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目の前のお客様に喜んでいただきつつ、将来のお客様にも心を馳せる

少し前のことになるが、
東京駅にある虎屋運営のカフェに
お邪魔した。

席に大層ゆとりがあり、
天井が高く開放的で、
大変に居心地の良い空間。

さすがは、一流の和菓子店。
いや、日本一と呼称しても差し支え
ないであろう。
妥協のない店づくりをしている
ことに感じ入った。

ご進物を選ぶ際、
まず間違いないものを、
という場合は、虎屋を選ぶことが多い。

誰でも喜んでいただける可能性が
極めて高い。
それだけのクオリティの高さと、
安定感を兼ね備えている。

虎屋の赤坂本店がリニューアルした
直後くらいに、その本店にお邪魔して
ご進物を購入したことがある。

以前の本店は、「行燈」を模した縦長の、
10階建て位のビルだったそうだが、
2018年にリニューアルした際には、
4階建て程度の低層へと変化。

木をふんだんに使った内装が外から
美しく映える、全面ガラス張りの
建物は、非常なる存在感を放っている。

このリニューアルをした頃に、
当時の黒川社長をインタビューしている
記事を見つけて読んでみた。

タイトルに、
「『伝統と革新』という言葉を
使わなくなりました」

とある。

虎屋のような老舗企業は、
長く続いてきた秘訣が必ずある。
そしてそれは、長きにわたる伝統に安住せず、
常に革新的なことにチャレンジしてきたから

こそ。
そんなことが語られていたとしても、
全く違和感がないし、むしろ納得感が高い。

しかし、黒川社長は、
「革新なんておこがましい」
との趣旨を述べ、さらにこう続ける。

そんな大層なことの前に、今、目の前のお客様に喜んでいただくために何をするのかを考え、即座に実行していくことが大事です。それは必然であって、革新ではないと思うのです。

一客一客を大切にする精神。
「今、ここ」ですぐに行動を起こす力。
目の前にいらっしゃるお客様に、正に今、
どうやって喜んでいただくかを考え、
速やかに体を動かす
こと。
そちらの方が、より重要だと力説して
いるのだ。

だからと言って、革新的なことを考える
こと自体を否定するものではない。

まずやってみて、そこで分かることが
沢山あるだろうから、そのフィードバックを
うまく使いながらまたやってみる。
そのことの繰り返しだということを
おっしゃっているのだ。

実際、上記連載記事の別記事で、
先代社長が
「羊羹を自動販売機で売ったらどうか?」
というのを踏みとどまらせた黒川社長が、
新しい赤坂店で自ら自動販売機をやって
みようと言い始め、周囲の反対を押し切り
実際に設置
したというエピソードを
読ませてもらった。

丁寧な接客が不要だというお客様も、
中にはいらっしゃるのではないか?
などといった仮説を確かめるべく、
赤坂店の1階に導入。

現在も稼働しているようなので、
恐らくは一定の需要が実際にあった
いうことなのだろう。

結局、黒川社長は、その言葉とは裏腹に
「革新」も上手に取り入れながら
虎屋を経営されている
のは間違いない。

目の前の一客、個客を大切にする。
と同時に、将来の「まだ見ぬ客」が
何を求めるのかを推測・察知して、
世の中の「半歩先」を行くことを
提案
していく。

両者のバランスを上手に取り続ける
ことが、経営者に問われるのである。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。