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「不便益」を考える
マーケティングに携わっている
人であれば、
「便益」
という言葉は必須ワードです。
「Benefit/ベネフィット」という
元の英語を使うことの方が、もはや
多いような気がしなくもないですが。
この「便益」という言葉は、
「便利」の「便」と、
「利益」の「益」とを組み合わせて、
モノやサービスを消費する方にとって
「何か良いこと」
「何か嬉しいこと」
を指す言葉です。
消費者としては、
便利であった方が良い、
利益になった方が良い、
そういう前提に立つのが常識だと
思いますが、
この「便益」に否定の「不」を付けた
「不便益」なる言葉があるのを
ご存知でしょうか?
京都先端科学大学の川上浩司教授が、
この「不便益」の第一人者。
その定義はどういうものかというと、
読んで字のごとく、「不便の益(benefit of inconvenience)」
とあるのですが、これだとさすがに不親切
ですよね。
ブログにある、「不便益」とは何か?を
説明している箇所を私なりに定義として
手短にまとめてみたものが、こちらです。
「不便益」とは、科学技術の発展により簡略化された日常の暮らしにおいて、あえて不便を選択することで得られる価値や効用を指します。
これには、便利さによって失われがちな経験や学びが含まれます。
なかなか興味深い概念だと思いませんか?
川上教授が、具体例として挙げているものに
「素数ものさし」があります。
「素数ものさし」は不便益デザインの一例です。これは「頭を使わずに長さが測れるとは便利すぎる」という発想から生まれたもので、「測る時には計算が必要にしよう」と考え、目盛りを素数だけにしました。1センチを測るには2と3の間、4センチは3と7の目盛り間で測るというものです。このように次々と測り方が思いつくと、「もしかしてすべての自然数は素数の差で出せるのではないか」という仮説が芽生えてしまって、それを確認したくなるんです。
「ものさし」本来の機能として求められる
「長さを測ること」において欠陥がある
わけですが、その不便さが、新たな便益
(ここでは、「色々な仮説をついつい考え
ついてしまう」という感じでしょうか)を
生んでいるわけです。
つい最近、フジフイルムの「チェキ」が
人気だという記事を目にしました。
その人気の理由というのが、なんと
「不便さの追求」ということで、
正に「不便益」の実例ど真ん中。
このINSTAX(チェキ)、世界100カ国展開、
年間販売台数1000万台を超えているそうで、
フジフイルム最大の稼ぎ頭へと成長したと
いうから驚きです。
2021年に発売した高機能機種では、
プリント操作を「ボタン」ではなく、
あえて「レバー」にしたそう。
「カチャカチャ」という音や手触り感を
楽しみながらプリントできる仕様が、
顧客の心をつかんでいるのだとか。
「ユーザーと話をすると、(INSTAXの)不完全さだったり、曖昧さ、手間のかかるところがいいと言われます」
とは、同社INSTAX統括マネージャーの
高井隆一郎氏による弁。
不完全さを「味わい」と解釈してくれる
顧客は、正に「不便益」を堪能している
のです。
自分たちの商品やサービスに、少し
足りない点、至らない点があっても、
そこから何か「不便益」が得られは
しないかを考えてみると、思わぬ
突破口が開けるかもしれませんね。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。