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私はこう書いている:バトル描写手順の覚書

 どうもこんにちは。
 文章創作が趣味のアマチュアです。特に実績がある訳でも、バトルに定評のある作品を書けている訳ではありません……ただ、好きで書いているだけです。

 とはいえ、一応の考え方の筋道はありますので、こうしてまとめることにも意味があるかもしれないな、と思いしたためております。
 なにかしら参考になる部分がありましたら幸いです。


はじめに

このtipsは誰向けか

 この記事で想定している読者は「小説の展開的にバトル描写をしたいが、どう書こうか迷っている」という人となります。

 目指すは書きやすく、読みやすいバトルです。作者と読者双方にとっての取っつきやすさを重視しております。
 ですのでバトル描写に強いこだわりがあり、研究を欠かさない人には食い足りない内容になるかもしれません……。

想定ジャンル

 ここで取り上げるバトルシーンの書き方は、アクション描写そのものが主軸の作品よりは、アクション描写を通じてキャラクターを描くことを重視しています。

 この記事で想定している作品ジャンルは、キャラクター描写を重視したもの、いわゆるキャラクター文芸の系譜となります。
 二次創作に関しても、キャラクター描写が主軸になることが多いと思われますので応用が利くと思われます。

記事で扱う物事

 ここの記事で取り扱う考え方は、大まかに「ターン制」と「時間の拡縮」の二種類になります。詳しい説明は次項から始まる各論にて。

1. ターン制とコミュニケーション

最重要にして唯一のルール

 ターン制とは何か? Wikipediaによると以下のような仕組みのことを指すそうです。

ターン(turn)は、ターン制ゲームにおけるゲーム進行の単位である。

ターン制ゲームでは、各プレイヤーに一定の順序でターンが訪れ、ターンプレイヤー(ターンが回ってきたプレイヤー)は、自分の取る手を選択する、サイコロを振る、などの行動をする。

ターンの間は原則として、それ以外のプレイヤー(あるいはゲームマスターやコンピュータ)は一切の行動が出来ないか、ターンプレイヤーの行動に対応した行動しか許されない。

ターン (ゲーム) https://ja.wikipedia.org/?curid=358261 より

 ここで取り扱う「ターン制バトル」の考え方を一言であらわすと、相手のアクションに対して必ずリアクションを取ることとなります。
 これが最重要にして唯一のルールといっても過言ではありません。

 というのも、この記事におけるバトルの主眼とは、キャラクター間のコミュニケーションだからです。コミュニケーションにおいて、相手の働きかけへの反応は重要な要素なので、ここだけは外さないように心掛けます。

 とはいえ、意外と本文を書き進めているとここが抜けてしまいがち。ですのでプロットの段階で意識しておくに越したことはないです。
 設計段階の時点でアクションとリアクションはワンセットで取り扱うのがお勧めです。
 また、棋譜(のようなもの)をあらかじめ作成するのもよきです。詳しくは「3.実践」の項目で解説しております。

リアクションは台詞に限らない

 では、戦闘時に必ず会話をしなければならないのか? という疑問の湧く方もおられるでしょう。これについても考え方次第ですが、例えば生命のやり取りレベルの緊迫した状況で長台詞の応酬をすることに違和感を覚える方もいらっしゃると思います(かく言う筆者もそちら寄りです)。

 ここでのリアクションは、言葉に限らないものとして考えていただければ。例えば非言語的リアクション(汗や震え、あるいは笑顔)、身体的アクション(即座のリカバー、回避行動、カウンター)などもあります。

 もちろん、かっこよく台詞を返しても……いい!
 ここはご自身の感性に従って判断いただければ構わないと思います。

「スカし」の落とし穴

 ここで、ではリアクションを取らない類の行動……「お前如きは歯牙にもかけない」というタイプのムーブについても触れておこうと思います。こういうクールな対応が悪いという訳ではないのですが、取り扱いに注意が必要なものではあるので……。
 なにしろ、クールなタイプの格好良さは描写の塩梅によっては「感じの悪い人」になりやすい! しかして推しキャラがなんか嫌な奴になっちゃったら…悲しい!

