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航空身体検査の解説書

初めまして。

平成最後の年末なので、エアラインパイロットを目指しているみんなが一番気になっているであろう航空身体検査の突破法について紹介します。

以前ブログでも軽く取り上げましたが、今回は

◇身体検査はどんな雰囲気か

◇航空身体検査で実際にどんな検査を行うのか

◇実際に僕が行っていた対策

について徹底的に解説したいと思います。


〜はじめに〜

日本の航空業界は教材や情報がやたら高いです。
パイロットを目指す若者向けに数万円もするセミナーを開く業者がありますが、少なくとも航空身体検査に関してはこの記事を読んで対策を行えば問題ない、と言えるくらい情報を充実させたつもりです。

パイロットという仕事は、「先輩から受けた恩を後輩へ返す」という文化があります。(もちろん先輩にも恩返ししますよ!笑)
だからこそ僕は将来後輩となる皆さんからお金を巻き上げるつもりもないですし、無料だから適当に書いたわけでもありません。
航空身体検査マニュアルと僕の実体験を交え、できるだけわかりやすく解説したつもりです。

見返りを求めるわけでもないですが、もしこの情報が有益だなと感じたらSNSでシェアしたり、周りのパイロットを目指す仲間に教えてあげてください。
また、知りたいことやわかりづらい点があれば気軽に連絡ください。


〜入社・入学試験における航空身体検査〜

自社養成にしろ、航空大学にしろ、航空身体検査は「○次試験」と称されています。
つまり、「検査」とは言いながら「試験」なのです。

実は航空身体検査は基準をクリアするだけならそこまで大変ではありません

入社・入学試験における航空身体検査が厳しいとされる理由は、今後何十年間も航空身体検査基準をクリアし続けられる人材かを判断するために、実際の基準より高いレベルで試験合否が判断されるといいます。
また、自社養成や航空大学の入社・入学試験では何段階か試験がありますよね?
各段階の試験には足切りラインがあることはもちろん、大勢の希望者から最終合格者数へ絞り込むために総合的に高得点の人から合格させていきます。

つまり、航空会社の自社養成や航空大学など、狭き門へチャレンジする上では航空身体検査基準に適合するだけでなく、他の試験とも合わせ総合的に点数を伸ばす必要があると言うことです。

正直、身体検査で「加点」を狙うのは難しいです。
そのため身体検査に関する試験で狙うべきは「減点されないこと」

航空身体検査ってどんなものなのかわからない方がほとんど多いと思います。
僕も初めて自社養成の航空身体検査(試験)を受けた時は不安でいっぱいでした。
しかし、終わってしまえば「意外とこんなものか」という感じです。

それでは、実際にどんな検査が行われているのか紹介していきます。

【注意事項】
※ この情報はあくまで僕が受験した当時の環境であるため、実際にみなさんが受験される内容とは異なる可能性もあります。
※また、周りにパイロットを目指す友人知人がいたらぜひ情報をシェアしてあげてください。

今後のパイロット人生でも情報を共有するのはとても大事なことです。
もしかしたら他にも異なる内容を紹介している人がいるかもしれません。

1. 航空身体検査の流れ (前日〜集合〜検査)

<前日>

身体検査前までに必要な書類を会社や大学から渡されると思うので、記入を済ませておきましょう。どうしても記入に迷ったり分からない部分は担当者に確認してみるといいですね。

身体検査前日は、血液検査のために前日の夜9時以降は何も口にしてはいけません(水・お茶はOK)。

<当日>
これに関しては場所にもよるし、年度によって変わるかもしれません。

身体検査当日は指定された時間にクリニックへ向かいます。

場所は一般のクリニックで、一般の人間ドックできている人もいれば航空身体検査証明の更新にきている現役パイロットもいました。

受付で名前、航空身体検査を受けに来た旨を伝えると着替えるよう指示されます。僕が受験した時は特に受験者同士で集められるわけでもなく、個人で看護師さんに指示される通り各検査をこなしていくという感じでした。

