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ビジネスで活かす電通「鬼十則」/柴田明彦氏

ビジネスで活かす電通「鬼十則」/柴田明彦氏

◾️磯野の要約

著者の柴田さんとは野毛のとあるバーで私から声を掛けさせてもらうというキッカケで知り合うことができ、そして本書をいただいた

柴田さんは元電通で複数の部長を歴任され、現在は多様性工房株式会社代表取締役、産業能率大学教授など多岐に渡ってご活躍されています

著書を拝読させていただき、仕事への価値観を改めて考えさせられるキッカケとなりました

本書は電通における「鬼十則」を柴田さんの経験やその関係者の方々の言葉などによる解釈で構成されています

本書より一部抜粋して紹介したいのは、鬼十則第6条『周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる』

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とことんやり抜くなどの基軸力を高める為にはどうするか
その答えは厳しい、苦しい、辛い「修羅場」や「正念場」を体感し、それをくぐり抜けることだと考える

仕事の場面においてもぎりぎりの極限状態に追い込まれると、時間がない中で瞬時にさまざまな判断を下すことになる

難しい局面を打開するための選択肢が複数ある場合、何かを選択すれば、何かを手放す、このようなトレードオフを伴う場面で判断を繰り返すことによって、自分の「軸」が鍛え上げられていく
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この文からは複数考えさせられる
私自身が社会人として教育された環境はまさに、極限状態であり、強制的に追い込まれる環境であったが、昨今の「働き方改革」や「ハラスメント文化」からすると、そのような環境はナンセンスとされる

ともすると、こらからの社会人に基軸力を鍛えるにはどのような方法があるのかを考えさせられました
ぜひ本書を社員教育に活用していきたいと思います

◾️まえがき

理論、セオリー、方程式を知っているだけでは、それを使いこなしている人には敵わない
使いこなすとは、それらを自分に引き寄せ、自分の頭で解釈し、自分なりの定義付けをし、実践の場で何度となく使っていくうちに自分の思考と体に馴染んでいくようなものではないかと思う

すなわち解説を鵜呑みにすることなく、主体的・能動的に自分の範囲内の事象に置き換え、自分の活動領域で試し、自分自身の血肉にしていくプロセスこそが「使いこなす」ことなのである

◾️鬼十則第1条 仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきではない

誰かが成功してしまえば、それはあまりにも簡単に見えるものだ
しかし誰かが成し遂げるまでは、他の誰も思いつかない
事前の不確実性と事後の常識性といった不連続面を飛び越えることを「創る」「創造」と定義してみたい

大切なことは、自分にとっての「創造」を積み重ねていくトレーニングをすること
一つの創造から次の創造に移行した時、「節目」をまたいでいく
こらこそ自分にとっての成長・進化のベンチマークとなる

「創造力」に加え、「想像力」もまた重要な力である
身の回りで見聞きするすべての社会的事象に、当事者意識を持つように置き換えて主体的に考えることから、「想像力」が鍛え上げられていく

時代のいくつかあるキーワードに「多様性(ダイバーシティ)」があり、創造の定義も多様性に満ち溢れ、個人ごとに千差万別であって然るべき
多様性を増幅し、さまざまな選択肢を持ち続けることこそ、強さと適応力の基礎となる

この論理を封印して、組織の論理に盲従してきた自分を一瞬解放してみよう
自立した個を取り戻し、自分はこの組織を利用して何ができるだろう、社会にどんなメッセージを発信できるだろうと考えてみることだ

◾️鬼十則第2条 仕事とは、先手先手と「働き掛け」ていくことで、受け身でやるものではない

先手を働き掛ける能力は「周囲とは違った目線」を培う過程で備わっていくものだと考える

他人の意見に右往左往して振り回られることなく、大勢の流れを把握し、理解しつつ、自分なりの考えを構築するイメージを持つことだ

働き掛けるという言葉には、何か柔和な印象がある。働き掛けは「呼びかけ」であり、促すというニュアンスがある

第2章を「主体的に選択肢をいくつも考えながら、ビジネスパートナーを巻き込み、協業して仕事を進める」と定義した
無から有を「一緒に創り上げていきましょう」と呼びかけていく方が、パートナーと調和し、連携しやすいことを実感した

経済産業省は2006年に「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行なっていく上で必要な基礎的な能力」として「社会人基礎力」を提唱している

社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つの能力
この中で「前に踏み出す力」は主体的、働き掛け力、実行力と定義付けている

◾️鬼十則第3条 「大きな仕事」と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする

売上げの絶対額が多い仕事イコール大きな仕事、と短絡的に理解していた時期もある。売上金額の飽くなきじょうほうを至上命題と課していた

また売上目標値に対する回収方法についても、例えば1000万円の売り上げ目標に対して1社で完結できない場合は、100万で10社など、売上単価と口数を細分化して、その積み上げで目標値を達成しようと考えてきた

自分なりの目標値を大きく掲げ、それを懸命に達成するプロセスに“創意工夫という名の女神”が潜んでいる
極限状態まで動き切らないとその女神は微笑まない

「大きな仕事」の定義をスペース、ボリューム、売上金額といった観点で捉え日々邁進してきた
つまり「大きな仕事」とは“視覚”に訴求することや、“係数”で示せる範囲内でしか考えてこなかった

しかし第3章の言わんとすることはそれだけだろうか?

