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原作オタクが語る ドラマ「美しい彼」1話

日本でも、著名な役者や監督が作る実写BL作品が増えている昨今。
ドラマ「美しい彼」が始まった。

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【ドラマ特区】美しい彼-【MBS】毎日放送 - 公式サイト

原作オタクが実写化の発表を受けて

まずもって、私が読んできた数多の商業BL小説の中でも、トップクラスに好きな作品が「美しい彼」だ。
主人公のひとり、清居奏は、私にとって商業作品に登場するキャラクターで一番のお気に入りと言っても過言ではない。

「美しい彼」は、清居奏を指す。

この現代日本に、「美しい彼」、そして、彼を愛する世界最強のキモウザこと平良一成を演じられる人間が本当にいるのか?

これが、最初にして最大の疑問だった。

大好きな作品が多くの人に知ってもらう機会が出来て嬉しい。
けれど、キャスティングやクオリティによっては受け入れるのが難しいかもしれないな、と思った。

結果として、発表当初に懸念していた嫌悪感はなく、ドラマも普通に視聴できている。

すべてを手放しに許容できたわけではない。
しかし、これが原作とはまた違う、ドラマ版「美しい彼」という作品なのだと受け入れることができた。

ドラマ化における設定、シーンの変更点

-11/25 1話で確認できたもの

・平良がひとり暮らし
原作→両親と共に生活
ドラマ→両親が仕事の都合で引っ越しするが、平良は高校3年生ということもあり、実家に残り一人で生活

・2人の出会いは高校3年生
原作→高校2年生で同じクラスになる
ドラマ→高校3年生で同じクラスになる

・平良の趣味がきもくない
原作→人混みの風景を写真に撮り、加工ソフトで人を消して誰もいない街の写真を作るのが趣味
ドラマ→風景や自然、人などを撮影する通常のカメラ趣味

・登校初日に清居が遅刻してくる
原作→平良の斜め前に清居が座っていて、清居が自己紹介後、振り向いたときに平良は初めて清居を見る
ドラマ→平良が自己紹介をしていた時に、清居が教室に入ってくる

・平良が音楽室へ資料を運びにいき、寝ている清居に会う
原作→該当シーンなし

・清居が平良の手に電話番号を書く
原作→平良の胸ポケットから携帯を奪い、清居が自分の番号を入力する
ドラマ→平良の手のひらに番号と名前を書く

・上記シーンのあと平良が向かう先
原作→オープンしたばかりのカラオケ店
ドラマ→ファミレス

・ファミレスで清居が雑誌のコンテストに参加している話題が出る
原作→夏休み後にコンテスト参加が判明
ドラマ→夏休み前にコンテスト参加が判明

・平良が吉田に絡まれるタイミング
原作→化学室の掃除が終わり、カラオケ店の予約へ向かう前
ドラマ→城田たちに買い物を頼まれた後

・清居が平良にお金を渡すタイミング
原作→日々使い走りされる中で、買い出しの後に城田が金を払うのを渋り始めた時に清居が平良へお金を渡す
ドラマ→吉田に絡まれたシーンの後

・清居のダンスレッスン終了後
原作→清居が誘い、二人で近所のファミレスに行く
ドラマ→近所の神社

・平良が初めて清居を撮影するタイミング
原作→音楽室で二人きりになった時(ネタバレになる為詳細を伏せる)
ドラマ→近所の神社

ここが最高、ドラマ版

私が1話を見て、最も気に入ったドラマオリジナルシーンは、清居が平良の手に電話番号を書くところだ。

原作の携帯を奪うシーンも、傍若無人な清居らしくていい。
が、ドラマ版の「平良に携帯を出させるのすら煩わしい」と言わんばかりの、勝手さが良かった。

この作品、序盤はほとんど接触がない分、こうしたシーンで手を触るという行為が描かれているのもポイントが高い。

そして、原作には「黒のサインペンで額にキヨイソウと書かれてしまった」という表現がある。
まさにその平良の心境を具現化して見られたのが嬉しかった。

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ドラマ「美しい彼」ED主題歌「Follow(ロス)」ver予告 - YouTube MBS(毎日放送)

解釈違いももちろんある

シンプルに、平良のキモウザ加減がまったく発揮されていない。

まだ始まったばかりなので、これから描かれていくのかもしれないが、平良一成という人間は、とにかくマイルールやこだわり、思い込みが強く、終始凡人には理解できない思考回路をしているスレイブ気質な男だ。

清居奏をキングと崇め、平良にとっての清居は絶対王者。

その忠誠心や信仰心が1話の時点ではまったく見えてこなかったのが残念だ。
特に、平良は絶対に許可なく清居の写真を撮ることはない。

目の前に神がいたとして、何の断りもなく写真を撮る信者がどこにいるだろうか。
平良にとっての清居の存在というのは、完全に宗教だ。

趣味の面でもそう。
ただの写真ではなく、街から人を一人ずつ消していくというのが、最高に平良の心の暗さ、内気さを表しているのに、都合上設定変更されている。

平良にとっての写真は、ただ撮影するのが好きなのではなく、己と向き合うための手段だ。
そして自分の内面の暗さに辟易し、自己嫌悪に陥る。

それでこそ平良なのに。

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ドラマ「美しい彼」OP主題歌「カラメル(もさを。)」ver予告 - YouTube MBS(毎日放送)

もう一つ気になったのは、化学室のシーンで三木の肩に手を回す清居。

清居奏は、必要以上に他人を信用せず、端から見ればいつでも孤高な存在だ。
本人もそれを良しとしていて、自分を貫いている。

細かい言及は避けるが、原作で垣間見える過去の出来事や清居の中でのポリシーを考えると、清居はそう簡単に他人を触る(触らせる)タイプの人間ではないのは明白。
クラスメイトのことも、恐らく清居にとってはそれほど大事な存在ではないと思う。

清居は誰も踏み込ませないし、踏み込まない。

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ドラマ「美しい彼」OP主題歌「カラメル(もさを。)」ver予告 - YouTube MBS(毎日放送)

そして、仕方がないことなのはわかっているが、やはり所々で資金不足なのが窺える。

花火大会のシーンは家で花火に変更されているし、冒頭の平良の過去も実写ではなく、アニメーション映像で作られていた。

日本で何かを作るというのは、とにかく少ない予算との戦いだ。

普段は海外の長編ウェブドラマが私の主戦場で、BL作品でも、いや、BL作品だからこそ、ちゃんとお金をかけて作られているのがわかる。
それに比べて日本は、まだまだ地上波ドラマが主流で、特に深夜枠のドラマには予算を割いてもらえないのが現状だ。

大好きな作品だからこそ、もっとお金や時間をかけて作って欲しかったなと思う。

ドラマにはドラマの美しさ

色々と感想を書いたが、結局は、ドラマにはドラマの良さがあり、原作には原作の良さがある。

これから続いてくドラマも楽しみにしているし、原作を知らない方は是非、原作も読んで欲しい。

おそらくドラマは1巻分の内容で終わるのだろう。
まだまだ原作は続いているし、尺の都合上カットされているシーンや、平良や清居の内面を知ることで、もっとドラマを、この作品を、楽しんで欲しい。

「美しい彼」に幸あれ。



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