着替え時に番号札を渡されており、着替えが終わるとこの番号で呼ばれ、採尿するよう伝えられます。しかし、尿意がない場合は正直に申告すれば後で行うことになります。

この時に「□□の検査をするので××番の〇〇科に行ってください」と指示されます。
何科かわかりやすいように各検査を行う部屋の前には番号を貼った看板が出ています。

また、効率よく検査するために下記検査項目は順番通りに行われるわけではありません。
最初に血液検査をやる人もいれば、目の検査に行く人もいます。

一番時間がかかるのは脳波の検査で40〜60分くらいかかりましたかね?
トータルで3, 4時間、朝集合で昼前後には身体検査が終わっていた気がします。


2. 各検査項目ではどんなことをするのか


みなさんが一番気になっているのはここではないでしょうか?

それでは、航空身体検査マニュアルに従って紹介していきます。

(上記リンク先はPDFファイルです)

最新版はこちらから確認して見てください。

時間がある方は全部読んでみてください。
ただ、読んでもわからないことが多いと思うので、この記事で網羅したいと思います。
何か質問があれば気軽にコメントやtwitterで質問くださいね!
また、間違っている部分やこんな情報を追記してほしいなど、ご意見ご要望も忌憚なくお寄せください!

【航空身体検査で行う検査項目】
 ①一般
 ②呼吸器系
 ③循環器系及び脈管系
 ④消化器系(口腔及び歯牙を除く)
 ⑤血液及び造血器系
 ⑥腎臓、泌尿器系及び生殖器系
 ⑦運動器系
 ⑧精神及び神経系
 ⑨眼
 ⑩視機能
 ⑪耳鼻咽喉
 ⑫聴力
 ⑬口腔及び歯牙
 ⑭総合

それでは各項目について順番に見ていきましょう。


①一般


この項で触れられている中で注意は、

A. 肥満
B. 感染症
C. アレルギー

くらいですかね?

A. 肥満

肥満については下記の通り記載があります。

1.身体検査基準航空業務に支障を来すおそれのある過度の肥満がないこと。

2.不適合状態航空業務に支障を来すおそれのある過度の肥満

3.検査方法及び検査上の注意

4.評価上の注意肥満は、動脈硬化及び心血管系疾患の重要な危険因子の一つであり、体容量指数(B MI)30を超える高度の肥満の場合には、心血管系疾患に関する他の危険因子の有無について検討し、乗務中の急性機能喪失の危険性を勘案して判定すること。また操縦操作等に支障がないことも評価すること。なお、BMIの算出は、次の式による。BMI=体重(kg)/身長(m)2

パイロットでいる限り、航空身体検査は一年または半年に一回クリアし続けなければならないものです。
そのため体型、体重には気を使いましょう。

B.感染症

感染症については下記の通り記載があります。
1.身体検査基準

重大な感染症又はその疑いがないこと。

2.不適合状態

2-1 後天性免疫不全症候群(AIDS)

2-2 治療中のヒト免疫不全症ウイルス(HIV)感染症
2-3 活動性のある結核

2-4 その他航空業務に支障を来すおそれのある感染症

最近、性病などの感染症が若年層の中で増えて来ているという情報もあります。
相手を気遣うのはもちろん、自分の身を守るためにもしっかり避妊具は使用しましょう。

C. アレルギー

アレルギーについては気になる人も多いんじゃないかと思いますが、すみません。基準がよくわかりません。

ただ、花粉症のパイロットもいますし、ハウスダストに弱いパイロットもいます。
軽度なら問題ないと思いますが、不安な方は近くの医者に相談してみてください。
小耳に挟んだ程度ですが、アレルギーについては血液検査の”IgE”の値を見ているのでは?という情報があります。

IgEはアレルギーの原因物質に触れることが多くなると、そこからIgE抗体を作りやすくなり、アレルギー性の原因に変化することも多くなる

らしく、僕も身体検査前はマスクをつけて生活していました。
今では全然マスクつけることはないですけどね。
不確かな情報を載せるのは気が引けたのですが、あくまで「僕はこうやった」という報告まで。
しっかり対策したい方は先ほども言った通り、お医者さんに相談して見てください。
なお、航空身体検査マニュアルには下記のように記載があります。

