こんなタイミングでアイドルを見つけてしまった話 ⑥その沼は、最高の物語

前回↓

前回もたくさんの方に読んでいただきありがとうございました。
現場に行って感想を聞こうとしたのですが、話題を振らなかったところ向こうから何も言ってくれませんでした。

あんずさんは自分の話題があまり出てこないから前回の内容に大変ご不満だったようですwww
このように圧を食らったので慌てて今作を書きました。


狂気の「やさいのきもち」

3月11日。
こんな企画が始まった。

戦乱のEmpress(中野の移籍先)とZ3リーグのメンバーが事務所グループ同士のツーマンライブを行うというものだった。その出演権を懸けて、動画をバズらせた人が出演できるという企画。
イベント自体にも興味があったが、平日ど真ん中で開始時間には全く間に合わない。
改めての説明になるが、私は房総半島に住んでいるので都内中心部に着けるのは定時退勤後だと19時が精一杯だ。地下アイドルのライブで開始から2時間も捨てるようでは話にならない。

ただ、こういったイベントが開かれているうちはチャンスがまたやってくる。それに、元Z4Aブロックの子しか顔と名前が一致していないし、Z3のメンバーをさらに覚えるにはいい機会だ。この企画だけでもちゃんと追ってみるか…

これはなに?????????

狂気なのか???いや、これは一周回ってこの人の正気なのか???←勘が鋭い
全員の動画を全て見たが、ネタに走ったのは数人。その中でも、私にとってはこれが飛びぬけて面白かった。
正統派のネタ動画を作ってきた、枢木もよかった。
のちにデジタルタトゥーと笑い話にするMIWOOも飛ばしてきていた。
しかしこの動画はなんだ?初手から「や゛さ゛い゛の゛き゛も゛ち゛」って…
そしてとにかく顔の主張が凄い。全盛期のおもしろFLASHやニコニコ動画のMAD動画を彷彿とさせるガバガバ編集。しかし勢いは圧倒的。13秒から15秒の区間だけすごくかわいい。

おもろいやん!!!!!

読者諸君は、こういう動画を見てこの感想を持つあたりこの男も大概おかしいことにお気づきだろうか。言うなれば「同じ波長」を感じ取ってしまったのだ。この動画の発想が浮かぶ人間は、本物の天才か、本物のバカの2択しかいない。そしておそらく、私は前者だろうと思っていた。

アイドルという神聖な「物語」

突然だが、人はなぜアイドルを応援するのだろうか?
いきなり哲学的な問いを投げた。答えは色々あっていいと思う。

私はこういった思想を、WUG(Wake Up, Girls!)で植え付けられた。

画像1

WUGの世界観には、原作者である山本寛氏のアイドル観が強く盛り込まれている。その中に「アイドルは物語である」という言葉がある(劇中に登場するセリフ)。
その後の説明は特にないが、私は自身がアイドルオタクになり、様々なことを経験していく中でこう解釈した。

アイドル自身が持つバックボーン、経歴、これからの目標や叶えたいものに対して、ファンがどう寄り添い、どうやって共有していくか。そこに「物語」が生まれ、1対多、そして今の時代は特典会などの接近を通して1対1の無数の物語が醸造されていく。

小難しく書いてるけど、結局のところはファンが共感できるかどうかが大事な部分。
「顔面がいい」「裏でつながりたい」とかそういう人もいるんじゃないの?と言われそうだけど、そういう人も中にはいる。私はそうではなく、たぶん相当にアイドルを神聖化しているというだけ。


楠あんずの「物語」

さてここであんずの話に戻る。
楠あんずというアイドルは、どういう物語を持っているのか?
この段階では全く知らなかった(実際、今も全部分かっているわけではない)。ただ確実な情報として当時分かっていたことは、前世があったということ。そして、アイドルから離れて、何らかの理由でゼロプロに戻ってきたということ。

その姿は、2022年の自分に重なった。
プロライターとしての東京五輪の夢を失い、財産もパートナーも推しも失って、それでも人生を生きていく。新しい目標を見つけて、誕生日にアニクラを主催するという物語を始めた。

