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土地選び(夫サイド)

 恥ずかしながら私は土地選びを始めるまでの間は、南道路と北道路について考えたこともなかった。一般的に南道路の方が採光が良く好まれるようで、土地も高いことが多い。
 北道路を採用するに当たってのネックはやはり採光である。南側に道路があれば、道路幅+駐車スペース+庭を南側にまとめることで、南側に十分のスペースをとることができ、それが採光に利するというのは住宅界隈では常識のようで、それが土地価格に反映されているのであった。

南道路の土地は南面が大きく開いているので日光を得やすい


 北道路の採光の問題に対する一般的な解決策は南北方向に長い土地を購入することである。そうすれば、南側に十分なスペースがとれるから、という当たり前の解決策である。
 この対策案についてもう少し書くと、特に車社会の田舎マイホームでは想像しているよりもかなり南北に長い土地でないといけないことに注意が必要である。駐車スペースというのは5メートル~6メートルほどの前後長×2.5m幅程度が一般的であるが、北側に数台の駐車スペースを空けると、家全体が6メートルほど南側にずれてしまい、南側の庭スペースを圧迫するのである。こういったことを考慮しつつ、北道路では実際にどの程度日射が取得できるのかを考察していく。

上側が北、駐車スペースにより南に後退させられた家

 実際にどの程度の距離があれば良いのだろうか? 気になった私は候補先の土地に行って南側に隣接する家の高さを調べることとした。具体的にはこのような形で目から隣家上端の角度を確認することとした。

初めて三角関数を実用的に使う私


隣家は本当にこんなに大きいのだろうか?

 手書きの図で恐縮だが、前の家(は見た目でもかなり大きく)屋根最高点推定値は7.7mであった。リビングの床すべてに冬至の南中高度で光が入るようにしたい、という気持ちがある場合には、私の場合は11mも南の隣家から距離と取らないといけないことになる。これはかなり厳しい。勿論実際には冬至に床すべてが明るくなる必要性はない。もう少し条件は緩くても良いのかもしれない。しかし、冬至の昼間のイメージはそのような形になる。秋田に暮らしているわけでもないのに、冬場は高価な買い物の結果としてうす暗い部屋で一生過ごしていくことになる施主の悲しみやいかに。
 結局のところ、北道路ではなく北西道路であったこと、南側の隣家は実際には南ではなく南東方向にずれており、南側は家庭菜園であったことから問題ないことが判明した。
 住宅密集地や北道路において、どうしても日照の問題は付きまとう。天窓を利用する方法もあるが、掃除が面倒で採用はしたくなかった。吹き抜けは空間を広く見せたいことから採光と併せて採用したかった。いずれの場合も採光の位置が高くなれば日射は室内に入りやすくなるというだけの話なのだが、場合によっては特に吹き抜けの高い位置の窓に関しては、壁のみに直射日光をいれて、反射で室内を明るい日陰にするような形となるかもしれない。プライバシーと明るさの両立にはよさそうである。
 こういったことを考えていくと、吹き抜けは隣家との距離がとりにくい狭小地や北道路で採光に問題が出やすいケースで有用なのだと思われる。南道路の土地は確かに高額で、総2階の家をどーんと建てても問題がないことはメリットだが、家の形状や吹き抜けなどで採光の問題をクリアできると土地の問題がクリアしやすいように思われる。
 また、南道路が本当に良いのかと言われると日射取得以外の側面で問題がある。例えば、庭が道路から丸見えになりやすいというのがその最たるものであろう。休日のバーベキューで楽しんでいたら、歩行者と目が合うのは何とも気まずい。相手が仕事中で自分が休んでいてビールでも飲めるのであればそれは最高のスパイスにもなろうが、お互い休日では何とも。解決のために外構をクローズにすればよいかもしれないが、クローズ外構にはお金がかかる。ギリギリの予算でやっていたところで最後の外構がクローズになり予算が跳ね上がるのは正直なところしんどい。北道路ではプライベートガーデンができるのだ。
 また、開口部といえば日射取得の関係から南側に大きくとられるイメージがあるが、景色を見るための開口部と採光を別として、北庭+北に主たる開口部として、南の高窓(採光用)を別に添える選択肢もあって良いのではないか。(現にそのような案もインターネッツでは散見された。)もちろん開口部が増えれば増えるだけ断熱は落ちるので正攻法ではないのだと思うが。
 さて、ここまで読んで北道路で南北方向の細長い土地で北側に駐車場、断熱目的に窓のないクローズな印象でまとめて、南側に大開口・高窓で採光をクリアしつつプライベートガーデンを作ってそこでのんびりと肉でも焼きながらビールをぐいっとやる生活が望ましいと感じたのであれば、あなたが購入するべきはバリュー北道路である。
 そして後方視的にも「北道路で採光・広々感の演出のために吹き抜けを有する大空間がほしい、当然吹き抜けや大空間は構造的に弱くなりがちと思われるので問題のないという安心感も欲しい、あとはコスト面の問題からそれを木造でやってください」という要求を満たすことができる選択肢というのは実のところ他にあまり多くなかったように思う。
 私の知る限りでは木造で基礎直結のドリフトピン構法・構造計算もしてくれるというと、KES工法、SE構法、シャーウッド、ビッグフレームあたりが選択肢に挙げられる。
 いや、そもそも無柱大空間にしないのであれば、シャーウッドやビッグフレームである必要性もないし、SE構法も選択する必要がないはずである。気に入った土地だが、これらの構法でないと難しいという場合に選択した方が理にかなっている。そして、そういった難しいケースで複雑な形状にしてもらうこともやはり大手HMだと難しい。
 建物側の工夫で土地のデメリットを打ち消すことも不可能ではないし、本質的な価値より割安に土地を購入できるのであれば望外の喜びである。となると、土地選びはハウスメーカー選びや間取りにもつながってしまう。どこで暮らしたいのかという土地先行パターンであれば、そこでしたい暮らしをできるような建物を安全に建築可能なメーカーを予算内で探していく、というただそれだけの話に帰着してこの章については擱筆することとする。

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