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのあるアレルギー性疾患がないこと。
2.不適合状態

2-1 高度の鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎

2-2 アレルギー性結膜炎又はアレルギー性眼瞼炎

2-3 アレルギー性皮膚疾患
3.検査方法及び検査上の注意

3-1 気管支喘息については、2.呼吸器系2-1呼吸器疾患を参照のこと。

3-2 病歴及び問診等により2.不適合状態が疑われる場合には、慎重に検討を行い、

必要に応じて耳鼻咽喉科医、眼科医又は皮膚科医の診断により確認すること。
4.評価上の注意

4-1 上記2.の不適合状態については、掻痒、流涙又は鼻汁等の症状が軽微であり、 航空業務に支障を来すおそれのない場合は、適合とする。

4-2 アレルギー性の諸症状が外用薬(点鼻、点眼及びステロイド含有の外用薬を含む。免疫抑制薬はタクロリムス水和剤に限る。)、内服薬(フェキソフェナジン、 ロラタジン、デスロラタジン及びビラスチンに限る。)又は減感作療法(舌下免 疫療法を含む。)により抑制されている場合は、適合とする。なお、舌下免疫療 法を行う場合は、副作用の有無、治療状況を確認すること。 ただし、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン及びビラスチン以外 の第二世代の抗ヒスタミン薬を服用する場合は、眠気・集中力低下等の副作用が ないことを指定医又は乗員健康管理医が確認した場合は、適合とする。ただし、 少なくとも通常投与間隔の2倍の時間は航空業務を行ってはならない。


②呼吸器系


これは
・胸部エックス線検査
・呼吸機能検査

に大別されます。
僕の場合、X線検査と機能検査は別の部屋で行いました。
また連続でやるわけでもなく、間に他の検査が入りました。

X線検査はただ撮影されるだけなので説明を省きます。

呼吸機能検査について、航空身体検査マニュアルには下記のように記載があります。

4-1 呼吸機能検査の結果、次の(1)又は(2)の場合は不適合とする。
(1)%肺活量が80%以下のもの
(2)1秒率(FEV1.0%)が70%以下のもの

呼吸機能検査で何をやるかというと、この2種類をチェックしているんですね。

(1)については多くの方は特段心配する必要はないと思います。
こちらのリンクから詳細は確認できますが、
身長と年齢から予測される肺活量に対し、80%以上肺活量が確認できればOK
http://handa-center.jp/medical/checkuplist/pdf/lung.pdf

(2)については下記のYoutubeのリンクがわかりやすいです。
胸いっぱいに息を吸い込み、一気に吐き出した空気の量のうち、1秒間で吐き出せる率を確認します。

タバコ吸ってる人はこの数値が下がってくるようなので、喫煙者は検査前からタバコを控えた方がベターです。


③循環器系及び脈管系


これは
血圧検査心電図検査を行います。
血圧に関しては、町のお医者さんや学校など、身の回りに検査機があると思います。一度くらい測定して見て自分の傾向を知ってください。

また、血圧に関しては低ければいいというものではありません。

身体検査マニュアルでは適合状態として
収縮期血圧160mm Hg 未満、拡張期血圧が95mm Hg 未満であり、かつ、自覚症状を伴う起立性低血圧 (いわゆる立ちくらみ)がないこと。

不適合状態として、下記が挙げられています。
 1. 高血圧

 2. 自覚症状を伴う起立性低血圧

そのため、血圧検査は座ったまま行うものと起立性低血圧(いわゆる立ちくらみ)を検査するためにしばらくベッドに横になった後に起立した状態で測定するものの2種類検査があります。


④消化器系(口腔及び歯牙を除く)
⑤血液及び造血器系


これらは特に手術や既往歴がなければ血液検査で判定されます。
暴飲暴食や病気をすると肝臓の値で引っかかる人もいます。
⇨現役パイロットでお酒好きな人は肝臓の値で再検査とか注意される人もいます。
また最近はアルコールに起因しない脂肪肝もあるようで注意が必要ですね。