夢破れた人間が、もう一度同じ場所に戻ってくることがどれだけ難しいか、私は知っている。
私は、スポーツライターとして大成する夢を放棄したからだ。

「再起」「復活」がテーマだった2022年前半の私にとって、楠あんずは共感しやすい存在だった。自分が興味を持てて、自己を投影することができるアイドル。理由は分からないが、またアイドルをやりたいと思って真剣に頑張っている。きっとゼロプロには素敵な子がたくさん眠ってるんだろうけど、まずこの子なんじゃないのか?
この言葉自体はあまり好きではないのだが「推して損はない」とはこのことではないのか?と、この時の自分は思っていた。悪くなる方向性が全くと言っていいほど見えなかった。


そしてもう一つ、この企画であんずのことが気になっていた理由があった。対バン相手が戦乱のEmpressであるということ。
戦乱には、中野華恋がいる。
中野とあんずは、Z5-D1でチームメイトだった。

ゼロプロは最初の半年間で多くのアイドルが卒業して(辞めて)いった。そんな中、初代Z5-D1は全員がアイドルとして活動を続けている数少ないチームだった。あんずの場合は、Z4もキャサリン以外全員チームメイトが現役のまま(これは、当時から半年経った今でもそう)。
あんずを取り巻く環境は、ものすごく恵まれている。
そして、今回は元チームメイトであり一人の女性として憧れる中野と同じステージに立てるまたとないチャンス。中野が移籍してしまった今、タイテ被りはあっても同じ瞬間に同じステージにいられる可能性はほとんどなくなってしまっていた。

ここで共演することに、さらなる物語がある。
そう思った自分は、この企画であんずを応援することに決めた。

自分で決めた推し候補だから

動画を見ながらこんなことを考えていたところ、一件のDMが来た。おきゃろだ。

画像2

さすがのおきゃろだ。枢木の支援目的。こういったところの根回しはすごい。既にゼロプロに興味のあった自分には何も言わずともこういう連絡が来る。

だが、自分はこう返した。

画像3

※画像は切り貼りして編集しているので切れてるところありますが、一連の会話です

A3なんて書いちゃって、ゼロプロの階層システムもまだ分かってない頃の私だ。初々しい。
私は、勝負に徹するときは冷酷だ。既にヌマトークイベントでの私を見ている人はよーくよーく分かっていることでしょうw
自分のRTやいいねを他の子に1票も渡したくないと思ったので、7年間で初めて理由なくおきゃろのお願いをはっきりと断った。どれだけ世話になったかわからない人のお願いを、金銭や時間的な制約以外の個人的意向で断ったのはこれが初めてだった。

3月12日、23時50分。
明日のデカマクラPart.5を前に、私はまだできていない自分のDJのセトリを作りながら、RT数、引用RT数、いいね数の推移を見守った。こんな時のために、スポーツライターアカウントや株式投資用のアカウントなどはあえてRTせずに「残弾」を残しておいた。
結局、その残弾は使わずに済んだ。残り10秒まで誰もインプレッションが動かないことを確認して、私は手を止めた。24時1分、数字が動かなかったことを確認。万が一があった場合に運営にごねるためのスクショも全て押さえて、勝利を確信した。手元の統計が間違っていなければ、あんずは5位すれすれで、おそらく10票差程度で通過したと。


夜風を浴びたくなって


3月13日。

デカマクラPart.5は、大成功に終わった。
前日までtwipla参加登録は1人。死を覚悟したが、終わってみれば演者6人にお客さん7人。駆け出しのイベントとして上々のスタートを切った。反省点は多かったが、初イベントゆえの準備不足がほとんど。改善は容易で、これなら7月10日もやれるだろう、そんな期待感を持てる一日だった。

イベントは18時に終わり、撤収も含めて18時半にはほぼ全ての用務が終わった。初主催なのでお酒もほとんど飲んでいなかった私は、その後出演者やお客さんと昭和通り口で少し談笑するも、それもしばらくして終わって19時前には皆三々五々散っていった。飲み会に参加しようとも思っていたが、この日自分は別の様々な可能性を検討していた。

簡単に言うと、ご満悦だった。このまま、まっすぐ房総に帰るのは少しもったいない。前日の睡眠時間は3時間しかなかったので普通に考えるとおかしいはずなのだが(?)、ハイになっていた。もう少しだけ夜風に打たれたいなと、そう思った。

