【長編小説】配信、ヤめる。第18話「エピローグ」
半袖だと少し寒い。けどまあ、我慢できなくはない。
配信を見るためにスマホを取り出す。ポップアップ公式配信。今回もバブルは休み。
「でも、しょうがないよな。まだ復帰出来ないよ」
俺は呟くように言う。隣ではアルハレが縮こまっていた。
「はは」
背は百八十はあるだろう。けど、それを感じさせない。
画面の向こうではいつものようにポップちゃんが元気に配信をしている。
通知がなった。
碓氷がメイク配信を始めたらしい。
「このタイミングって、わざとかな?」
絶対にわざとだ。公式配信にぶつけてきてる。
「はは」
アルハレは基本的に愛想笑いだけだ。
アルハレの家に行ってから、まだ一週間も経っていなかった。しかし、バブルを中心とした炎上は急速に収まった。それは、アルハレブログでの新しい声明によってだ。
つまり、これ以上アルハレを筆頭としたアンチバブルの活動を行った場合は法的処置も辞さないという、簡単な内容だった。
そもちろん、一部はアルハレアンチとなり、また別の活動を始めたが、法的処置という言葉が恐怖を与えているようで、目立った動きはない。
ネットではアルハレを悲劇の主人公とする記事も見られた。本人にその記事の話をすると、とても不愉快になっていた。
「元々は僕が悪いんですから、こういうのは辞めて欲しいです」
その後、しきりに法的処置と言い出したので、そこまでする必要はないと宥めた。
蛍太さんのお墓参りに来ていた。今はもう駅のホームにいる。碓氷と秋葉も別の日に墓参りに来ていた。一緒に行こうとも思ったのだが、アルハレも連れてくる予定で、変に気を使わせるのも良くないと思った。
「あの、バブルさん、本気なんですよね」
アルハレが不安そうにいう。
「もちろん」
「分かりました。じゃあ、着いたら連絡します」
電車は逆方向だ。
アルハレには、修爺さんのところで仕事を手伝って貰うことにした。アルハレは色々なことを忘れる時間が必要だ。
別れた後、俺は駅から出る。自分の中で一つ終わりが訪れた。
「さて」
わざと声に出して言った。やることは一つ。
配信をつける。
[バブル!][あれ? 公式配信は?][これ、おかしくない?]
やばい、公式配信を休んでるんだった。
興津さんや碓氷からも通知がくる。もちろん、アルハレからも。
でも、すでに俺はバブルになっていた。
しっかり炎上してくれるだろうか。ワクワクする。
「せっかくの配信なのに、そんなコメントばっかじゃ、病んじまうよ」
まだ、夏が終わっただけだった。
鳥居ぴぴき 1994年5月17日生まれ 思いつきで、文章書いてます。