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式の展開と因数分解

単項式と多項式の乗法と除法の計算

分配法則

$$
M(N+O)=MN+MO
$$

は整式の計算においても成り立つ。すなわち、文字$${M,N,O}$$にあてはめるものが単項式や多項式であってもいい、ということである。

例えば、$${M=2a,N=3a,O=-5b}$$とすると、

$$
\begin{aligned}2a(3a-5b)&=2a×3a+2a×(-5b)\\&=6a^2-10ab\end{aligned}
$$

となる。除法についても、乗法に直せば分配法則を適用できる。

$$
\begin{aligned}(4x^2+6x)÷2x&=(4x^2+6x)×\dfrac1{2x}\\&=\dfrac1{2x}(4x^2+6x)\\&=\dfrac1{2x}×4x^2+\dfrac1{2x}×6x\\&=\dfrac{4x^2}{2x}+\dfrac{6x}{2x}\\&=2x+3\end{aligned}
$$

簡単な式の展開や因数分解

上の例では$${M}$$に単項式をあてはめたが、多項式をあてはめることもできる。

$${M=a+b,N=c,O=d}$$とすると、

$$
\begin{aligned}(a+b)(c+d)&=(a+b)c+(a+b)d\\&=ac+bc+ad+bd\end{aligned}
$$

次の式を分配法則を用いて展開してみよう。

$$
\begin{aligned}(a+b)^2&=(a+b)(a+b)\\&=(a+b)a+(a+b)b\\&=a^2+ab+ab+b^2\\&=a^2+2ab+b^2\end{aligned}
$$

これが二乗の展開公式である。二乗の展開は頻繁に行う計算なので、いちいち分配法則を用いるよりも、以上の結果をそのまま公式として覚えて利用する方が効率的である。

公式として覚えるべき頻出の計算を以下に挙げる。

$$
\begin{aligned}(a-b)^2&=a^2-2ab+b^2\\(a+b)(a-b)&=a^2-b^2\\(x+a)(x+b)&=x^2+(a+b)x+ab\end{aligned}
$$

しかし、実を言うと、これらの公式が役立つのは、展開のときよりも因数分解のときである。

因数分解とは、言うなれば展開の逆であり、分配法則などを逆に用いて、積の和を和の積に直すことである。

$$
\begin{aligned}a^2+2ab+b^2&=(a+b)^2\\a^2-2ab+b^2&=(a-b)^2\\x^2+(a+b)x+ab&=(x+a)(x+b)\\a^2-b^2&=(a+b)(a-b)\end{aligned}
$$

今までずっと展開ばかりやってきたのに、なぜ因数分解するのか、と疑問に思うことだろう。その疑問に対する答えは「積の和よりも和の積の形の方が便利な場合があるから」である。

次の例を見てほしい。

$$
\begin{aligned}13^2-12^2&=(13+12)(13-12)\\&=25×1\\&=25\end{aligned}
$$

もちろん逆の場合もある。

$$
\begin{aligned}&\kern{1.3em}101^2\\&=(100+1)^2\\&=100^2+2×100×1+1^2\\&=10000+200+1\\&=10201\end{aligned}
$$

展開と因数分解は状況に応じて使い分けるものである。より計算が簡単になる方を選ぶとよい。

式変形の目的は、計算を簡単にすることだけではない。次のような場合にも式変形が活用される。

「連続する二つの偶数の積に1を足すと奇数の2乗になる」ことを証明せよ。

任意の連続する二つの偶数は、任意の整数$${n}$$を用いて、$${2n,2n+2}$$と表される。よって、それらの積に$${1}$$を足したものは、

$$
\begin{aligned}2n(2n+2)+1&=(2n)^2+2×2n+1\\&=(2n+1)^2\end{aligned}
$$

と変形できる。奇数の二乗になることが式変形(因数分解)によってわかる。

ちなみに二乗される奇数$${2n+1}$$が連続する二つの偶数$${2n,2n+2}$$の間の奇数であることも式から読み取れる。

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