリ(COCOA)」をインストールしていない人がいたら、ダウンロードしてほしい。
全ては「あなたが殺人兵器にならないため」だと思って欲しい。

そして今、私のPCR検査結果が判明しました「陰性」でした。

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