西日本新聞東京支社の営業部長の原田誠一氏の営業哲学は「感謝の気持ちとお陰様での精神」で貫かれている

つまり、個別より全体の「調和」であり「統合」するパワーが大きな仕事の原動力になるということだ
オーケストラの指揮者が多種多様な演奏者の楽器によって奏でられる音を集め、繋ぎ合わせて、素晴らしい音楽を生み出していくように

それはビジネスにも当てはまる
「調和力」「統合力」「総括力」がより大きな仕事を創出する原動力になることを改めて認識させられた

◾️鬼十則第4条 「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある

「難しい仕事」を単に難易度の高い仕事というだけでは腑に落ちなかった

守破離」の概念で説明してみる
」は企業・組織またその中での部署固有の仕事の型、やり方、流儀を会得すること
」には多種多様なメンバーで取り組むプロジェクトで培われる他流試合のイメージを抱き、価値観を学ぶ
その上で、従来の自分の枠を超えて「難しい仕事」に移行していくイメージが「」である

後付けの分析には意味がないとは言わないが、大切なのはあくまでもプロセスだ
不安と不確実性の中を、さまざまなリスクを背負って前へ進んでいく道程を見なくては始まらない

難しい仕事に臨むスタンスは第一義に「自分との向き合い」だと考える
組織の論理などの固定観念や思考パターンから「自分を解き放つ」ところから始まる

第二義としては、無意識のうちに自分自身に設定した「枠を越える」ことだと考える
組織は活動の効率性を追求するために、ある環境を一定のものと仮定して、その環境への適応力を高めていこうとする
しかし現代のように環境が激変するコンディションでは、過去の成功体験からくる適応力では、いまこの瞬間に巻き起こる環境に適応できない

「自分の座標軸を持つ」ことと、「バランスを保ち、折り合いをつける」点を付け加える
基礎軸を持ち、自分のキャリア・ビジョン(旅やマラソンに例えるなど)を描くことである

◾️鬼十則第5条 取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、目的完遂までは

仕事を引き受けたからには何があっても必ず結果を出す」という徹底した「成功指向」にある

仕事を引き受けたからには確実に目標達成を約束する
取り組んだ仕事の難易度がいかに高く、困難の極みであろうと、目標達成に向かう信念と諦めずに邁進し続ける強靭な精神力を持つことが必要条件となる

そして修羅場をくぐり抜けるたびに、一皮むけていき、成長・進化という節目をまたぎ、ブレない基軸力が備わっていく

◾️鬼十則第6条 周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる

リーダーシップとは?
リーダーとマネージャーの違いは?
リーダーに求められる素質は?

リーダーもマネージャーも周囲に働きかけ、何かを創り出していく点では同じである

しかしリーダーはその人自身、パーソナルからの働き掛けであるのに対して、マネージャーは組織の肩書き・役割から発信するところがその違いではないかと考えた
従ってマネージャーの代替は可能でも、リーダーの代替は容易くない

一方で取り扱う範囲、フィールドにも違いがある
組織の伝統継承、システム、秩序、安定維持に対してマネジメントは機能し、組織の変革や新たな価値創造のためにリーダーシップ機能が求められる

リーダーに求められる素質と役割の一つに“一人称”で「ビジョンを描く」ことがあり、それには「ものを語る能力」が求められる
リーダーに求められる資質はキリがないが、もう一つ加えるなら「基軸力」で、「とことんやり抜く」、その為にはブレない、途中で逃げない、引き返さないことである

◯カツオの超重要ポイント
では基軸力を高める為にはどうするか
その答えは厳しい、苦しい、辛い「修羅場」や「正念場」を体感し、それをくぐり抜けることだと考える
仕事の場面においてもぎりぎりの極限状態に追い込まれると、時間がない中で瞬時にさまざまな判断を下すことになる
難しい局面を打開するための選択肢が複数ある場合、何かを選択すれば、何かを手放す、このようなトレードオフを伴う場面で判断を繰り返すことによって、自分の「軸」が鍛え上げられていく

リーダーシップの究極の資質は「人間力」に尽きる
「この人に一生ついていきたい」と思える人間には、権威による強制も動機付けもなく、フォロワーは増えるばかりだろう

◾️鬼十則第7条 「計画」を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる

PDCAサイクルを一巡して、次のPLANにつなげ、スパイラルアップしながら、継続的業務改善を図る

◯時間軸の設定
自分自身の短期・中期・長期に細分化した時間軸を設定し、PDCAサイクルを活用する
自分なりの時間軸を設定することは、規定期間内に仕上げるといった地道なトレーニングを積み重ねてビジネスマンとしての足腰を鍛えることにつながる

