11.ふれあい空間のデザイン(清水忠男)-1998

〈作者について〉
清水忠男(1942-)は千葉県千葉市出身のグラフィックデザイナー。専門は環境に関わる製品デザイン、室内から都市に至る行動環境のデザイン、ユニバーサルデザインの研究と実践、環境行動心理学。 

〈独自の要約〉
我々は、人付き合いを煩わしいと感じ、個人の枠内へと逃避しているが、本音では、人との触れ合いをもとめている。それは、我々が社会的生物で他者なしでは存在していけないからだ。
現代では減ってきている、人と人のふれあいについて、具体例を用いて話は進んでいく。

1.音
生活の中で一番ストレスを感じているものは音である。
だからこそ、イヤホンをつけ個人の枠内へと逃避していく。

都会の住みやすさと言うのは、他人の干渉が少ないとこにあると筆者は言う。
このように、個人の枠内へと逃避するようになったのは教育にも問題がある。
モラルやマナーに対してだけでなく、間違わないための○×の教育がされていることが原因である。

2.住まい
住まいの事例では、海外を例にしたり、歴史を遡って例にしたりしている。異なる気候風土、文化、住居様式は人々の接し方、意識にも影響を与える。そのような異なる状況においてどのようにデザインしていくか、生活の多様性に柔軟に対応できるデザインが必要なのではないかと筆者は言う。

ふれあいと言うのは、今、一瞬、唯一無二のものであり、人の考え方、行動に大きく影響を与える。
ふれあいが減少している今、ふれあいについて再度目を向けるべきではないか。

最後に、この本で具体例として挙げられたものを箇条書きで記す。
・電車の中
・音
・青いパパイヤの香り 映画
・夜曲 映画
・宮崎勤事件
・食卓(鍋)
・掘り炬燵
・騎楼
・雁木
・キャットストリート
・くさっぱら公園
・IBM本社
・エスプリ社
・横河電機

〈批評〉
私は思いやりのある社会を作りたいと思う。
しかし、思いやりについてはエゴだという意見もあると思うので、詳しくは別のノートに記載させてもらう。

この本で取り上げられたポイントの一つ、音。確かに音は人に対し大きい影響を与える。音はどの場所にいても四方八方から聞こえて来る。視覚は自分でコントロールできるのに対し、聴覚はコントロールが難しい。そのため、本でも取り扱われている通りイヤホンを挿し、個人の枠内へと逃避するのだろう。だが、イヤホンを刺すのはそれだけではないと思う。実際、私はイヤホンを良く利用するのだが、周りの音が煩わしいのではなく、聴きたい音楽を聴くと言う感覚だ。確かに、周りの音の方がイヤホンから流れる音よりも良いと感じたらそのようなことはしないだろう。(事実、気分によってはイヤホンをつけず生活の音を聞くこともある。)しかし、そこには楽しみが少ない。その結果、人々はイヤホンを酷使して、個人の枠内へと逃避する。そして、ふれあいは減る。
これを書いてて思ったが、イヤホンをつけてる際、友人に声をかけられたらどうだろうか。正面であれば気づくことができるが、背後からでは気づかないだろう。これは相手にとって「無視された」と取られてもおかしくない。これこそが、ふれあいの減少であるのではないか。
イヤホンをつけるなとは私は言わない。ただ、聴覚を音楽に依存させている以上、視覚はもっと働かせるべきなのではないか。

そして、二つ目のポイント、住まい。
住まいに対しては、建築を学ぶものとしてとても興味深い。
多様な生活に対応するための、多様な使い方ができるデザイン。多様性のあるデザインが必要ではないか。誰でも利用できるは、誰も利用しないと同じと言う意見もあるが、だとしたら、誰でも利用できるではなく、誰でも楽しんで利用できるものにすればいいのではないか。生活の多様性がコミュニティのきっかけを減らしているのではないか。人との付き合い方を拡張させていった先に、相手に対する思いやりは存在する。そうした中で、より着目すべきは仕切りだとこの本で取り上げられている。仕切り方にはさまざまな方法がある。高さ、かたち、薄さ、素材、、仕切りという細部をデザインすることがふれあいに一番関与するのではないか。

私は、この本を読んで、改めてふれあいについて考えることができた。
特に、音による影響、そして、仕切り方による変化を感じた。
ふれあいは必須的なものではないと感じる人も今では多いが、ふれあいがのちに大きく影響するものではないかと私は思う。
考え方、行動に影響を与えるふれあいについて今一度、考えてみたいと思う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
拙い文章でしたが、何か得られるものがあれば幸いです。

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