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鼓舞という名の遺書、遺書という名の鼓舞

いつの日か心にぽっかり穴が開いたような感覚で生きていた。
いつの日か楽しかった事が前よりも楽しくなくなった。
いつの日か人と会うのがしんどくなった。
「全ては自分のせいだ。」

幼少の頃の自分は何というか凄いダメな意味でやんちゃな奴だった。
小学生の頃は時折落ち着きがなくなるし、授業中もそこそこ騒いでいた。
良い風に言うと元気な奴だった。
それが、年齢を重ねていくにつれて自分に自信がなくなり元気がなくなっていった。
小学生の頃はそれなりに充実していたと思う。クラス人数21人のそこそこ少ない中で、みんなとサッカーしたり教室でけん玉したりごっこ遊びしたりして正直、鮮明な記憶はないけどめちゃくちゃ楽しかったのは覚えている。
中学も全校生徒170人ほどの小さい学校でほとんどの人と同じクラスになったくらいで、大きないじめもなくそれなりに楽しい中学生活を送れていた。部活はキツかったし、この記憶を美化はしたくない。
でも、まぁ楽しかったっちゃ楽しかった。

自分の歯車が狂い始めたのは高校3年生の時だっただろうか。
自分は幼少の頃からたくさんの夢があった。
「歌のお兄さん」「ベビーカステラ屋さん」「スーパーの店員」
その中で一番なりたかった夢は「お笑い芸人」である。
幼少の頃から兄の影響でずっと見ていて、見ていくうちに段々強い憧れを持つようになった。
一人でお笑いごっこして、家族に見られて照れてしまうというのがお決まりであった。
しかし、肝心の芸人になりたいという事実だけが中々言えなかった。
気が付けば言い出せずに10年以上経った。
高校3年生になり、進路の事を考えるとなった時、みんなは当たり前のように進学を希望していた。
自分は芸人になりたい。でも、反対されるのが怖い。何言われるか分からない。
結局、言い出せずに進学を選んだ。
それが大きな間違いだったのかもしれない。

大学に進学してからは地獄の日々だった。
授業は全く興味がなく、全く面白くないし興味がそそられない。
そして難しすぎてついていけない。
教授に課題の質問しても「あなたはそんなレベルじゃない」と冷たく突き放される。
70人程いた学科のグループLINEに「○○の課題について教えてください。」と写真付きで送っても全員から既読無視される。
何もかもが嫌だった。
2年生になった頃、僕は完全に壊れた。
毎日死にたいと思うようになった。
どうしたら死ねるかを考えていた。
大好きなお笑いを見ても、前よりも遥かに笑えなくなった。
毎日がしんどかった。
精神科に行ってみたものの「スチューデントアパシー」俗にいう「学生無気力症候群」と言われた。
原因不明だけど勉強に意欲がなくなってしまう現象らしい。
「そんなわけない。」
原因は苦しいほどにわかってる。
医師でも分かってくれないんだなぁと絶望した。
でも、そんな事は言えず薬を貰ってはお金を払うの繰り返しだった。
たった30秒の診断に2000円払い、薬に2000円払い、なんだこれは。
こんなんで4000円も取られるのか?
大した診断も受けてないのに。
たった3ラリーの会話で2000円?
ふざけんじゃないよ。
でも、そんな事口には出せなかった。
「全ては自分のせいだ。」

