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二次方程式

二次方程式の必要性と意味及びその解の意味

方程式が有用な場面は様々ある。

一般に、未知数の満たすべき条件から未知数を求める場合、方程式を用いると便利である。

未知数そのものよりも先に、未知数の満たすべき条件の方が決まっているということは多々ある。

日常の例で言えば、

  • 具体的に買うものは決まっていないが、使える予算は決まっている

  • 具体的に歌う曲は決まっていないが、使える時間は決まっている

  • 具体的に作る料理は決まっていないが、使える食材は限られている

などであろうか。もちろんこれらの例で方程式を使うことはないだろう。日常の場面で方程式を使う人がいたら驚きだ。

方程式が有用なのは、具体的な数を計算で求めたい場合などである。そのような場合というのは、やはり数学の事例がほとんどである。

面積が2cm²の正方形を作るには、1辺の長さを何cmにしたらいいだろうか。

あえてこれを先程の例に合わせた表現にすると、

  • 正方形の1辺の長さは具体的に決まっていないが、面積は決まっている

となる。

決められた条件に合うような1辺の長さを計算で求めるのには、方程式が役に立つ。

1辺の長さを$${x}$$cmとして、面積が$${2}$$cm²という条件を式に表すと、

$$
x^2=2
$$

となる。この等式が、上の問題設定における未知数$${x}$$の方程式となる。ここで、左辺が$${x}$$の二次式になっていることに注目してほしい。

上の方程式のように、二次式を用いて表される方程式を二次方程式という。また、方程式を満たす$${x}$$の値を方程式のといい、方程式の解を求めることを「方程式を解く」という。

一次方程式は、等式の性質を用いた単純な式変形によって解くことができた。

しかし、二次方程式はどうだろう。一次方程式とは違い、等式の性質を用いた式変形だけでは、解が自明な形へと変形できそうもない。

解が自明な形は一次方程式である。したがって、二次方程式を解くためには、どうにかして二次方程式を一次方程式に変形する必要がある。

因数分解や平方完成して二次方程式を解くこと

二次方程式を一次方程式に変形する方法は二通りあるが、どちらもそう簡単には思い付かないものなので、ここでは天下り的に紹介する。

1. 因数分解することで0の性質を利用する

0の性質として次のようなものがある。

積が$${0}$$となるには、かける数のうち少なくとも一方は$${0}$$でなければならない。つまり、任意の実数$${A,B}$$について、

$${AB=0}$$ならば、$${A=0}$$または$${B=0}$$

が成り立つ。

これを利用すれば、二次方程式を二つの一次方程式に分解することができる。ただし、これを利用するためには、積が$${0}$$の形、すなわち$${AB=0}$$の形に変形する必要がある。

二次方程式を$${AB=0}$$の形に変形するには、

  • 右辺を0にする

  • 左辺を積の形にする

の二つが必要となる。

まず、右辺を0にするために、右辺の項をすべて左辺に移項する。

次に、左辺を積の形にするために、左辺の式を因数分解する。

では早速、簡単な例を見てみよう。

$$
\begin{aligned}2x^2+5&=7x\\2x^2-7x+5&=0\\(2x-5)(x-1)&=0\end{aligned}
$$

ここで、0の性質を利用すると、

$${(2x-5)(x-1)=0}$$となるのは、
$${2x-5=0}$$または$${x-1=0}$$のとき

得られた二つの一次方程式をそれぞれ解くと、

$${x=\dfrac52}$$または$${x=1}$$

となる。これらが$${2x^2+5=7x}$$の解である。

ただし、この方法が使えるのは因数分解が可能な場合だけである。

2. 平方完成することで平方根を利用する

最初に平方根の定義を確認しておく。

負でない実数$${a}$$について、$${2}$$乗すると$${a}$$になる数を、$${a}$$の平方根という。

したがって、この定義により、次のことがいえる。

任意の実数$${X}$$および負でない実数$${k}$$について、$${X^2=k}$$のとき、$${X}$$は$${2}$$乗すると$${k}$$になる数であるから、$${X}$$は$${k}$$の平方根である。すなわち、

$${X^2=k}$$ならば$${X=\pm\sqrt{k}}$$

が成り立つ。

これを利用すれば、二次方程式を一次方程式に変形することができそうである。ただし、そのためには、$${X=\pm\sqrt{k}}$$が一次方程式となるような$${X,k}$$であることと、そのうえで二次方程式を$${X^2=k}$$の形に変形することが必要となる。