 個人的なクールでストイックなキャラクター描写のお手本はジョジョの奇妙な冒険です。というのも、あの作品においてはどんな強くてメンタル強靭なキャラも、新手のスタンド使いの初撃は結構しっかりビックリするんですよね。けれどもそれが格好悪いかというとそうでもない。
 何故なら最終的にはどんなに厄介な相手も真正面からブッ飛ばすからです。

 最終的に快勝すればキャラクターの格は保たれる、というのをあの作品から学びました。途中経過における苦戦描写はむしろスパイスなんですよね。情けなく逃げ回る、まで行かなくても……いえ、それにしたって「逃げ回る振りをしてこんな作戦に繋げていたんだ」という描写に繋がるなら、特段の問題はないことが多いです。

 とはいえ、リアクションの拒否すべてが忌避されるものかというと、そこまでの話ではないかも。個人的な温度感でいえば作中で1度くらいなら許容されるようです。

 ただ、注意が必要なのは「無視」は逆説的にコミュニケーションの積み重ねがあってこそ効いてくる類のアクションです。
 効果的なのは物語の縦軸を貫くタイプのネームドキャラクターや、長編作品の1エピソードで丸々取り扱うタイプの敵などが相手の場合になりそうです。

 その場できちんとリアクションして、その場でキッチリ倒す、以後もこれを基本形として扱います。

2. 時間の拡縮

ターンは伸び縮みする、むしろさせる

 ところで、このターン制バトルの考え方には落とし穴があります。それは文章が単調に……なりやすい! ということです。怖い!

 何故なのでしょう? 考えられる要因には「アクションとリアクションが上手くかみ合わず、いずれかが棒立ちしているタイミングが発生してい待っている」「そもそもリアクションが思い付けない」などがあるでしょうか。
 いずれもキャラクターがうまく動かないに一本化できるでしょうか。

 必要なのは、キャラクターが棒立ちしている(=ノーリアクションになってしまう)タイミングを、見かけ上できるだけなくすことです。文章にメリハリをつけるとも言い換えられますね。

 必要なのは、1ターンあたりの時間設定を適切に管理することです。
 次項からはそうした考え方の補助線について触れていきます。

 合言葉は「時間は伸び縮みする」です。

ターン当たりの適性時間は距離にだいたい正比例する

 戦いにおいて間合いの管理は重要です! しかし一方で、間合いの取り合いといった状況をわかりよく書くのは難易度が高いです。
 ではどうするか? 私は割り切りました……双方にとっての的確な間合いを取る(片方が不利な間合いになってしまうのも含む)くだりは1ターンにまとめてしまいます。

 また中~遠距離での戦いについても同様に、1アクションにかかる時間は相対的に長くなります。が、これへの対応も「近づく」「カウンターする」「攻撃する」といった1アクションで揃えてしまいます。例外的に「喋りながら○○する」といった形でアクションと台詞を並行させることはあります。が、これもあまり多用しないよう心掛けていました。というのも、キャラクター同士の応答に字数が嵩むと、その分だけ読む側には間延びした印象を与えてしまいがちだからです。

 例外は狙撃手同士の心理戦です。これは次節の「ワンインチ距離の攻防」の考え方のほうが上手くハマるようです。どうも狙撃というアクションは距離の概念が消失する方へ働くらしい……。

ワンインチ距離の攻防はコンマ単位の世界

 では逆にほぼ密着しているような距離間での攻防はどうなるでしょうか? ここは動作の解像度を思い切り上げるべき場面となります。

 といっても、動作一つにつきリアクションするという意味では中~遠距離の場合と考え方は同一です。その動作への即応性が高まる分、1ターンあたりに要する時間が物凄く短くなる、という解釈をしていただければ。
 アクション映画などならスローモーションや長回しで撮影しているパートと捉えるとわかりやすいかもしれません。

 また、否応なしに盛り上がる場面なので、このパートが終わる時には決着がつくか、そうでない場合も戦況が大きく動くとベターです。

3. 実践

棋譜のすすめ

 棋譜というと大げさですが、動作をまとめた表です。工程表とか言ったほうが近しいかも。

 何故書くか? 動作の設計段階でメリハリをつけると楽だからです。必須ではないですが、一度試してみるのをお勧めします。

 コツとしては、アクションとリアクションをワンセットにするキャラクター毎に文頭に記号をつけるなどして差別化する、などです。

 一例として、自作の動作計画表を掲載します。また、それを元に書いた作品はこちらです。参考までに……!
(作者注:作例となる作品は数年前に執筆したものです。現在の筆者の倫理観では、あまりやらない際どい表現が一部に含まれています。その辺りをお含みおきいただけますと幸いです。ご不快に思われる方がいらしたら申し訳ありません)