大学内のカウンセリングに行ったら転学科を薦められた。
正直、辞めるつもりでいたが「辞めるのは無いよな」みたいなムードだった。
家族とも話して一度やってみるかと思い転学科した。
大学4年生の今、その学科にいるが、正直可もなく不可もなくという感じだ。ただ、前の学部よりは全然マシだ。
そのカウンセリングの先生の勧めで病院を変えた。前の病院よりかは遥かに自分の話を聞いてくれて親身になって診断はしてくれている。
ただ、正式な診断は貰ってない。
もういっそのことハッキリとした結果を言ってくれた方が楽なのに。
振り返ってみると色々思う事はある。
奨学金を借りて大学に行っている僕は今大学5年目である。
利子込みで800万円ほどの借金を抱えてこの先を生きる事になる。
明日死ぬかもしれない、生きてる保障なんてどこにもない、そして将来に希望の光なんてない僕からすると、800万の借金を考えるだけでしんどくなる。
現状、お笑い芸人になりたい自分は大学にいる意味なんて無い。
でも、もう4年生。来るところまで来た。
今更辞めるのもなんか癪に障ってしまう。
大学に行く事自体間違えていたのかなと何回も思う。
なんかもう何もかもが嫌でさらにしんどくなってしまった。
「全ては自分のせいだ。」

先ほども書いたように、僕はお笑い芸人になりたい。
吉本の養成所に入るべく、お金を貯めているという現状である。
しかし、これがまぁ貯まっていない。
趣味や食事に使いまくったせいである。
もう過去の自分を殺したい。
あと半年ほどで40万円程貯めないといけない。
色々と後悔する事がある。
もう貯まらない気がしてきた。
「全ては自分のせいだ。」
それがより一層自分を嫌な気分にさせる。
もうバイトも苦しい。
でもバイトをしないとお金を稼げない。
でも苦しい。
この前いよいよバイト先の友人に「帰っていいよ」と言われた。
何やってんだろう自分は。
死にたい。しんどい。死にたい。
そう思ってバイトをする日々だ。
お前は何回バイト中に「死にたい」とか「しんどい」とか思えば気が済むんだ?
「全ては自分のせいだ。」

自分でいうのもアレだが精神状態がそんなに良くない自分を見て周りはありがたい事に心配してくれるし、声をかけてくれる。
「大丈夫?」「いつでも相談乗るから」「大丈夫だから」皆はそう言ってくれる。
でも、なんか響かない。
人に相談しても意味なさそうだななんて思うし。
一瞬プラス思考になるが、結局はマイナス思考が勝る。
結局自分はどこまででもネガティブ人間なのである。
「全ては自分のせいだ。」

明日が来るのが怖い。
このまま何もなく時間が進んでいくのが怖い。
ただ、死なない限り生きていかなければならない。
てか、こんなところで死ねないって思っている自分もいる。
やりたい事いっぱいあるし。
まだ芸人になってないし。
まだ親孝行何もしてないし。
まだ好きな子に「好き」って言えてないし。
こんなところで死ねない。
こんなところで。
でも、なんか自分はもうじき死ぬ気がする。
(そう思いながら生きてもう10年くらい経つが。)
地震の事もあるし、貯金の事もあるし、これからの事を考えるとなんか人生がどんどん嫌になる。
人生に疲れた。
疲れた。しんどい。世知辛い。
なんで日々頑張ってる自分がこんな思いして、ヘラヘラして偉そうでうざったいアイツが幸せそうなの?
「全ては自分のせいだ。」

つい最近、好きなバンドのライブに行ってきた。
メンバーが登場した瞬間、それはそれは鳥肌が立った。
曲に合わせて思い切り手を振った。
素晴らしいライブだった。
でも、どこかで”しんどい”という気持ちがあった。
皆で声出して、歌って、MC中にガヤ入れて笑いが起こる。
ライブの2時間の間、僕が声を出す事は1度もなかった。
声が出せなかった。出すのがしんどかった。
歌えなかった。
めちゃくちゃ楽しかったことに変わりはないし本当に行ってよかったと思えた。
でも、心の底にはアレがいるのである。
こんな状態でライブに行く自分が本当に憎かった。
いつまでこのしんどさと付き合っていかなければいけないんだろう。
「全ては自分のせいだ。」

全ては自分のせいなのである。
何もかも自分が蒔いた種である。
全部自己責任。誰も悪くない。
だから最後は自分でケリつけないと。
バイト中に何度も自分が思った事である。
でも、ケリつく瞬間を考えると怖くなる。
それで今日も生き延びてしまう。
結局自分は何もできない人間である。
昨日の自分は今日の敵。
いつも自分の邪魔をする。
でも、時に一瞬だけ自分にはまだ希望はあるのかもなんて思ってしまう。
3秒だけ。3秒だけ「いける」なんて思ってしまう。
でも4秒目には絶望が待っている。
そして絶望に浸って沈んでいく。