まず、$${X=\pm\sqrt{k}}$$が$${x}$$の一次方程式となるには、

  • $${k}$$が定数

  • $${X}$$が$${x}$$の一次式

であればよい。これらをふまえて、二次方程式を$${X^2=k}$$の形に変形するには、二次式の定数以外の部分を一次式の$${2}$$乗で表す、

$$
ax^2+bx=a(x+m)^2+n
$$

という変形が必要になる。ただし、上の式において$${a,b,m,n}$$は定数とする。

このように、二次式を変形して一次式の$${2}$$乗(平方)の形を作り上げることを平方完成という。

平方完成するには、$${2}$$乗の展開公式を逆に用いればよい。

$$
(x+m)^2=x^2+2mx+m^2
$$

これを変形すると、

$$
x^2+2mx=(x+m)^2-m^2
$$

となり、左辺の形の式はすべて右辺のように平方完成できる。

では、実際に簡単な例題を解いてみよう。

$$
\begin{aligned}x^2+4x-7&=0\\x^2+2×2x-7&=0\\(x+2)^2-2^2-7&=0\\(x+2)^2-11&=0\\(x+2)^2&=11\\x+2&=\pm\sqrt{11}\\x&=-2\pm\sqrt{11}\end{aligned}
$$

因数分解とは異なり、平方完成はどんな二次式に対しても可能なので、すべての二次方程式がこの方法で解ける。

解の公式を用いて二次方程式を解くこと

そこで、任意の定数$${a,b,c(a\not=0)}$$を係数にもつ一般の二次方程式を平方完成し、解を求めてみよう。

$$
\begin{aligned}ax^2+bx+c&=0\\a\bigg(x^2+\dfrac{b}ax\bigg)+c&=0\\a\bigg(x^2+2×\dfrac{b}{2a}x\bigg)+c&=0\\a\bigg\{\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2-\bigg(\dfrac{b}{2a}\bigg)^2\bigg\}+c&=0\\a\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2-a×\dfrac{b^2}{4a^2}+c&=0\\a\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2-\dfrac{b^2}{4a}+\dfrac{4ac}{4a}&=0\end{aligned}
$$

移項して両辺を$${a(\not=0)}$$で割ると、

$$
\begin{aligned}a\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2&=\dfrac{b^2-4ac}{4a}\\\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2&=\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}\\x+\dfrac{b}{2a}&=\pm\sqrt\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}\\x&=-\dfrac{b}{2a}\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\x&=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\end{aligned}
$$

これが解の公式である。いちいち平方完成して平方根を考えるよりも、公式を覚えてしまった方が圧倒的に楽である。

例題を解の公式を用いて解いてみよう。

二次方程式$${x^2+4x-7=0}$$を解け。

係数が$${a=1,b=4,c=-7}$$であるから、解の公式に代入して、

$$
\begin{aligned}x&=\dfrac{-4\pm\sqrt{4^2-4×1×(-7)}}{2×1}\\&=\dfrac{-4\pm2\sqrt{11}}2\\&=-2\pm\sqrt{11}\end{aligned}
$$

以上で紹介した方法で、あらゆる二次方程式を解くことができる。

これで、未知数の満たすべき条件式が二次以下の方程式で表される限り、どんな未知数でも計算によって求めることが可能になった。

さて、そこで興味が湧いてくるのは、三次以上の方程式だったらどうなるのか、あるいは整式以外の方程式、例えば、分数式や、根号の中に未知数がある式からなる方程式についてだろう。これらについてももちろん既に解き方が編み出されているのだが、これについて書くのはまだしばらく先のことになるであろう。

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