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【天才】アドリー・ラッチマンの打撃フォームは何がすごいのか

 アドリー・ラッチマン。ドラフト全体一位でオリオールズに指名され、その後プロスペクトランキングでも全体一位になったこともあるスイッチヒッターのキャッチャー。去年メジャーデビューし、その才能を遺憾なく発揮しています。

 そんな彼の左打席がこちら。

 まず特徴としては、テイクバックが小さく(ヒッチで)、トップの位置が低く比較的投手寄りです。

 これはよりコンタクトを重視しているからと思われます。

 一般的に日本人の打者はテイクバックを大きくとり、トップの位置が高く捕手寄り、いわば「ひねる」ことでパワーを生み出そうとするフォームが多いです(いわゆる神主打法など)。他にも足を上げ体重移動を使うことも多いですが、これは日本人特有のパワー不足を補う目的があると思われます。

 しかしそうした場合遠くからバットが出るのでコンタクトがより難しくなり、速球にも振り遅れるというパターンが増えます。特にMLBレベルの速球には対応できないケースが見られます(筒香や秋山はこのパターンかと思われます)。速球に対応するためにもテイクバックは小さめに、トップはより低く投手寄りで、というのは理にかなっているでしょう。

 しかし右投げ(右利き)の左打者は上手(左手)が利き腕でないため押し込む力が不足しがちです。それを補うためにも大きくテイクバックを取りパワーを生み出そうとする傾向にありますが、やはりそれではMLBの速球には対応できません。筒香や秋山といったNPBの右投げ左打ちが通用しなかったのはそうした点もあると思います。

 ではこの「左腕が利き腕ではないのでパワーを生み出せない」という点をラッチマンはどのように補っているのか。その答えはフォロースイングです。

 動画、画像を見ていただければわかると思いますが、ラッチマンの左打席でのフォロースイングはかなり大きなものです。胸がほとんどファースト方向に向いており、バットも一周して左腰のあたりまできていることがわかります。

 これは要するに「ボールをコンタクトしてから、大きなフォロースイングによって最後までボールを全身で押し込んで飛ばしている」ということでしょう。

 つまりは「先にひねってパワーを生み出す」のではなく、「当たってから最後まで腰を入れ、全身を回転させ押し込むことでパワーを生み出している」ということだと思われます。

 これによりトップの位置が低めで投手寄り、かつ「右投げ左打ちに由来する左腕の押し込む力の弱さ」を補っているのでしょう。

 以上のことから、ラッチマンの左打席はコンタクト重視ながらもパワーを生み出せ、速球にも対応できるという、右投げ(右利き)の左打席としては理想に近いフォームだと私は考えています。

 近年NPB出身の右投げ左打ち打者はMLBで苦戦している傾向にありますが、MLBではこの点を意識することで打撃が向上するのではないでしょうか。

 今シーズンからMLBでプレーしている吉田正尚もまた右投げ左打ちですが、フォロースイングが大きいフォームであるためパワー不足をフォロースイングで補おうという意識があるのだろう、と私は見ていました。テイクバックも比較的小さめなのでここ数年NPBの右投げ左打ち打者が直面してきた問題は克服できるだろうと考えております。


●ラッチマンの右打席

 続いてラッチマンの右打席を見ていきたいと思います。

 基本としては左打席と同じです。テイクバックは小さめでコンタクト重視に見えますが、右の場合少しひねりを入れトップの位置が捕手寄りに見えます。

 この動画では左同様大きなフォロースイングですが、全体的に見ると左に比べ右はフォロースイングが小さめ。それは上手が利き腕の右腕なので十分に押し込む力を得られるからでしょう。

 とはいえラッチマンが所属するオリオールズの本拠地カムデンヤーズはレフトが非常に深いため、ここでスタンドに届かせるために意図的に右でもフォロースイングを大きくする、ということはあるかもしれません。

 どちらにせよ、左右両打席で非常に美しく効率的なバッティングフォームを見せており、「天才」と言って過言ではないほどの打撃センスを持っていることは間違いないのではないでしょうか。


 以上、自分なりにラッチマンの打撃フォームを分析してみました。拙い分析でしたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

 ではまた。

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