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ヴァンパイア:ザ・マスカレード『ニューオリンズ・クロニクル』(7)血闘

シーン1:亡霊街

 トレメールの祭儀所から戻る途中、血盟はマリー・ドリシェットとともに善後策を協議する。マリーの真意は杳としてしれないが、クリストファーの処断を望んでいることだけは確かだ。

 そのとき、先覚を持つロジェはニューオリンズ・ダウンタウンの街路に異様な光景を見る。それは、ゆらゆらとした白い人影が多数、道をさまよっている姿だった。明らかに普通の人間ではない。亡霊のたぐいである。マノンの策謀によって、ニューオリンズの生と死の境界がゆらいでいるという話に真実味が出てきた。

 問題の中心にいるのはミニストリーの女血族マノンである。バヌ・ハキムとして彼女の暗殺を請け負っているムスタファは、自分がダッチを通じて叛徒に鞍替えすることで、カマリリャの咎人狩りによらずにマノンを排除する方策を提案。これにのった血盟は、ダッチと談合することに決する。

シーン2:寝所にあらわれた者

 解散した後、ロジェは自分の寝所に戻る。しかしそこには先客がいた。他ならぬマリー・ドリシェットである。彼女は秘宝「ネルガルの牙」を返してもらいに来たのである。クリストファーを殺すためにそれが必要だというマリー。それはマルセル公子の遺言を果たすためだという。

 渋るロジェに対してマリーはためらいなく《支配》の訓えを放つ。とっさに視線をはずしてそれに抗うロジェ。憤激して飛びかかるマリー。それをいなしながらロジェは冷静に説得を試みる。夜明けが近いこともあって、マリーは引き下がった。

シーン3:叛徒との密約

 翌晩、アイザックの教会からは、幽霊がらみの事件の解決を求めて、信徒たちが殺到していて困っているという連絡が入る。この現象は広範囲にわたっている模様。

 そして、ダッチとの会合に臨む血盟。昨晩の一件もあり、「ネルガルの牙」はアイザックが持ち歩くことになる。そして再び「マホガニー・ホール」へ。

 ジャズ・クラブでは、ダッチとサイズが血盟を待ち受けていた。サイズは不信感を隠しもしないが、とりあえずは黙っているようだ。

 ロジェから、マノンが危険であり、排除するしかないかもしれないこと、しかしカマリリャのアントニオ公子が発令した咎人狩りによって彼女が討伐されるのも都合が悪いこと、そのため、ムスタファが叛徒に鞍替えしてマノンを討つことで、叛徒が裏切り者を討伐したという体裁を取れないか、という提案が説明される。

 サイズは同志を討とうという提案に憤激。ダッチは、マノンを討つためには相応の理由がなければならないので、それを血盟が提供するなら、彼女の排除に同意しようと回答する。

 このとき、「マホガニー・ホール」には何者かの密偵が忍んでいることが判明する。聞き耳を立てられていることに気がついた血盟は筆談に切り替えると、ダッチが血盟とマノンとの会談を設定することで妥結する。

シーン4:狂信者マノン

 かぎまわっているらしい市警のパターソン刑事を抑えるために、ロジェは自分のレストランで市議などの有力者に話をつける。

 アイザックは、セント・ロホ地区の幹部でマノンの子であるアザーカと会談。マノンの暴走を苦々しく思っているアザーカは、血盟の行動を黙認することに同意する。

 そして真夜中。セント・ロホ地区の中にある打ち捨てられた倉庫で、血盟とマノンとの”話し合い”がもたれる。マノンは倉庫内にひとりで現れるが、もうひとり、曲刀を持つ護衛戦士のアバドが影に隠れている。血盟側も暗殺のタイミングをはかるムスタファは影に潜む。交渉役はヴェントルーのアイザックだ。

 マノンは一見すると至極まともな人格のように思えたが、黄金の髑髏の件を持ち出した途端、様子がおかしくなる。彼女が心酔する「イエロー・キング」とはすなわち前公子マルセルのことであり、彼はすでに冥界でヴァンパイアを超える存在となっている、その現世への復活を遂げることが、マノンの大望を達成することになるのだと。そう熱狂的に叫ぶ彼女の姿はどう見ても尋常なものではない。「器」を用意し、「血」を「髑髏」に捧げることでそれは達成されるのだという。

 血盟もこの企みに参加するよう勧誘してくるマノンはすでに一線を越えていると判断した血族たちは、奇襲に打って出る。

 アイザックが「牙」を取り出してちらつかせると、驚愕したマノンは護衛戦士アバドをその回収に向かわせる。二人が倉庫に出たことを確かめたムスタファは彼女を狙撃。一撃ではヴァンパイアを殺すことはできないので、ロジェが押さえ込みにかかる。そこにさらに狙撃。もんどり打って倒れたマノンに、ムスタファは飛びかかって容赦なくその精髄を飲み干した。

(つづく)


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