琴理という名前の由来は、鳥のように自由に羽ばたいてほしいから、ではなく、実はゴルフから来ているらしい。

両親はゴルフが好きだった。

過去形で書くともういないのかと思われるかもしれないが健在だ。ただ、もう数年(十数年?)ゴルフをしている気配がないから過去形で書いておいた。

ゴルフについてはあまり詳しくないが、規定より少ない打数でカップインすることには「バーディー」やら「イーグル」やら「アルバトロス」やら鳥系の名前がついているらしい。逆に規定打数より多くなったときの「ボギー」はどういう意味やろ?知らん。

まあとにかく私の名前の由来はゴルフの「バーディー」であるらしい。それを日本語にして、漢字は後からつけた的な。そんなんやった気がする。「琴」の字を使っているけれど、両親も私も琴は弾けない。琴理って書くと、「王」の字が3個もついている。響きとは裏腹に強めである。

両親は、「この子が大きくなったら一緒にゴルフをしたい」と思っていたらしい。実際に成長した娘はずっとかるたばかりやっていて、かるたがひと段落したと思ったら今度は麻雀だ。完全なるインドア派。ゴルフの道具は持っていて打ちっ放しぐらいは何回か行ったけど。


小さい頃は、自分の名前が好きではなかった。上級生の男の子から「おい、コトリなら空飛んでみろ」とからかわれたりして嫌だった。珍しい名前だから、初対面で名乗るとだいたい聞き返されて複数回言わなきゃいけないのが恥ずかしかった。大人たちから「かわいい名前だね」と言われても反応に困った。歳を取っておばあちゃんになっても自分はコトリなのかと思うと、なんだか変じゃないかという気がした。

今は逆に感謝している。この匿名の時代に、自分は顔も名前も隠さず生きている。リスクもあるが、麻雀プロとして活動する上ではまあ普通のことだ。コトリという名前は、だいたい一度で覚えてもらえる。梶田は忘れられても、コトリは印象に残っていてもらえることが多い。ちなみに漢字は結構間違えられる。別にいいけど。

思えば親というのは不思議な存在だ。高校卒業まで一緒に暮らしていて、親のことなんて何でも知っているようだけど、実はその人の一面しか知らないのだ。例えば親の過去、家の外での姿などは、ほとんど知らない。どういう人生を歩んできたのか、きっと半分も知らない。

でも、特別な思いを持ってつけてくれた名前だ。いつ何が起きるか分からないから、両親の元気なうちに一度はゴルフに行けたらいいなと思っている。


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