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「時短」から「時産」へ

私がまだ子どもの頃は、1億総中流、
共働きは比較的珍しく、
専業主婦がノーマルな時代。
それが、「失われた30年」の時を経る間に、
共働きの方が圧倒的なスタンダード
なってきている。

そうなると、どうやって家事に使う時間を
減らせるかが大きな課題。

手間のかかるもの、時間のかかるものは、
何かと敬遠される。
「時短」というコンセプトがもてはやされ、
手早くできることが価値とされた。

ここ数年、この「時短」を更に進めて、
「時産」というコンセプトが提唱される
ようになっている。
例えば、ジップロックを展開している
旭化成ホームプロダクツは、
「ゆとりうむプロジェクト」
なるものを発足させ、数年前から
「時産」に取り組んでいるという。

ジップロックよりもサランラップの方が
より有名だろう。
これら二つに加え、クックパーも旭化成の
ブランドだ。
更に、象印マルコメみそヘーベルハウス
焼肉のたれのエバラがオフィシャルパートナー
として名を連ねている。

単なる「時短」だと、「手を抜いている」と
取られがち
なことに着目し、時間の節約に
よってむしろ「ゆとりを産んでいる」という
ポジティブな捉え方をしよう
、というのが
この「時産」のコンセプトだ。

せっかく創意工夫して、時間を短縮して
みても、手抜きと解釈されてしまっては
報われない。

そうやって頑張る人は、
「時間があればちゃんと家事をやりたい」
という真面目な人が多い。

そういう人が、罪悪感を感じずに、堂々と
時短を実現して、できた「ゆとり時間」を
他のより有意義な時間に充てられたら、
世の中全体の幸福度は間違いなく上がる
言えるだろう。

この「ゆとりプロジェクト」参加企業
以外にも、「時産」をうたう企業や
ブランドが多く出て来ている。
例えば、オイルヒーターで有名な
デロンギというイタリアのメーカー。
最近はキッチン家電に力を入れている
ようで、「コンベクションオーブン」
いう商品が人気の様子。

その「コンベクションオーブン」、
グラタンやドリアのようなメニューだと、
食材を仕込んであとはオーブンにお任せ、
となるので「時産」家電なのだ

ということを紹介している。

オーブンよりも更に「時産」度合いが
高そうなのは、電気圧力鍋
「ほったらかし調理」と呼ばれている
ことが多く、コミュニケーション上は
「時産」より「時短」の色合いが濃い。

特に、SHARPTIGERといった既存勢力、
そこに安さで勝負を挑むアイリスオーヤマ
あたりは、どうしても「時短」をうたう
感じに見える。

そこに、センスの良さ、スタイルという
別の差別化軸
を持ち込んでいる「新参者」
系の調理家電メーカー、例えばBRUNO
Sirocaあたりが参入してきて、
正に「時産」というニュアンスを伝える
ようになってきている。

「時短」ではなく「時産」。
根付くまでにはもう少し時間がかかるかも
しれないが、このコンセプト自体は、
調理する消費者側のインサイト(ホンネ)を
うまく汲み取って、罪悪感のない適切な
表現に見事に言い換えた事例
であると
評価できそうだ。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。