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権威付けを狙ったコラボレーション

どうしても食べたい。
と思ったわけではない。
むしろ、あえて食べるまでもなく、
味は想像の範囲内でしかないだろう
という確信があった。
それでも買ったのは、
ここで分析のネタにしようという
意図があったからだ。

今日、最寄りのスーパーで見つけた
LOTTEの新商品。
定番商品「カスタードケーキ」の
八天堂コラボバージョン
である。

八天堂と言えば、「くりーむパン」
名を馳せる広島のパン屋さん。

しっとりとした口どけの良いパンに、
とろとろのくりーむがたっぷりと
詰まっている。

いつの頃からか、駅ナカや短期出店、
いわゆるPOP-UPショップを都内に
多数展開し、あれよあれよとメジャー
な存在に駆け上がった。
今では、消費者の間での認知度も
相当高いのではなかろうか。

私自身の記憶をたどると、10年以上
前に、当時渋谷の東急東横店の地下に
あった「東横のれん街」を出てすぐの
ところで、「期間限定」を強調して
POP-UPショップを出していた。
「今日は売り切れ終了」となって
いる日が少なくなかったので、
より一層記憶に残りやすかったのは
間違いない。

その後、8年ほど前だろうか、
永田町駅が駅を改装する過程で出来た
「エチカフィット」に、八天堂が
出店していた。
今度はPOP-UPではない。
結構上手に商売を積み上げてきて
いるのだなぁと、そこで更に印象
づけられたのを覚えている。

今では、EC通販事業もかなり積極的に
行っているようで、知名度は全国区と
なり、だからこそ今回のようなコラボ
も成り立つのだと言える。

なぜ広島のパン屋さんが、ここまでの
存在に駆け上がってこれたのか、
ちょっと調べてみたところ、こんな
記事を見つけた。

丁度2年程前の日経ビジネスの記事。
潰れそうだった卸主体のパン屋さんが、
2007年に戦略を大胆に転換。
小売主体、しかも100種類以上あった
パンをくりーむパンのみに絞り込んで
勝負に出た
とのこと。

この記事が、実に分かりやすく、
八天堂が成功に至った経緯を
まとめてくれている。
森光社長が現実とどう向き合い、
どのように戦略を描き、
実際に打ち手を実行に移していった
のか、是非一読をオススメする。

兵站が伸び切っていたのを、
くりーむパンにギュッと絞り込む
ことによって、劇的に圧縮。
オペレーションコストが下がり、
社員数は変わらないので利益率が
倍になる、そんな絵に描いたような
V字回復
を成し遂げていたのだ。

冒頭のLOTTEとのコラボ商品に
話を戻そう。
パッケージをパッと見た感じでは、
八天堂が相当深く関与している、
そんな感じを醸し出している。

しかし、八天堂「監修」とある通り、
あくまで八天堂の関与は「監修」に
過ぎない。


同じ「くりーむ」を使っている訳でも、
レシピを共通化している訳でもない。
あくまでも「八天堂のくりーむの味を
イメージ」
して作ったということで
ある。
実質的には、くりーむの美味しさで
定評あるブランド「八天堂」の権威を
借りて来たに過ぎない。

それでも、普通の「カスタードケーキ」
に比べると美味しく感じてしまう、
そういう消費者も必ずいるだろう。
食べ物は、舌で味わう*だけでなく、
必ず脳で味わうものだからだ。
「あの八天堂とのコラボ」という物語
要素が、幾分か下駄をはかせてくれる
はずである。

*結局これも脳の働きですが・・・

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まぁ、私のようにゴチャゴチャと
分析するのは脇に置いておき、
食べて美味しければいいじゃない!
そんな声が聞こえてきそうだ。
味は、やはり想像通り、ある意味
期待通りであったことをご報告
しておく。
ご馳走様でした。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。