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「話聞(わもん)」というコンセプト

「座右の書」と言われたら、
私が真っ先に思い浮かべるのは、
カーネギーの『人を動かす』
ある。
最近も、こちらのエントリーで
取り上げたばかり。

私のオススメに乗っかって、
この本を買ってくださった方が、
「帯がローランドでしたよ!」
とSNSで教えてくれた。

本の帯というのは、「販促スペース」
として非常に有効。
限られたスペースではあるが、そこで
誰が、どんなメッセージで、その本を
推しているかによって、売れ行きに
多大な影響を与えるであろうことは
想像に難くない。

ローランドと言えば、
「俺か、俺以外か。」
という、本のタイトルにもなった
台詞が有名だ。
ホストとして、モデルとして、
そしてタレントとして独特な活躍を
している彼の「推し」というのは、
これまでの読者層とはかなり異なる
お客様の興味を惹く
はずである。

未だに売れ続けている不朽の名著、
その裏には、出版社のきめ細やかな
フォローがあるのだなと感じさせ
られる出来事であった。

この本で私が最も影響を受けたこと、
それは「傾聴の大切さ」に尽きる。
人は話を聞いてもらいたがっている。
積極的に耳を傾けることで、
コミュニケーションは劇的に円滑に
進むようになる。

そんな「傾聴の大切さ」を中心に、
コミュニケーション術を組み上げて
いるのが、「わもん」を展開する
薮原秀樹さん。

「わもん」とは、「話聞」。
つまり、「話を聞く」こと。
とにかく聞く、まずは聞く、
「聞くことファースト」
言ってもいいかもしれない。

4章立てになっているこの本、
各章のタイトルが見事に本の
要諦になっているように
思われる。

第1章 絶対尊敬
第2章 完全沈黙
第3章 聞き手未熟
第4章 話聞一如

「絶対尊敬」とは、聞き手である
自分が、話し手である相手に対して
絶対的な尊敬の念を以て接しなさい
という意味合い。
人が話している途中で、つい誤りを
指摘したくなったり、自分の例を
話したくなったり、とかく口を差し
挟みたくなるのが人のサガ。

そこを乗り越えて、話し手に最大限の
尊敬と信頼の気持ちを送りながら、
ひたすら話を聞くこと。
そうすると、話し手はやがて自らの
力で答えを見い出すというのが
「わもん」の考え方だ。

「完全沈黙」とは、文字通り一言も
発することがない、ということでは
なく、静かな心で、話し手の話を
ありのままに受け止めること。
思い込み、偏見などに一切とらわれず、
話し手がストレスフリーに話せるよう
聞き役に徹しきることだ。

「聞き手未熟」とは、上記の二つ、
「絶対尊敬」と「完全沈黙」を以て
聞こうとしても、あまり上手に会話が
運ばないときに、その責任は聞き手の
未熟さにあるのだ、という考え方だ。

最後の「話聞一如」、これは著者の
提唱する「わもん」を行うことで、
聞き手と話してとの間に無意識の
共同体的な関係ができた理想的な
状態を指す言葉。
「心身一如」という、心と身体は
表裏一体、お互いつながり合い、
分けることはできない、という
言葉があるのになぞらえた表現
なのだろう。

昨今では、コーチングの考え方が
様々なところで浸透し、
パーソナルコーチを生業とする
人も増えてきている印象がある。
そのコーチングの考え方と、
この「わもん」の考え方とは、
ほぼ重なりあう
のではないか、
というのが読んでみて真っ先に
感じた印象である。

コーチングでは、答えは全て
クライアントの中にあり、
いかに話しをしっかりと聞いて、
クライアントが自らその答えに
たどり着けるかを支援するのが
コーチであると考える。

クライアントが、何でも自由に
話しやすい雰囲気を作るための
様々な工夫も、コーチングの世界で
語られていることと重なりあう。
「コーチング」なる言葉は一切
出て来ない本だったが、
ある意味「和製コーチング」
体系を作ろうとする試みなのかも
しれない、そんなことを感じる
本であった。

この本の発行は、長野県は小布施の
文屋さん。

度々取り上げている、伊那食品工業の
塚越寛最高顧問の本や、最近では
『ちよにやちよに』という君が代の
ルーツを巡る絵本を出版されるなど、
小さいながらも志高い出版社。
いつも質の高い本を世に送り出して
下さっていることに、感謝だ。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。