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【感想】「ほうしょうぶしゃくらいいこ」読み切りマンガ

こんにちは。
パインブックです。
今回は、こちらのジャンププラスの読み切り「ほうしょうぶしゃくらいいこ」(安芸勘谷)の感想を書いていきます!

上記ジャンププラスのサイトから無料で読むことができます。
この読み切り漫画が公開されたのは2022年1月24日と1年以上前です。

なぜ今この漫画を読んで感想を書くのかというと、漫画原作を書くにあたって色々と調べている中で、この記事(漫画原作を作るにあたって参考にした書籍など【ジャンププラス原作大賞】|パインブック🍍|note)でも紹介したRootportさんが、ログラインの優れたマンガとして「ほうしょうぶさくらいいこ」を例にあげていたからです。

最近読んだ読切マンガでは『ほうしょうぶしゃくらいいこ』が優れていた。この作品のログラインは「不登校になるほど滑舌の悪さにコンプレックスを抱いていた少女が、放送部員になるお話」みたいな感じになるだろう。

@rootport

それで、へ~と思ってこのマンガを読んでみると、めちゃくちゃエモくて面白かったんです。
このマンガの面白さについては、Rootportさんがログラインの観点から説明されています。

個人的に好きなところ。

「ほうしょうぶ しゃくらいいこ!」
「あたしは しゃべゆのが だいきやいです!!」

論理的な面白さについては、Rootportさんがよく説明されているので、私はただ個人的な好みから面白さを書きますw(ネタばれを含んでいます)

・まず、うまく喋れない無口な女の子っていうのが好きです。
八の字眉の桜井さん。最初のシーンで、落としたリボンを拾ってもらうところ、「ありがとう」と感謝の言葉を言えないので、律儀にペコリと2回もお礼をするところ、主人公の桜井さんの性格をよく表しています。

お家に帰って、母親とであれば素直にお話しできるのですが、お母さんからはいつも子ども扱いをされて、桜井ちゃんは怒ってしまいます。
「ごちしょうさま!!」
そういってプンスカ怒って席を立ち自分の部屋に戻っていく桜井ちゃん。
それでも律儀に食器をシンクに戻したのでしょうか。
食器のカチャンという音すら愛おしく感じてしまいます。

・放送部の阿出川先輩によりコンプレックスを克服しかける。
「滑舌? それも君の個性で魅力だと思いますが」
ファミレスで阿出川先輩から放送でしゃべってみることを提案されます。
ですが、他のお客さんの会話により、忘れかけていた彼女のコンプレックスをまた思い出してしまいます。
その時の八の字眉で愛想笑いをしている桜井ちゃんの顔を見ると、もうなんとも言えない気持ちになってしまいます。
そして、また何も話さないでペコリとお礼だけしてその場を去ってしまいます。

無口で繊細な桜井さんに対して、阿出川先輩は話し上手でちょっと強引な性格なので、二人のキャラが対になっていて良くたっている感じがします。

・追いかけて振り向いた桜井さんは、振り向いくと泣いています。
ここでリボンを川に落として、クライマックスの伏線になります。

ここまでで一度滑舌のコンプレックスを忘れかけ、心を開きかけた桜井ちゃんですが、また挫折して振り出しに戻ってしまいます。
ここの感情の吐露は、桜井さんの心の葛藤がリアルでとても感情移入できるものになっています。
やっぱり、スムーズに課題を解決するのではなく、こんな感じに挫折や葛藤、強い障害があることで、さらにクライマックスのエモさが増すのだと思います。

・放送の最終回で喋る桜井ちゃんのシーン。
ここでクライマックスの桜井ちゃんが放送で喋るシーンです。
「ほうしょうぶ しゃくらいいこ!」
「あたしは しゃべゆのが だいきやいです!!」

このシーンをみせるためにのお話を進めてきたような、とても高まるシーンです。
このシーンの前では、放送開始までの5秒前…3…2…とカウントダウンが始まり、桜井さんの台本を持つ手が「ぶるっ」と震えているところから、最後のコマで「ぎゅ」と覚悟を決めるところなど、ものすごく強いヒキになっています。