凡例:○山田(ハイドラa~i)、▲分目(煙)、×分目の監視役兼サポート
- 対峙
-- ○対峙(背後に隠して仕込み糸を2つabに取得)
-- ▲対峙、決め台詞(窪地にて既に能力展開)
-- (×山田を狙撃、威嚇のためであり、回避行動を取らせてプールへ落とす狙い)
- 山田が奇襲により転倒
-- ▲(既に展開済みの煙が纏わり付く)
-- ○服装のすり替わりには気付いていない(攻撃の角度から大まかな方向の目星をつける)(窪地に誘い込んでいるという点からそれなり以上の高所であることは確定、スライダーの開始地点が条件に合致)
- 分目の能力発動、山田の仕込み糸が一時的にロスト
-- ▲能力説明、服装には所持品の強制も範疇である事の示唆(なんなら闘いたくないわけである)
-- ○じり、と一歩さがる(説明を受け、取得の間に合った糸を輪にし地面に落としてそれを踏む形でマリオネイトの条件を満たす)
- 山田の高速移動からの奇襲
-- ○a、bそれぞれ手足に糸をかけて分目の背後で滑車化、残りの『手』で一気に引っ張り高速で距離を詰める&掌底
-- ▲不意を突かれてクリーンヒット。能力推理という名のリアクション。
- ワンインチ距離による格闘戦
-- ▲近距離にて糸を視認、行動の答えを得る
-- ○格闘戦のドサクサに髪の毛を一部切り、分目の首に巻き付けてスタンバイ
- 決定打を与えられていないことによる分目の勝利宣言&山田の本命の攻撃が発動
-- ▲打撃の軽さから自分を倒せない事を示唆(遠回しに降伏を勧める)
-- ○聞き入れず、髪の毛によって一気に首を絞める
- 分目の昏倒&山田の装備が復帰、監視役を遠隔攻撃で仕留める
-- ▲落ちたのは一瞬だけ、能力解除からの再発動(効果発揮にはタイムラグが必要)
-- ○復帰した装備からスリングを使用し、ナイロンロープ付きのベアリングを発射して監視役を撃破
-- ×投擲物への警戒を怠ったので普通にクリーンヒットして気絶しました(なお、こいつが初手以降なにも出来なかったのは密着した距離での同士討ちを避けたから&山田が射線に分目が割り込むように立ち回ったから)
- 分目、意地の能力再発動
- 山田、拘束される
- 援軍が近づいている物音(タイムリミットの示唆)
- 山田のフィニッシュブロー
- フィニッシュブローの過程の説明
- 山田の威圧&分目のリアクション
- 分目、気絶

布石の置き方

 前段の棋譜を見ていただけるとわかるのですが、ここでは一対一のバトルでありつつ三人目のキャラクターも登場しています。実際のところは出番はかなり限られているのですが、ここでは行動に矛盾を生じさせないために設計段階で行動を管理していました。

 このように、別動隊などが存在する場合も棋譜に入れ込んでおくのをお勧めします。が、あまりキャラクター性は強めない方が読みやすいかもしれないです。実際にスポットを当てるのはメイン戦闘に介入する場面のみでも十分なことは多いです。その上で唐突な印象がある場合は、会敵時などに軽い物音やモノローグなどで存在をほのめかしておくと、いい感じの伏線として機能してくれます。

とはいえ基本は一対一

 戦闘時に存在する第三者は、良くも悪くもバトルギミックとして扱うほうが管理はしやすいです。これは群衆であったり、サブキャラクターについても当てはまります。スポット的に出番がある、程度でしたらそこまで紙幅を割かなくても機能はしてくれますので……!

 また、大規模戦闘や陰謀劇は専門外なのですが、ガントチャートを使うと便利……らしい! とも聞いたことがあります。参考までに……!

結びにかえて

 以上が、私がバトルシーンを書く時におおよそ考えていることのまとめとなります。
 皆様の創作活動の一助になりましたら幸いです。

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