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詩「膠着」

復讐心を餌に悪意が膨らんで弾けた

臨界点を迎えたら
流れ出たのは涙だった

怒りの裏に潜むのは
かなしみだった
そんなこと本当は知っていた

黒いヴェールを纏ったかなしみは
自分の輪郭を極限まで薄め
怒りと同化した

何もかもが憎くて
無視は否定だと認知する
増幅される歪みのなかで
また自分の感情を失っていく

羽交締めにされて
麻痺していくのは身体だけではなく

心に温度がない
指先はどこまでも冷たく
がらんどうの瞳は
未来を映さない

いま、から逃走を企てて
どこへ行こうというの

行く宛てもない
道標はとうに砂に埋めてしまった

掻き出す気力もない

こぼれる言葉に
真実が宿っているとも思えず
常に対極に引き裂かれている

自分の信用のならなさに
苦悩しているふりをして
指の隙間から笑っている
醜悪な顔がみえる気がして

求めるだけ無駄なのに
優しさを食い潰すだけの怪物が
夜を疾駆する

懐かしい不安と手を取り合い
指を絡めれば
かなしみが顔をだした

しかしそれもまた
新たな同化がはじまっただけのこと

生き続けるとは
なんと難しいのだろう

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