その後、エピローグみたいな感じで滑舌のコンプレックスを克服した桜井さんの様子がコミカルに描かれています。

クライマックスで泣きそうになる。

「ほうしょうぶさくらいいこ」は、とにかく面白い読み切りマンガなのです。
クライマックスのエモさを味わってほしいのですが、電子マンガでは最初の数ページで離脱してしまう読者が多いみたいですよね。
そうなると、クライマックスに到達する前に離脱してしまう可能性があります。
こうやって、このマンガは面白い!との評判を聞いたら最後まで読むとは思うのですが……。

雑誌の読み切り漫画では、最初は読むつもりはなかったけど、ペラペラと雑誌をめくっていたら見開きのクライマックスページが目を引いたので、内容が気になったので読んでみたら面白かった。なんて体験談も聞いたことがあります。
そうなると、電子漫画では今回のクライマックスの桜井さんが放送で話し出す見開きページを最初に持ってくると、離脱率は下がるのでしょうか。
でも、そうなるとクライマックスまでの感情を駆け上がる感が少なくなるのかも…なんて色々と考えてしまいます。

あと、「ほうしょうぶさくらいいこ」というタイトルですが、パッと見てなんの漫画なのか全然分かりませんでしたw
内容を知ると、キャラの設定を表している良いタイトルなんですが、読者をひきつけるという点ではどうなんでしょうかね。よく分からない日本語が並んでいて、なんだこのマンガは!と興味を持つかもしれませんし、内容が分からないのでスルーされてしまうリスクもあるかもしれません。
放送部の学生もの漫画だ、とわかっていれば読んでみたいと思う人もいるかもしれませんよね。難しいです。

参考にしたいところを箇条書きで。

面白いマンガだったので、どうして面白く感じたのか自分なりに箇条書きにして、自分にとっても勉強させていただき今後に活かせたらと思います。

・最初と最後で変化が分かりやすい。
桜井さんの滑舌のコンプレックスを克服する前と後という主人公の内面的変化。放送を聞く側からする側という役割の変化。まわりが桜井さんを無口だ評価していたところから、応援するという環境の変化。

・主人公の無口だけど律儀で性格の良さそうなところ、心の葛藤などを主人公の行動、周りの会話などから丁寧に書いている。
欠点を抱えている主人公は愛されやすいと思いますが、ただ欠点を持っているというだけでなく、その欠点を悩んでいるところ、克服しようとしているところ、欠点を補うためにペコリと礼をして頑張っているところなど、応援されやすいキャラになっていると思います。
主人公の部屋には、滑舌をよくするための本がたくさん並んでいて、その欠点を克服しようとする姿がしっかりと描かれています。

・リボンを拾う伏線がちゃんとはられているところ。
マンガの中で、最初のシーンでもリボンを落としたり、放送の前にリボンをきゅっと占め直したり、リボンと心の動きが連動しているように見えますし、なんといってもクライマックスシーン前の重要な伏線になっています。
桜井さんが放送で喋るというのはかなり勇気のある行動ですが、阿出川先輩がリボンを川で拾っていたということが分かり、それがその行動の大きなきっかけとして機能していて、心理的にも主人公の感情の変化、放送で喋りたいと思う決意をスムーズに理解しやすいです。

・本編でずっと主人公が滑舌が良くないのが面白い。
主人公の桜井さんの滑舌がずっと良くないので、お話全体を通してずっとなんだかふわふわした面白い空気が流れている感じがします。
それが面白いので飽きないで読み進められる効果がある気がします。
主人公のキャラの強さですね。
マンガは、応援したくなるキャラが大切だとすごく感じます。
あとは単純に主人公が女の子だと強いなと。自然と応援したい気持ちになりやすいですし、絵としても華があります。キャラのことを好きになりやすい気がします。

・見開きページのエモさ。
ここでキメたい!という気持ちが伝わります。
ここぞのシーンで思いっきり迫力あるコマを作るのがいいと思いました。

細かく書くとまだまだありそうですが、とりあえず印象的な点を書いてみました。
とっても面白いし、勉強にさせていただきたい読み切りマンガでした。
ではでは。

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