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「どろぶた」牧場見学記

帯広に旅行に来ています。
2日目は、こちらで事業を営む友人が
丸一日付き合ってくれて、
彼の仕事も少し絡めながら、
お仕着せの観光ツアーではまず
お目にかかれないような場所へ
あちこちと連れ回してもらいました。

その中で、最も印象深く、
またマーケティング的にも面白いと
思った「どろぶた」の牧場について
紹介させてください。

帯広市の隣、幕別町にある
エルパソ豚牧場が生産する豚肉を、
「どろぶた」の愛称で呼んでいます。

その名の通り、どろんこになって
遊ぶ豚が飼育されている様子を
見ることができました。

豚というのは、体温調節が苦手で、
汗腺が鼻の下にしかないらしく、
暑さがとても苦手なのだそう。

体全体を冷やすためには、水場に
体を浸すしかなく、結果どろんこに
なるのだとか。

この日は30度、こんな風に水で体を冷やさずにはいられない豚くんなのでした

通常、豚の飼育というと、狭い厩舎で
ひたすら餌を食べ続ける様子が
思い浮かぶのではないかと思います。

しかし、この牧場では、何とも広大な
敷地で放し飼いを行い、豚たちに極力
ストレスを与えることなく育てている
とても興味深いところなのですね。

昨今では、「アニマルウェルフェア」
という概念が議論されるようになって
来たのはご存知でしょうか?

要は、家畜をもっと大切に扱いましょう、
あまり酷い扱いをするのはやめましょう、
という考え方です。

鶏のブロイラーなど、非常に劣悪な
環境下に置かれているのは周知の事実で、
消費者の安さへの期待に応えるために
目一杯厩舎に鶏を押し込めているのが
現状でしょう。

それがために、鶏インフルエンザが
流行って厩舎ごと全滅、などという
世にも恐ろしい事態に見舞われる
リスクも孕んでいるわけです。

この点、「どろぶた」たちは、
本当に広い牧場でのびのびと育って
おり、ストレスに悩むことはまず
ないだろうという環境。

とにかく広く、アップダウンも激しい牧場

妊娠した母豚たちや、子豚に乳をやる
母豚たちが入る厩舎も、
通常は寝返りを打てない狭さに
敢えてするそうなのですが、
こちらの牧場では余裕を持たせた
つくりをしています。

豚一頭あたりの面積が広く取られています

子どもを産んだ直後、母豚が寝返りを
打ったせいで圧死するというのが、
子豚の死亡原因として多いための策
でもあるようですが、ここでは母豚の
ストレス低減を第一に考えているご様子。

子豚たちが乳を貪るように飲んでいました

お話を聞いたところ、
「どろぶた」は9ヶ月ほど飼育した上で
屠畜場へと出荷するらしいのですが、
これは一般的な4ヶ月の2倍以上。

更に、一頭あたりの土地面積を考えると
通常の4、5倍はあるとのことでした。

即ち、単純計算でグラムあたり単価を
8〜10倍にしないと合わないことに
なります。

一般ルートではなかなか商機を掴むのは
無理かもしれない分、これだけ徹底して
こだわった良さを分かってくれる
お客様も必ずやいるはずなのですよね。

なかなか入れないことで有名な、
表参道のトンカツ専門店、
tonkatsu.jp
という名店はご存知でしょうか?

食通の友人が教えてくれたこの店は、
トンカツの素材となる豚肉の銘柄を
各生産地まで足を運んで吟味、
それぞれ価格も変えて食べ比べできる
という、トコトンこだわりを詰め込んだ
お店だと聞いています。

そのお店のサイトで、銘柄豚を訪ねる
というコンテンツのトップの方に
しっかり「どろぶた」が紹介されて
いたのは、かなりサプライズ。

生産者の思いの乗った高級豚、
そこからほど近い場所で、
その味わいを試す機会も得ました。

ステーキ定食 2,000円也

地元の名店「食堂 このみ」さんで、
こちらの「どろぶた」を使った
ステーキ定食にありつけたのです。

くさみがとても少なくて、
脂っぽさもかなり抑えられており、
それでいて豚肉としての旨みも
バッチリな、さすがのお味でした。

しかし、後から表参道のトンカツ屋の
件を知ってしまった今では、
このこだわりの肉はトンカツで食べた
方が違いが分かりやすいのでは?
という思いに駆られています。

まだまだ流通量が少ない「どろぶた」
是非チャンスがあれば召し上がってみて
いただきたいと思います。

小高い丘陵になっている牧場から見下ろした風景

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。