◯PLANについて
PDCAサイクルの醍醐味は「仮説力」の精度を高めること
目標設定の場合はできる限り「数値化」しておくと、後ほど達成・未達成が算出できる

◯CHECKについて
一般的には目標達成した部分にのみ注目するが、未達成部分から目を背けることなく、その敗因分析をきちんと行うことに成長の節目がある
失敗から学ぶことは実に多い

『失敗学のすすめ/畑村洋太郎氏』
1.織り込み済みの失敗
ある程度の損害やデメリットは承知の上での失敗
2.結果としての失敗
果敢なトライアルの結果としての失敗
3.回避可能であった失敗
ヒューマンエラーの失敗
最後の3の失敗は、失敗からさらなる悪循環が生まれる失敗だと指摘している

自分のキャリアをどのようにデザインするか、どのようなビジョンを描くかという視点こそ究極の鬼十則第7条ではないか

◾️鬼十則第8条 「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない

マズローの欲求階層説の4段階「自尊的欲求」とは、自尊心、自律性、達成感などの「内的要因」と、地位、表彰、注目といった他人からの承認、尊敬されるような「外的要因」による欲求のことだ

達成・未達成いずれにしても、他人から認められたい、評価されたいたい思うところに「自信の原点」を見る
信用・信頼の蓄積が自信のバロメーターとなっていくのではないだろうか

マズローは「自尊的欲求」をさらに二つの段階に分けている
低次のレベルが外的要因(他人からの評価)で、高次のレベルは自己尊重感、技術・能力の取得による達成感、自律性といった評価のこと

◯カルピス常務取締役小畑秀樹氏
自信とは何かと尋ねたら「謙虚さですね」と答えられた
謙虚とは自分の力を必要以上に誇示したり自慢したりしないこと

◾️鬼十則第9条 頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ

一人の人間の教育には「家庭教育」と「学校教育」、そして「社会人としての職場教育」がある

本条を「その時々の文脈をしっかり押さえる洞察力と想像力」と定義している

「この営業マン・担当者と一緒にビジネスをしたいか否か」が顧客から求められている
そのためには顧客との関係性、背景、文脈を的確に掴み取る深い「洞察力」と、キメ細かい「想像力」を駆使して対峙していかなければならない

その努力の積み重ねが顧客の琴線に触れ、顧客の深層にあるニーズを掴み、ビジネスという果実を獲得していくプロセスになると考える

◾️鬼十則第10条 「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる

勝つか負けるかという二元論の中では、絶えず「仮想敵」を想定して戦うことになる
その時々の仮想敵に対して、勝ったと歓喜し、負けたと悔し涙で唇を噛み締める
社内、社外いついかなる戦いにおいても“常勝軍”であることを求められてきた
毎日が摩擦の連続であり、摩擦が生じない戦いの場面は皆無であったと言える

摩擦とは固定観念、既成路線を打破する時に生じる軋轢のようなもの
それまでの自分は「順命利君」をロールモデルにしていた、つまり「命に従いて、君を利する」を目指し努力していた

忠実なイエスマンとして突っ走ってきた自分が一瞬立ち止まる
会社の論理、職場の価値観から、一瞬でもいいから自分を解放して内省する

代替不能な自分の存在意義とは
徹底的に自分と向き合い、自分なりの「使命」を考え抜く、Stop to think(考える為に止まる)、「踊り場」のような空間と時間が大切だ

◯自分自身を誤魔化すな!
上司が指示したアプローチ方法を変えながらも同じ目標に到達することが多々ある
やり方、方法論の違いという多様性を容認し、あらゆるプレイヤーが存在する組織こそ強靭な組織であり、価値多様化した時代に生き残ることができる

まずは自分自身と対決することだ
すべての課題に正面から向き合い、自分に引き寄せ、当事者として対峙する
ビジネスの世界のあらゆる「掟」一つひとつと対決する孤高な精神を追求していく姿を思い描く

そのようなスタンスを保って初めて「逆命利君」の精神を体現することができ、「でないと君は卑屈未練になる」を十二分に消化できる鍵であると確信する

人は弱い生き物だ、惰性に流されて漂流しているほうが気楽だから、自分と対峙し、悪戦苦闘するよりも安易な道を選びたくなる

◾️責任三ケ条

1.命令・復命・連絡・報告は、その結果を確認し、その効果を把握するまでは、これを為した者の責任である
その限度内における責任は断じて回避できない

2.一を聞いて十を知り、これを行う叡智と才能がないならば、一を聞いて一を完全に行う注意力と責任を持たねばならぬ
一を聞いて十を謝るごとき者は、百害あって一利ない、正に組織活動のガンである、削除さらるべきである

3.われわれにとっては、形式的な責任論はもはや一片の価値もない
われわれの仕事は突けば血を噴くのだ
われわれはその日その日に生命をかけているり

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