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ドラッカーの事実上の「自伝」

『傍観者の時代』
"ADVENTURES OF A BYSTANDER"

正直に言うと、このタイトルは失敗ではないか、
そのように思わなくもない。
一体、どんな内容なのかがサッパリ分からない、
伝わってこないからである。

ただ、そもそもドラッカーが書いた本を読もう
などという、ある種気合の入った潜在読者層
対しては、あまりキャッチーなタイトル設定を
しても仕方ないのかもしれない。

その分、本に付いている帯が、色々とそそる
内容を提供してくれている。
あの糸井重里さんが推薦文を寄せているのが
写真から分かるだろう。

そして何より、ご本人のコメント。

本書こそ、ついに私が書きたくて書いた本だった

ドラッカー本人がそこまで言うのなら、
読んでみたくなるというもの。

帯の背表紙部分には、
ドラッカー 事実上の「自伝」
という文字も踊っている。

地味なタイトルに比べ、この帯のインパクト、
力強さはなかなかのものだ。

他のドラッカー本愛好者の方々からも、
面白い本であることは噂でかねがね
耳にしていた。
それでも、長らく本棚の肥やしになっており、
最近ようやく読み終えた。

面倒だったわけではない。
つまらなかったということも決してない。
むしろ、読み終えてしまうのが勿体ない、
そんな感情を抱えていた。
だから、少し時間に余裕のある時を選び、
1章ずつ、大事に読み進めたのである。

15章からなるこの本には、ドラッカーが
関わってきた様々な人々が登場する。
彼が生きてきた時代の流れにおいて、
世の中に多大なるインパクトを与えた
著名人がこれでもかというほど登場する。

その誰もが、この上なくユニークで、
なにがしかの際立った特徴を持ち、
時代を文字通り作ってきた人たちだ。
そんな人たちの中で揉まれてきたからこそ、
ドラッカーという稀代の傑物が誕生した
という側面は否定できないだろう。

ドラッカーが観察してきた「他人」を
生き生きと描写することを通じて、
「自分」が生きてきた時代を表現し、
それが結果として「自伝」にもなっている
というこの本は、ドラッカー本としては
かなり異質
だ。

それでも、「新版への序文」にある通り、
彼自身「最も楽しく書いたもの」である、
そのことが読者にも伝わってくるような
本である。
ドラッカーは難しくて苦手、という人で
あっても、この本であればひょっとしたら
楽しく読めるのではなかろうか。

但し、私がもっと若い時分にこれを読んだ
としても、その良さがどこまで理解できた
か、やや心もとない。
読み手に、歴史、政治、経済といった分野に
おけるそれなりの知識や造詣が求められる。

ビジネスでもそれなりに経験を積んで、
この本を理解する知的体力が上がったから
こそ、これだけ楽しく読めたという部分が
多少はあったかもしれないと思うのだ。

そう考えると、結局どのタイミングで読む
のが良いかの判断が難しいところ。
まぁ、正解は人それぞれ。
気が向いたらそれが読み時、程度の感覚で
良いかもしれない。
「必読」の評価は動かない。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。