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基本的な平面図形と平行線の性質

平行線や角の性質

平面上において二つの直線が平行であるとは、二つの直線が交わらないことを意味する。ただし、直線は無限に延びているものとする。線分や半直線についても、それらを両側に無限に延ばして直線にしてから平行か平行でないかを考える。

この平行の定義は素朴で直観的であるが、無限性を考慮しなければならないため少し扱いにくい。平行かどうかをもっと簡単に調べられるようにしたい。それも無限を考えることなく。

ということで、平行線の性質を調べよう。決して交わらない二つの直線の間にはどのような関係が認められるだろうか。長さや角を使って探究してみよう。

角は交わる二直線に対して定義される。そこで、平行な二直線と交わる一本の直線を引いて、それよってできる角について調べることにしよう。

平行線と直線のなす角

二つの直線が交わるとそれぞれ四つの角ができる。斜めの線と上の線がなす角がa,b,c,dの四つであり、斜めの線と下の線がなす角がe,f,g,hの四つである。上の角のグループと下の角のグループはとてもよく似ている。下のグループの角のうち、上のグループの角aに対応する位置にあるものは、角eである。同じ位置にある角ということで、これらを同位角という。角bと角f、角cと角g、角dと角hもそれぞれ同位角である。角の大きさも何だか等しいように見える。実際に測ってみても等しいことがわかる。

また、角aと角cのように、一つの頂点を中心に向かい合っている角を対頂角という。角bと角d、角eと角g、角fと角hもそれぞれ対頂角である。これらもまた角の大きさが互いに等しいように見える。実際に測ってみると等しいことがわかる。

結論として、角cと角eが等しいことがわかるが、このように二つの直線の内側にあって、互いに対頂角の同位角の位置にある角を錯角という。

錯角

ちなみに角dと角fも錯角である。

錯角

ということで、平行線の同位角は等しいことがわかった。では、逆はどうだろう。同位角が等しかったら二つの直線は必ず平行なのだろうか。もうめんどくさいので答えを言うと平行になる。その理由を考えるのも興味深い数学的活動になるだろう。

多角形の角についての性質

多角形は三角形に分割できる。したがって、多角形の内角の和は、一つあたりの三角形の内角の和180°に、分割してできた三角形の数をかければ求められる。

内角に対して、三角形の外にできる角を外角という。

内角、外角、対頂角

角aが内角、角bまたは角dが外角、そして角cは角aの対頂角である。

角aと角bの和が180°になることからもわかるように、一組の内角と外角の和は180°である。

このことを利用して多角形の外角の和を調べてみると面白いことがわかる。$${n}$$角形の外角の和は、$${n}$$によらず一定なのである。理由は割愛する。

平面図形の性質を確かめること

先に、「三角形の内角の和は180°である」と述べたが、これは本当だろうか。例外はないのだろうか。例外なく常に成り立つことを確かめるにはどうしたらよいか。

確かめるといっても、あらゆる事実を疑い始めたら際限がなく時間がいくらあっても足りない。どこかで疑うことを止めなければならない。ゆえに、疑う余地のない、無条件に信じ、納得できるものが必要である。無条件に正しいと信じる事実や仮定を公理という。

公理は、例外なく常に成り立つものとして考える。公理は疑わずに正しいと受け入れ、それをもとに他の事実が正しいかどうかを判断する。

何を公理として採用するか、究極的には自由であるが、普通は誰もが納得するような疑う余地のない当たり前の事実を公理とする。現代では、どの分野でもよく整備された公理が流通しているので、大体みんなそういうものを公理に使う。もちろん自分で一から公理を構成するのも数学的に面白いだろうが、それをしていると時間が足りなくなってしまうのが悩みどころである。

さて、話を戻そう。「三角形の内角の和が180°である」という主張が本当に正しいか確かめたいのであった。これを確かめるためには、まず意味をはっきりさせておかなければならない。

意味のはっきりしない文章が正しいかどうかを考えることほど不毛なことはない。例えば、「ピオネルの統一理論空間は先進的に敗壊するらしい、って聞いたけど、本当?」と聞かれて、「ううむ、本当かどうか考えてみよう」と言ってじっくり思考をめぐらせたところで何もわかることはないだろう。実際何の意味もない文章なのだから。

「三角形の内角の和が180°」という文章に現れる言葉は、「三角形」「内角」「和」「180°」の四つである。三角形の内角についての説明は省略する。

三角形の内角

180°の説明も省略する。

角度180°

角の和の定義は多少説明が必要かもしれないがやっぱり省略する。

角aと角bの和a+b

まあそんなこんなでお茶を濁しつつ、画像を貼り付けて「三角形の内角の和が180°」であることの証明に代えるとしよう。

三角形の内角の和

三角形の一辺と平行な直線を残りの頂点を通るように引く。これは任意の三角形、辺及び頂点に対して可能である。平行線の性質より錯角が等しい。よって三角形の内角の和は180°である。

図形の性質は、直観的な事実と直観的でない事実が混在しているから、真偽判断の方法をよく整備しなければ、何もかもが間違っていて、そして何もかもが正しく思えるようになってしまう。混沌である。論理という道しるべが必要である。正しさの根拠と保証が必要である。

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