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炭素の価格付けで気候変動は止められるか?

英エコノミスト2022年3月26日号 "Free exchange: An EPIC challenge"の記事で、最近出版された話題の本が紹介されています。

『スーパーチャージ・ミー:正味ゼロ実現を速める方法』というタイトルのこの本は、まだ日本語版は出ていませんが、二酸化炭素排出削減のためのカーボン・プライシング(炭素の価格付け)というやり方を批判した本です。

この本には、大切なことは価格付けや炭素税導入よりも「EPICS(extreme positive incentives for change)(行動変容のためのきわめてポジティブな動機づけ)」だと書かれているようです。たとえば、

「この本が称賛しているノルウェイでは、電気自動車に対して、道路税を免除し、駐車料金を半額にし、バス専用レーンの走行を許可している。(今では国内で販売されている自動車の90%超が電気自動車だ。)」
"They laud Norway for exempting electric vehicles from road tax, cutting their parking charges in half and giving them access to bus lanes. (More than 90% of cars sold in the country are now electric.) "(英エコノミスト2022年3月26日号 "Free exchange: An EPIC challenge"より。以下引用同じ)

これなら消費者にとってかなりポジティブな動機づけになりますね。ほかにも自宅を省エネ住宅にリフォームする人には割引を適用するなど、政府や中央銀行が積極的にグリーン化プロジェクトに対して税金を免除したり、補助金を出したりするべきだと述べられているそう。

しかしエコノミスト誌はカーボン・プライシングを支持していて、また、ニュートラルでなければならないはずの中央銀行がグリーン企業に資本の配分をするというこの本の提案に疑問を呈しています。

「正味ゼロを政治的に実現しやすくするためにEPICSが必要な場合があることについては(この本の著者の)ロナーガン氏とサワーズ氏が正しいとしても、経済の専門家が長年にわたって議論してきたカーボン・プライシングにはまだ重要なメリットがある。そして世界は少しずつ変わりつつある。2021年には温室効果ガス排出の20%超が炭素の価格付け制度によってカバーされたが、10年前には約5%だったのだ。」
"Even if Mr Lonergan and Ms Sawers are right that some EPICS are needed to make the journey to net zero politically easier, then, economists’ long-standing arguments for carbon pricing still have considerable merit. And the world has been slowly coming round: in 2021 more than 20% of greenhouse-gas emissions were covered by a carbon-pricing scheme, up from about 5% a decade ago. "

経済界は政府に介入されることを嫌いますし、もちろん経済市場は自由であるべきなのですが、自由が行き過ぎて環境破壊が進むという問題もあるように思います。

たとえば、ひんぱんにプライベートジェットに乗って海外へ買い物に行くお金持ちがいたとしましょう。地球環境に悪いからそんなことやめろ!と政府が命令したら独裁政治になってしまうので、石油の値段を上げることによって自発的にやめてもらうのが健全なやり方ということになります。

が、今の気候変動まったなしの状況を考えると、そんな甘っちょろいことでいいのか!? という気もします。だってお金持ちはお金はいくらだってあるんですから、石油が高くてもやっぱり買い物には行っちゃうでしょうしね。

いやはや難しい問題ですね。皆さんはどう考えるでしょうか。

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