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照明で差別化する

先日、私が新たにお世話になっている
会社の歓迎会(兼送別会)が催された。
天王洲アイルにある、T.Y.HARBORという
ビアレストランが会場。

写真にあるように、最後のデザートの
ところで、ケーキに花火が刺さっていて、
一興を添えてくれる展開。
見えていないプレートの下方には、
私の名前と「Welcome on board!」
チョコレート文字があり、心温まる
ひとときを過ごすことができた。

このT.Y.HARBOR、「Since 1997」とある
通り、かれこれ四半世紀の歴史がある。
寺田心平社長は、寺田倉庫の創業一族。
Historyを拝見するに、元々は寺田倉庫の
一部門として始めたこのレストランを、
独立事業としてスピンアウト
したように
読める。

2003年に広尾にオープンして一世を風靡
したCICADAも、同じグループ。
2012年に表参道に移転し、非常に大きな
店構えになったにもかかわらず、
常に予約の取りづらい大人気ぶり。

広尾時代に一度お邪魔したことがあったが、
照明をかなり落とした店内はムーディで、
大人の男女がその雰囲気と酒食を存分に
楽しんでいて、異国情緒たっぷりの空間
何とも忘れがたいお店として記憶に刻み
こまれた。

表参道に移転後も何度かお世話になり、
いつ行っても変わらない最高の雰囲気と、
美味しい料理、そして店員の接客がまた
素晴らしくカッコいいので、私の中では
「間違いのない店」として別格の地位を
築いている。

このムーディな雰囲気、実は寺田社長が
「照度」に極めてこだわって、自ら確認、
指示を出している
との話を聞いたことが
ある。

T.Y.HARBORでもCICADAでも、その他の
系列レストランにおいても、柔らかで
照度の低い間接照明を徹底
しており、
その空間づくりこそがレストランの
雰囲気を引き上げ、顧客体験の満足度を
引き上げている
ことは疑いない。

あかりと暗がりのバランスが織りなす
「陰翳」こそが、日本の伝統美であると
谷崎潤一郎が『陰翳礼賛』で述べている
通り、日本も元々はほの暗いあかりが
普通に使われていた。

しかし、戦後の日本人は、蛍光灯が
隅々まで直接照らしてくれるような
明るい空間を好むようになっており、
T.Y.HARBORのような空間づくりをする
お店はそれだけで雰囲気の差別化
図ることができている。

すべてのものを「白日の下にさらす」
かのような蛍光灯も、それはそれで
有り難いものだ。
しかしながら、照度を落としたり、
間接照明を使うだけで、人の顔にせよ
インテリアにせよ、陰翳が味わい深く
迫ってくる
ようになり、捨てがたい
魅力がある。

そんなことを考えながら、
照明デザイナーとして世界的にご活躍
されている石井幹子氏のこちらの本に、
日本の「あかり」文化をより豊かに
するためのヒント
が多く書かれていた
のを思い出した。

久々に本棚の奥から引っ張り出して、
読み返したい。
但し、本を読むときは、眼のために
明るい照明にお世話になる予定だ。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。