てか、自分芸人になりたいだけなのになんでこんな遠回りしてんの?
明日生きてる保障なんてどこにもないのに何してんの?
最近なんでこんな人生上手くいかんの?
人生ムズ。23年生きてきて一番難しいかも。
高校や大学で学んだ勉強よりも、めちゃくちゃ考えさせられる映画よりも。
最近子供を見るとあの頃に戻りたくなる。
何にも考えずにワイワイして皆と遊んでたあの頃に。
無邪気に生きてたあの頃に。
夏祭りの射的やサメつりではしゃいでいたあの頃に。
あの頃。
もう懐かしんで悔やむ事しかできない。
思い出に浸る心の余裕すらない。
浸ろうとすると絶望が顔を出す。
「全ては自分のせいだ。」

明日もバイトする1日。
どうせしんどくなるのだろう。
できれば接客はしたくない。
でも、バイトがあるからお金が手に入る。
だから頑張らないと。
終わりは来るけど終わりが見えない現状。
いつまでこんなクソみたいな日々が続くんだろう。
いつまでこんなクソみたいな思考が続くんだろう。
いつまで自業自得にまみれた人生が続くんだろう。
でも、考えて考えて悩んで悩んで出た結果はこれだった。
「生きれ。」

結局、命ある限り生きるしかないのである。
自分が出した今のところの結論だ。
「クソが。」
散々言って中身のない3文字。
きっと不快にさせてしまうだろう。
時に絶望の4文字が頭をよぎる。
いや、そっちの方が多く考えてしまう。
でも、生きなきゃ。
1%もない希望が少しずつこちらを手招きしている気がして。

振り返ると恥の多い人生だった。
というか、人生を一言で表すなら「恥」である。
こんなくだらない人生は恥じるべきなのである。
皆本当にすごい。日々頑張ってまっすぐに生きてて。
自分とは大違い。輝いて見える。
自分は黒く淀んでいる。
こっからの大逆転劇は多分ないだろう。
でも、とりあえずやってみようと思う。
塵になったらそれまで。
とりあえずしばらくはこの世界で生きれ。
もし本当に塵になったらその時は笑ってください。

皆が僕に言った。
「やりたい事があるって本当に良い事だよ。」
「お前が羨ましいわ。」
この言葉がほんの少しだけ僕を生き延びさせた。
夢を友人に打ち明けた時、皆が僕に言った。
「ライブ観に行くよ。」
「サイン貰っちゃおうかな。」
この言葉はもっとほんの少しだけ僕を生き延びさせた。
それと同時に恥ずかしくなった。
ラジオで「芸人になります」と言った時に芸人に言われた。
「めっちゃええやん。頑張れよ。」
「いつか一緒の舞台に立とうな。」
この言葉は自分を奮い立たせた。
これらの言葉を無下にする事なんて絶対に出来ない。
口だけの人間になんて絶対なりたくない。
絶対に夢を叶えたい。
そんな自分のほんの少しの奮起が時折自分を支えている。
「自分なら出来る。」
たまに嘘でもそう思っている。
そうしないと本当に終わりそうな気がするから。
現時点で嘘だったとしても応援してくれてる人がいる。
その人たちのためにも、そして自分のためにも。

いつの日か心にぽっかり穴が開いたような感覚で生きていた。
いつの日か楽しかった事が前よりも楽しくなくなった。
いつの日か人と会うのがしんどくなった。
「全ては自分のせいだ。」
でも、芸人になるという夢を叶えたい気持ちはより一層強くなっていく。
これは鼓舞という名の遺書であり、遺書という名の鼓舞である。
もし、この名前から”鼓舞”が消えたらそういう事だと思ってください。
「とりあえず、頑張れ。」

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