⑥腎臓、泌尿器系及び生殖器系


これも特に手術や既往歴がなければ問題ないでしょう。
試験前日にオ○ニーすると尿検査の結果タンパクで引っかかる恐れがあるので気をつけましょう(笑)
また、性病がある場合も尿検査でわかるようです。


⑦運動器系
⑧精神及び神経系


これも特に手術や既往歴がなければ問題ないでしょう。
運動器系は特に何かやった記憶もありません。
精神は精神科との面談です。正直に話せば問題ありません。


⑨眼
⑩視機能

これがなかなか検査項目の多い部分です。

ちょっと長くなったのでこの辺でコラムをば、

〜何故、視機能は重要?〜


パイロットにとって目はとても重要です。
目は
・コックピット内の計器
・他の航空機(トラフィックと言います)
・障害物
・雲
・地形(空港や山、VREP Point)
などいろいろな情報を認識しています。

また、色覚異常が身体検査不適合なのは、緑と赤は航空の世界で生きるものにとって非常に重要だからです。
この2枚の写真を見て、どういう状況かパッとわかりますか?

実はこれ、他の飛行機と正面衝突しそうになっているものと、他の飛行機の後ろについて飛んでいるもの、この2種類の状況を表した画像なんです。

他にも航空の世界ではPAPIと呼ばれる進入角を示すライトがあります。

(出典:https://aviation.stackexchange.com)

これは色によって「パイロットが適正な角度で着陸しようとしているか」を教えてくれる装置です。
このように、色を見分ける力はパイロットが安全を担保する上でも非常に重要な能力なんです。


閑話休題。


⑨眼
⑩視機能 の検査項目に話を戻しましょう。

よく聞かれる質問ですが、コンタクトレンズやメガネを使用しているパイロットは非常に多いです。
なので、目が悪いパイロット志望者の皆さん、安心してね。
僕は幸い目が良いので屈折率とかは詳しくありません。
気になる人は航空身体検査マニュアルを読んで見てください。

眼に関する検査としては


・眼圧


くらいですかね?

検査が多いのは視機能についてです。


1.遠見視力 (眼から検査表まで5m)
2.中距離視力 (眼から検査表まで80cm)
3.近見視力 (眼から検査表まで30cm から50cm)
4.両眼視機能 (斜視)
5.視野
6.眼球運動
7.色覚

ここについては詳しく紹介していきましょう。
まずは


1.遠見視力 (眼から検査表まで5m)


について。
これはよく見るこんな図を使って行う、学校でもよくやる一般的な視力検査です。

2.中距離視力 (眼から検査表まで80cm)
3.近見視力 (眼から検査表まで30cm から50cm)


この二つはなかなか経験したことがない人もいるのではないでしょうか?

(出典:http://www.tmi-st.com/cran.html)


こんな検査票を持った検査医さんが、自分の目から中距離、近距離で
「これ見えますか?」と聞いてくるので答えるだけです。

4.両眼視機能 (斜視・深視力検査)


航空身体検査マニュアルによるとこれは「交代遮蔽検査法」なるものにより行うようです。
検査医さんが片方の目を隠したり色々してくるので、されるがままです。笑
斜視かな?と不安な人は近くの眼科医で検査してみてください。
航空身体検査マニュアルに斜視の許容範囲なども詳しく書いてあります。
この基準も踏まえて相談して見るといいかもしれません。

眼鏡屋さんのHP記事ですが、気になる人はこちらも参考にどうぞ。

深視力検査についてはこの動画がとてもわかりやすいです。


5.視野

(出典:https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-73924-3.pdf)

ゴールドマン視野計という機器を使います。
動画で見た方がわかりやすいと思うので、こちらのリンク内の動画1分45秒あたりから見てみてください。こんな検査を行います。



ドーム(半球)状の機器の壁面に小さな光の点が出ます。視線は中心の点に合わせたまま、視野に先述した光の点が出たら手元のスイッチを押します。
リズミカルに光が出てきますが、たまに間隔があくことがあります。
これは機器の準備時間や、人間に誰にでもある「マリオット盲点」という場所が光っているだけかもしれませんので心配は無用です。
ちゃんと見えた時にスイッチを押しましょう。

