おぼろづきのよる


光の粒が乱反射しながら、キラキラ舞っている。
ツンと冷たい空気が頬を撫でる。
街灯がない、この通りをゆっくりと歩いている。
ふと、さっき食べた、伊予柑の香りを思い出す。
「これじゃ、みかんのおばけだね。」
つまんない冗談を言いながら、君はおどけていた。
霞がかかった空には星たちが居なくて、
お月さまだけが寂しそうに一人ぽつんとしてる。
寂しそうだけど、凛としている。
「ここは冷えるな。」君が言った。
少し先を歩いていた私は振り返った。
照らされた、まだ少し長い影を見つめた。
 
今朝はいつもより温かいらしい。
「いってきます。」
いつも通り、君が言う。
「いってらっしゃい。」
いつも通り、私が言う。
また今日も、夜になったら、昨日とおんなじ。
少し恥ずかしがり屋な、お月さまが昇るのだろう。
陽気に囲まれながら、過ごしていく。
夜までもう少し。
夜までもう少し。
終わり

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