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2019/12/21 高野寛アルバム発売記念スペシャルライブ「Tokyo City Folklore」@The Garden Hall(恵比寿)

高野寛デビュー30周年の締めくくりに発表された「City Folklore」のツアー(1st season)を終え、今年最後のライブとして開催されたのが、今回の「Tokyo City folklore」だ。高野さんのライブはたくさん観てきたけれど、いつだって高野さんはこちらの想像を超えてくる。それがライブを楽しむ醍醐味だ。

今回のライブは、秋のツアーとは異なるバンド編成の特別版だ。田中拡邦(MAMALAID RAG/Gt)、斎藤哲也(Nathalie Wise/Key)、鈴木正人(Little Creatures/Ba)、坂田学(Dr)、山本哲也(anonymass/MAC & Syn)という豪華な顔ぶれ。これまでにも何度も高野さんと共演してきた人たちなので、メンバーの名前を見るだけでも楽しみが増す。

実際、バンドで演奏される曲のひとつひとつが、どれもきらめいていて、音の豊かさにうっとりする。元々「シティ・ポップ」をテーマにした作品で冨田恵一プロデュースらしいキラキラした感じがあるけれど、今回のライブはCD以上に音が華やかになっていて、本当にすばらしかった。わたしにとっては2019年ベストライブだった。ライブ盤をぜひ発売してもらいたい。

第1部
01 魔法のメロディ
02 Bye Bye Television 
03 CUE
04 Altogether Alone(ハース・マルティネス Hirth Martinez のカバー)
05 ピエールとマリの光
06 もう、いいかい
07 停留所まで
第2部
08 エーテルダンス
09 とおくはなれて
10 海抜333mからのスケッチ
11 Everlasting Blue
12 Wanna be
13 はれるや
14 Tokyo Sky Blue
15 風をあつめて(はっぴいえんどのカバー)
16 夢の中で会えるでしょう
17 ベステンダンク
encore
18 虹の都へ
19 Winter's Tale
20 morning star ~確かな光(弾き語り)

どこをとっても最高だといいたい。でも、わたしは2曲目「Bye Bye Television」で 心をぎゅっとつかまれてしまった。元々この曲はギターによるメロディが印象的なのだけれど、高野さんと田中氏ふたりで弾くからアコギとエレキの両方の良さが味わえるし、田中氏のコーラスがかなり効いていた。サビを思い出すだけで、胸が締め付けられるような切なさが蘇る。本当に本当によかった。

これだけ感動しておきながら、「Bye Bye Television」を自分にとっての「本日の一曲」次点にせざるを得ないのは、数ある高野寛の曲の中で最も愛している「海抜333mからのスケッチ」が演奏されたからだ。

シングル『Black & White』(2009)のカップリング曲「海抜333mからのスケッチ」はアルバムにも収録されていない小品だ。東京タワーの展望台からの眺めを歌ったこの曲は、今季ツアー初日の大阪で歌われたものの、これまでライブではほとんど演奏されてこなかった。でも、わたしにとっては、この曲のプロトタイプ「15年前」を2004年の大阪で初めて聴いたときから大好きで、それがシングルで発売され、またライブで聴けたときには感激しきりだった。弾き語りでも数回しか演奏されていないこの曲を、バンド編成で聴くのは初めてだった。こんなにも素敵になるのかと、改めてこの曲の美しさに涙が出た。

ああ この展望台越しに 二人 夕陽浴びて
変わる日々の美しさと激しさを 胸に焼きつけて

――高野寛「海抜333mからのスケッチ」

昨日twitterで見た『シティポップとFuture Funkの台頭』という動画で指摘されていた「懐かしさ」が、ライブの後に高野さんの曲と結びつく。わたしが「海抜333mからのスケッチ」や「Bye Bye Television」「Everlasting Blue」に惹かれるのは、「過去と現在の狭間の音楽」であり、その「現在」が「過去」だけではなく、「未来」へも結びついているからなのだと気がついた。これら3曲は、新譜に収められた「Tokyo Sky Blue」と時を越えて繋がる。

他の芸術作品と同様に、音楽も「そのときにしか作れない」「そのときだから作ることができた」ものだと思う。だけれど、様々な人やものと出会い、色々な経験を重ねてゆくことで、表現できるようになることや分かるようになることがあるのだろう。そして、それは享受者も同じだ。続けることの意味、そして長く好きでいることの意味。

ライブの合間に高野さんは「自由」という言葉をよく使う。弾き語りを始めてその練度が上がり、思いのままにライブができる。コンピュータで組み合わせて表現も幅が広がった。その流れの先にあるのが今日だ。実力派のサポートを受けると、仲間に任せられる分だけ高野さん自身が「自由」になる。そのおかげで、高野さんの魅力が最大限に発揮される。今日、わたしは史上最高の高野寛を目の当たりにしていたのだと思う。

一度完成したものを超えることは簡単なことではない。でも、昔何かのインタビューで、トッド・ラングレンの言葉を借りて「最高傑作は次回作」と言った高野さんの言葉に期待したい。この次も、新たな高野寛の音楽についていけるように、わたしも心を動かすことを忘れずにいたい。

ずっと大好きなミュージシャンが、30年を超えて活動を続けていてくれて、いつだって最高な音楽を届けてくれる。こんな幸せなことはない。本当に大好き。

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《補記 2019/12/27》
「ベステンダンク」、曲のおしまい、最後のサビに入る直前の間奏で高らかに右手人差し指を上げた高野さんは、最高に格好いいポップスターだった。思わず曲後「ヒロシー!」と叫んだ。ほんと素敵。大好き。

《補記 2019/12/28》
当日の様子(写真)は、高野さんのnoteでご覧ください。



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