寂しい気持ち
ねえあの、太ったこけしみたいなの、いつ買ったんだっけ?
2年くらい前かな。ベーグル屋さんの裏であったこけし展で。あと、みたいなの、じゃなくてこけしな。
こないだ断捨離したのにさ、大事に飾ってるんだねえ。
色んなこけしがあったんやけど、それぞれに言われがあってな。それを知って、この子にしようって連れて帰ったから。ただのモノじゃない。
胸のあたりでふたつに別れてる、あれはお饅頭?
そう。詳しいことは忘れたんやけど、お饅頭の半分がお母さんで、片割れがお父さんなんやって。
優しい顔のあの子が、こどもなんだろうね。
あの子をな、わたしだって思ったんよ。そしたらふと、ああ、こどもの頃、お母さんとお父さん、どっちも大好きだったなあって。
思い出せない、大切な記憶だね。
…お父さんのこと、ずっと嫌いだって思ってた。わたしと全然違う、なんにも通じ合わないって。でも、あの頃の家族写真を見たら、"わたし"とお父さんがくっついて、"わたし"は嬉しそうに笑ってた。色々あったけど、そういうことを、これからは大切にしたいって思う。
寂しかったのかもね。
関心を持って欲しいって思うほど、不安になって、イライラして、怒りをぶつけた。それからは拒絶し合う以外できなかった。今は、あの頃とその頃の、ちょうど真ん中くらいかな。
"わたしたち"って、実は寂しがり屋だよね。
ひとりで楽しそうで、たくましいね〜って、よく言われけど。しかし、寂しいから誰かといる類の、寂しがり屋とは一線を画したい。
誇り高き寂しがり屋じゃん。
誰かといても通じ合えない心に耐えられず、ひとりでしか居られない、これぞ真の寂しがり屋なのだよ諸君。
一匹狼全員誇り高き寂しがり屋説あるね。気持ちは比べられないから、解消の方法が違うだけなのでは、と加えておくけど。
でもな、こんな"わたしたち"にも、ひとりにしないでって思える出会いがあったんよな。
体の力が、ふっと抜けて、ポカポカしたよね。お肌はピッカピカでさ。楽だったなあ。
こないだ、友人の友人の恋人が、今世で殺した虫は前世でも殺してるって話してたって聞いたんやけど。
だとしたら?
関わりがある人って、前世でも出会ってたんだろうなって。
だとしたら?
"わたしたち"をポカピカにしたあの人は、どんな関係性だったんだろうって想像してみたんよ。
すると?
たぶん、きょうだい!
どっちがどっち?
"わたしたち"が兄で、あっちが妹、もしくはその逆。
楽しそう!
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