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2020大阪大学 国語(文以外)第二問 解答速報

出典は佐藤俊樹『近代・組織・資本主義』(1993)。

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問一 (漢字)

(a)崩壊 (b)土壌 (c)模倣 (d)衝撃

問二「きわめて近代的な概念だとさえいえる」とあるが、古代や中世との比較のうえで、なぜ脱近代という言葉が近代的な概念であるといえるのか。90字から110字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
「脱」とは自己の否定であり、古代や中世の内でそれが志向されることはないが、諸制度の解体による再編という運動性を特徴とする近代では、現状を「脱」して充当されるべきものが実現するのを、近代のまま待つという態度が成り立つから。(110)

〈参考 S台解答例〉
古代や中世では、社会の終わりは端的に世界の終わりを意味していたが、脱近代という言葉は、いまだ存在しない、充当されるべき未来の何かを待っている言葉であるだけでなく、近代社会の誕生とともに誕生した概念であるから。(104)

〈参考 K塾解答例〉
古代や中世においては社会の崩壊が世界の終焉を意味するゆえに、「脱古代」「脱中世」という概念は存在しえなかったが、「脱近代」は、自己否定を駆動力として未来を志向する近代社会に固有の運動性を表す言葉として生まれたものだから。(110)

〈参考 Yゼミ解答例〉
古代や中世では、社会の崩壊はそのまま世界の終わりを意味するだけであったが、近代社会は、内部の諸制度の解体・再編成を絶えず行うという運動性を自身の中に組み込んで成立しているため、脱近代という自己否定的視点が可能になるから。(110)

問三「この二つのモメント」とあるが、この二つはそれぞれどのようなものであり、またこの二つはお互いどのような関係にあるのか。90字から110字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
二つは、近代を否定しながら更なる近代化を進めるという近代一般の契機と、西欧近代を規範とし自己を否定しながら西欧化を進めるという後発近代固有の契機だが、前者は後者の運動を含みながら展開し、ときに摩擦を引き起こす関係にある。(110)

〈参考 S台解答例〉
二つのモメントとは、近代社会がその内部に持つ自らへの否定と、日本近代と西欧社会との距離の意識であり、それらは日本近代社会とそこで生きる人間たちに影響を与える二重の力学を象徴するものであり、前者が後者を含みこむ関係にある。(110)

〈参考 K塾解答例〉
西欧近代を参照項として自らを再編成する後発近代社会である日本に固有の力学と、それを包摂する、絶えざる解体一再編成により自己更新を図る近代に通有の巨大な力学とが、矛盾を孕みつつ相即的に日本社会を成立させているという関係。(109)

〈参考 Yゼミ解答例〉
明治以後の日本社会のシステムが、機能障害を起こすたびに西欧近代社会を参照せざるをえないことと、これまで自明とされてきた近代社会のあり方が自己否定的に問い直されている状況を指しており、後者は前者を包含する関係となっている。(110)

問四「その自然さこそ本当は最も危険なのである」とあるが、それはどういうことか。日本人が日本近代社会を問うときには、何が問題となり、それゆえにどのような姿勢が求められるのか。比喩的な表現を避けて90字から110字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
日本人は、西欧近代との距離感を所与のものとして西欧近代を相対化し理解するが、それゆえ日本近代に固有の運動と近代自体の一般的運動を見落とす危険があるため、日本近代の自明性を問い直し、自己を厳格に対象化する姿勢が求められる。(110)

〈参考 S台解答例〉
近代西欧と日本近代とが異なる歴史と環境の下で成立しているため、日本人は西欧近代の独自の運動をたやすく理解できるが、それでは日本近代社会とそれを含む近代を捉えられないので、日本近代社会を対象化し相対化する姿勢が求められる。(110)

〈参考 K塾解答例〉
近代全体が抱える諸問題を克服するためにも、西欧との差異ゆえに容易になしうる西欧近代の相対化に安住することなく、日本近代それ自体を相対化するという困難を担いつつ、世界的に変貌を強いている近代の総体を捉える姿勢が求められる。(110)

〈参考 Yゼミ解答例〉
日本と西欧の近代社会にはズレがあり相対化しやすいため、西欧社会の分析を学問として受容し納得しがちだが、それに安住する限りでは日本の近代を真に考察しえない。そのため、日本社会に根付く独自の近代性を問い直す姿勢が求められる。(110)

#大阪大学 #国語 #佐藤俊樹 #近代組織資本主義

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