きっと運命が存在するとしたら、こういうことを言うんだろう。
この日、あんずも中野もハチ公でビラ配りをしていた。
ツイート時間は、秋葉原を出ようとした直前だった。

加えて、池袋リヴォイスで遅い時間にZ4A(とろろ)のライブがある情報も掴んだ。
終電までの時間を計算すると、全てが、綺麗に回せる。
何も言わずに、行って驚かせよう。
普段オタク友達に襲撃しているノリで、渋谷に向かった。


ずぶずぶ あんず沼

※以降の全てのnoteでの推しとの会話は、記憶に基づくものなので微妙な言い回しが違う可能性が高いです。雰囲気をお楽しみください

19時40分。ハチ公前。
アイドルに興味なさそうな普通の人のフリをして、わざとらしくあんずからビラをもらう。
「私、アイドルやってるんですけど、ゼロp…」
「楠あんずさんでしょ!知ってるよ!ぼく誰だかわかる?」
意地悪な質問をした。
あんずは、答えられなかった。
「ぴろーだよ」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ私も会いたかったんだよ!!!」

警察が来てもおかしくないくらい叫ばれた。

そのあとは、自己紹介とか他愛もない話をした。
話の途中で、中野も召喚した。3人でわいわい話した。ラストライブでチェキを撮っていたのであんずが中野にぴろーの特徴を聞いていたらしい。中野は「普通のオタク」って答えたみたいだがw

中野を元の場所に戻して、もう少し話をする。なんで来たのかという話になり、DJの話をした。この日は、デカマクラ5のアーカイブがまだTwitchに残っていたので、つい2時間前にプレイしていた自分の動画を見せることができた。
「すごいねー」
あんずは今の自分を受け入れてくれた。アイドルなんだし商売トークでしょ?って言われたらそうなのかもしれないけど、お互いに知り合ったばかりで距離も縮まってない状態の会話なので、本音が逆に見えやすい。そこに裏は見えなかった。

そして今後の話になった。自分の3月の予定は驚くほどに埋まっていた。
「忙しいのでそんなに来れないと思うけど、またライブも見に来るね」
「ありがとう!来れるときに来てくれたらいいからね!」

この言葉遣いで、ああ、この子だなと確信を持てた。それほど、大きい言葉だった。オタク心理をよく分かっていることがありありと伝わる言葉だったからだ。

ゼロプロは成果主義である以上、多少強引にでも購買を勧めるような姿勢の方が本当は正しいのかもしれないし、そういうアイドルさんはたくさんいる。しかし、そういう売り方は個人的に合わない。エンターテイメントを提供する側が強要をするのは、価値観に合わない。
それに、「推しが言ったから~」は効力が強力過ぎるがゆえに、病む原因になりやすい。オタクはすぐ無茶をする。
それが、「来たい時に来てくれればいい」場合、現場に来ることも無理することもこちらが勝手に好きでやっていることになるそこに義務が生じなくなる。

この言葉で、私の心は軽くなった。キャサ、とろろと既に枠を増やしまくっていた自分も、この子を応援しない理由が本当に見当たらなくなった。推して損にならないどころか、すごく楽しそうだ。
この時は無意識に処理していた感覚だが、後から振り返ると「感性が合う」とこの段階で本能が理解していたんだと思う。会話が全く途切れなかった。

「じゃあ、4A行ってくるのでこの辺で」
20分ほど話して、私は渋谷を去った。
でも頭の中は、あんずでいっぱいだった。それは盛ったかもしれないが、色々あったこの一日で、会話をここまで覚えてるくらいには、いい思い出だった。

この日からしばらくの間、ずっとずっと、底なしの沼に落とされていく感覚を抱えることになった。落ちていく間、自分は色々なジレンマに苛まれることになるのだが、もう記事が長すぎるのでそれは次回に回すことにしよう。

池袋に着いたタイミングで、あんずの出演が正式に決まった。直接祝えなかったのは残念だったが…


これが、終生をかけて推すことを決めた推しとの、本当の意味での出会いの日の話。


次回↓


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