見出し画像

「原始思考法」の衝撃

1991年というと、私が高校を卒業した
年にあたる。
振り返れば、その年はバブルが弾けた
年でもある。
当時はまだ、それがバブルだったと
いう認識が社会に行き渡っておらず、
じわじわと時間をかけて
「あれはバブルだったのだ・・・」
という共通認識が形成されていった
ように記憶している。

そんな1991年の頭に、一冊の本が
講談社から出版されていた。
齊藤令介著『原始思考法』である。

(絶版のために、Amazonでは大変高騰
している状況ゆえ、ご注意願います。)

いつもお世話になっている知人に、
有り難くも同書を拝借する機会があり、
読ませてもらったのだが、
これがなかなか興味深い本だった。

もう30年前の本ゆえ、普通のビジネス書
の類だったら中身が陳腐化してしまう
ところ、この本で語られていることは
極めて本質的であり、全くもって陳腐化
していない。


著者の齊藤氏は、なんとプロのハンター
大学を中退してカナダに渡り、狩猟生活
を続けたとある。
帰国して、世界中を狩猟で渡り歩いた
体験をベースに、各国のハンティングと
フィッシングのルポを発表していたと
いう。

そして、「はじめに」で触れられている
エピソードには、あの作家・村上龍氏に
原始思考法に基づいたアドバイスをした
ところ、当時悩み苦しんでいた彼が立ち
直る原動力となり、やがてベストセラー
となった『愛と幻想のファシズム』を
書き上げるに至った
というのだ。


そんな氏が説く「原始思考法」とは、
一体どんな考え方なのか。
名前に「原始」とあるところから
ある程度推測できると思うが、
人間の本能、現代に至るまでに人類が
種として経験してきた蓄積に、忠実に
なるというのが肝
である。

目次を眺めるだけでも、おおよその
考え方の骨格はつかめる。
例としていくつかキーワードとなる
ものをピックアップしよう。

本能で考える
人間も動物
群れ思考から個人思考へ
死ぬために生きる
闘いは人間の本能
弱肉強食
優しさは強さから生まれる
女はメス、男はオス
・・・

人によっては嫌悪感を催す向きも
あるかもしれない。
しかし、頭でっかちになった現代人
には非常に良い刺激だと個人的には
考える。
殊に、平和ボケしている日本人に
とって、本書のような主張は必聴に
値するだろう。

人間の本質が、50年や100年でそう
簡単に変わるわけではない
のだ。
結局のところ、戦争はいつまで経って
もなくならないわけだが、これも
本質的に人間が闘いを求めている
と考えればすんなり理解できる。

男女差別やLBGTといった話題が
最近よく取り沙汰されるが、生物と
しての人間が種の存続を考える上で
男女が役割分担をするのは当然で
あり、何でもかんでも男女同権を
叫ぶのは本質からずれている。

著者が狩猟生活をする中で
培った視点、知見を基に練り上げた
この「原始思考法」に基づいて、
日本の問題点、世界の問題点などを
縦横無尽にバッサバッサと斬って
斬って斬りまくる後半の記述は、
令和の現在になっても驚くほどに
的を射ている辺り、著者の思考法が
ホンモノであり、本質的であることを
証明しているように感じられる。

『話を聞かない男、地図が読めない女』
を読んだ時に受けた衝撃と、かなり
近い感覚の衝撃だった。

文明を生きる「人」として、成長
できる部分は当然沢山ある反面、
「生物としての人」として、変え
ようのない本能、本質の部分もある
ということを認め、どう付き合って
いくかを考える
必要がある。
そんなことを改めて教えてくれた
良書であった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。