10.陰翳礼讃 (谷崎潤一郎)-2018(1933)

今回は、陰翳礼讃という本を読んだので、その要約、批評をしたいと思う。

〈作者について〉
谷崎潤一郎(1886-1965)は、日本の小説家。平凡な生活よりも、芸術のために変化を好んだ生き様を描いた人物。24歳の時に『刺青』を発表。その後、二度の離婚により3人の妻とで会う。代表作は『刺青』のほかに、『痴人の愛』や『卍』などがある。

今回読んだ陰翳礼讃は、大川裕弘氏によるビジュアルブック化されたものである。

〈独自の要約〉
はじめに、では、
谷崎の「陰翳礼讃」とは、極めてシンプルに言えば「なぜ日本人はうすくらがりが好きなのか」を述べた一文である。
と書いてある。

この本では、自然光とそこに現れる蔭の美しさ、日本の失われた美学について述べられているものだと考える。
また、読んでいくとわかるのだが、帯に書いてある「デザイナー、建築家、ミュージシャン、画家、編集者、読書家・・・美大・芸大系の学生、必読の書」というのも読んでいるうちに結びついてくる。

(今回から始めようと思う本の批評は本の全てを説明するものではなく、自分自身でまとめあげたようなものなので、気楽にみていただければ幸いです。)

まずはじめに、現代の設備に頼ったような生活、それによって日本古来の美が失われているということを谷崎は危惧する。
日本独自の和を感じるような優しい光、虫の音すらも聞こえるような静寂さ、赤々と燃える火で暖をとることなど、現在では無駄に明るい電気やストーブなどに頼ってしまい古き良き生活が失われている。
特に、昔の住宅で最も美的な空間は厠であると谷崎は言っている。静寂な壁、清楚な木目、青空や青葉、そこにいくまでの廊下、また、母屋から離れていること。

現代では、費用をかけて清潔さを保っているが、それは趣と対極にあるのでは、西洋のような綺麗さも美しいが、日本ならではの沈んだ翳り、時間の流れによる汚れや垢、朽ちていくことこそ日本の美学ではないのかと谷崎はいう。
また、日本らしさとは、弱さやか細さ、鈍い光、闇や蔭、深さ、静けさ、薄暗がり、不鮮明、はかなさなどではないだろうか。

また、このビジュアルブックを見るとわかるが取り扱われている写真のほとんどは、黒、赤、金、自然の色のみで構成された写真がほとんどである。現代は色に溢れ、煌びやか過ぎている。

美とは陰影の綾のことではないだろうか。

そして、最後に谷崎は、
今の時勢の有難いことは万々承知しているし、今更何と云ったところで、すでに日本が西洋文化の線に沿うて歩み出した以上老人を置き去りにして勇往邁進するより他に仕方がない。しかし、われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。どう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。
と言葉を残している。

(拙い要約を読んでくださりありがとうございます。
伝えたい気持ちはあるのですが、言葉にするのが苦手で読みづらく感じられてしまっていたとしたら申し訳ございません。)

〈批評〉
私は、建築を学ぶものとして読むべきと思いこの本を読んだ。日本らしさ、日本古来から存在する、そして失われつつある蔭の美学について知ることができた。
たしかに、谷崎か言うようなことは理解できる部分もあるが、どこか言い過ぎた表現に感じる部分も多々あった。
例えば、今回要約には入れてないが、後半の方でお歯黒の話や、青い口紅の話などが出てくる。それは顔を引き立たせるためだと谷崎は言うが、実際、お歯黒は口腔の美容と健康のためだと言う情報がある。また、戦争の際に灯を消して生活をしていたからこそ、蔭というものに美を感じたのかとも思ったが、それもなんか違うような気がしてしまう。この本で扱われる写真も、前後の文章と関連性が低いようにも感じ、自分の読み込み能力が足りてないのかもしれないが、谷崎の暗がりに対する思いが強すぎるのではと思った作品だった。
しかしそうは言っても、暗がり、翳りというのは日本独自なものは間違いなく、西洋では光を取り入れることが美であるとするのに対し、日本では不明瞭な雰囲気や、どこか怖さがあるような雰囲気、静けさだったり、暗さだったりが美であると捉えるのは納得がいく。
そう考えると、日本独自の美というものを幽霊のようなもので近寄りがたくされるのは私としては気に食わない。私自身、ホラーが苦手ということもあるが、そういう幽霊のような存在が日本の古き良き美を遠ざけているのも一つ確かなことではないだろうか。
そして、その日本の古き良き美というものを取り戻すために活躍していくべき人は、谷崎の言う通り、デザイナーや建築家、ミュージシャン、画家などアーティスト、アート、表現に携わるような人々ではないかと思う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章でしたが、何か得られるものがあれば幸いです。

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