見出し画像

2019/12/28 2019年の3冊《漫画篇》

1 遠藤達哉『SPY×FAMILY』(集英社)
 今年読んでダントツに好きになった作品。既刊2巻、新年すぐに第3巻が発売になる。現在「ジャンプ+」でweb連載中。第1話から、絵もキャラクターも話運びも気に入って、毎回の更新が楽しみで仕方がない。
 某国のスパイ「黄昏」は任務のために素性を隠して急拵えの家族と生活をするが、その家族にもそれぞれに秘密がある。孤児院から連れてきた娘「アーニャ」は生物の心を読めるエスパー(ピーナツ好き)で、両親の本業を知りワクワクしている。妻は腕利きの暗殺者。世界の危機を救うミッションと子育てに振り回される男と、スパイである父の任務の助けになろうと張り切るアーニャを軸にしたコメディ。アーニャを筆頭にとにかく登場人物たちがチャーミング。水族館へ行く番外篇ではペンギンが出てくるのも素晴らしい。
 『このマンガがすごい!2020』(宝島社)の「2020オトコ編」で第1位、『次にくるマンガ大賞2019』第1位の2冠を達成している。おもしろいものはおもしろいよね。大好きです。

画像4

画像2

2 中村明日美子『王国物語』(集英社)
 ボーイズラブ作品『同級生』や少女漫画『君曜日 鉄道少女漫画』ですでに大好きな明日美子先生の青年誌『ウルトラジャンプ』での連載作品。既刊2巻。
 明日美子先生の耽美な画と、エキゾチックな物語とが絶妙に合わさった素敵な作品。「ふたり」をめぐるそれぞれに形の異なる愛の物語が交錯する。第1巻の「王と側近」につながるエピソードが時を遡って描かれるのが第2巻。通底する「愛」は苦悩の中にあるが故に美しさを増す。シンプルなのに絢爛。画の美しさにうっとりする。何度読んでも「ダオとシャオ」の双子の物語は涙なくしては読めない。そして第2巻を読むから、第1巻の「王と側近」における「愛」の深さが分かる。構成の妙!第3巻が待ち遠しくて仕方がない。

画像2

3 水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』(小学館)
 2019年の読書テーマのひとつがBL作品を読むことだった。それについては、別稿で書くが、それは言い換えるならば「人を好きになること」について改めて考えることでした。その中で、何度も読み、考えさせられたのは、この水城せとなさんの連作集だった。この作品は、来年行定勲監督による映画が公開される予定だ。
『窮鼠はチーズの夢を見る』
 何をもって「本気」とするのかは難しいけれど、本気で恋をすると美しいことばかりではないから厄介だ。そのことを実感させられる。でも、恋をする苦しささえも美しいから、強く惹きつけられる。
『俎上の鯉は二度跳ねる』
 『窮鼠〜』の続篇。一度成就した恋も、そこで終わりではないことを知らされる。人の心は揺れる。その揺れをどう見るか。揺り戻しを待つか否か。自分は何を選択するのか。自分で選択したことでも、選択した途端にそのことに不安になる。その過程をじっくり読ませる。読まされてしまう。切なくて切なくて切ない。

画像3


投げ銭用のかごのつもりでサポートエリアを開けております。よろしければお願いいたします。いただいたサポートは本の購入に充てようと思います。(あ、でもプリンを食べてしまうかも。)