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詩「水滴」

電線を伝う水滴のなかの景色に
未来を占おうとして
曇った顔しか見えず
軽薄に絶望したくなる朝

色素の薄い美しく冷めた瞳が
赤く潤むのを思い返せば
胸は締めつけられ
不安は次第に漂白される気配

それでもなお鳴り止まない
微弱な騒音が増幅される予感を
うまく否定できず

不具合を成立させる要素を
曖昧に整列させ
行うのは形式的な検査

萎れてゆく気概は
この際、純粋な疲労のせい

綿密な原因の探求が
透明な崩壊を生むだけなら
不問のままでいい

前傾姿勢は喪失の呼び水だと
経験が伝うから小休止が肝要

停泊が最適解だと信じて
再度、電線に視線を投げれば
くだんの水滴は消失し

絶望がいささか遠ざかる

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