片目ずつ、所要時間はそれぞれ2,3分ずつ程度です。

航空身体検査マニュアルには
検査は、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)又は周辺視野を確認すること ができる静的量的視野計により行うこと。」と記載があります。
そのため「ゴールドマン視野計」でGoogle検索するともっと情報が出てきますよ。
※マリオット盲点について気になる人はこちらのリンクを参照。

これにより何がわかるかというと、
 ・緑内障
 ・視神経疾患
 ・頭蓋内疾患
 ・心因性疾患
 ・網膜疾患などの病態診断
と言われています。


6.眼球運動


お医者さんがペンを目の前で上下左右に動かすのでそれを目で追います。
何度かやった方もいるのではないでしょうか?


7.色覚


Googleで「色覚検査」と検索するとこんなのが出てきます。
まさにこれらを使って検査します。
全ての絵に数字が隠れているわけでなく、何も見つからない「引っ掛け」的な絵もあるので注意です。


⑪耳鼻咽喉


項目は多いですが、心配する人が多いのはこれらの項目でしょう。


・平衡機能
・鼻中隔


・平衡機能


これは何種類か検査方法があります。
これを読んだらやって見てください。最初はなかなか難しいです。
僕もたまにやるとフラフラしたりしますが、しっかり家で練習すればある程度鍛えることができます。
どんなことをやるのか知っておくだけでも気持ち的に楽ですが、さらに練習できれば自信を持って臨めますよね!

それでは航空身体検査マニュアルの付録

1-2 平衡機能検査 を見てみましょう。

歩行検査は書いてある通り、まっすぐ歩きます。
伝わりにくいかもしれませんがスッスッと歩いていくのがコツです。

次に足踏検査です。
この図がわかりやすいですね。

(出典:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2031)

目を閉じて50回足踏みした結果、どれくらいズレたかを測定します。
もちろんズレない方が良いですが、絶対にズレます。
めげずに何度も練習してみてください!

【参考資料】
こんな動画もありますよ!この動画では手を振っていますが、イメージはこんな感じです。客観的に自分の癖を知るために動画を撮影して見るのも良いかもしれませんね!

次に起立検査ですが、


①両脚直立検査
②マンテスト 

の2種類があります。

両脚直立検査はこのように行います。

(出典:http://www.ogata-shunsaku.com/~kafun/memai/memai_3.html)

機械により重心位置のデータが記録されます。
最初目を開けた状態で一点を見つめただ立っていると、そのうち「目を閉じてください」と言われます。
目を閉じても先ほど見ていた一点をまぶたの裏でイメージしてとにかくぶれないように起立するのがコツでしょうか。


マンテストは足をこのように一直線に並べ、上半身は直立の姿勢をとります。

(出典:https://wakaba.hamazo.tv/e7931948.html)

これがなかなか難しいです。
手は広げてもOKです。著明な動揺または転倒はアウトなので、無理して気をつけ!の体勢を維持して転ぶよりはちょこちょこ手を使ってバランスとって構わないと思います。

①両脚直立検査
②マンテスト 
についてはこのサイトでテストの動画が掲載されていたのでよかったら見てみてください。


遮眼書字検査
これはやった記憶がないのですが、、、
こんな感じのようです。

(出典:https://www.hotweb.or.jp/shirato/ototest.html)

大きなズレがなければOKです。
これも家で練習すれば上手になりそうですね。

・鼻中隔


身体検査基準としては
鼻腔の通気を著しく妨げる鼻中隔の彎曲がないこと
とあります。
耳鼻科の先生が鼻の中を見てチェックしているのかな?
特に頭部をレントゲン撮影などはありませんでした。
噂では「ちょっと曲がっているだけで不合格になった」という人もいたりして、僕の同期でも事前に自費で手術した人もいました。
ちなみに僕は何もしてません。小学校の頃に鼻の骨を折ったことがあるのですが特段問題もありませんでした。
個人的には手術までしなくていいかな、と思います。
多くの人が多少なりとも湾曲はあるようですし、面接など他で加点したり、身体検査で大きな減点をしないようにすれば問題ないと考えています。

⑫聴力


[第1種]
暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、各耳について500、1,000及び2,000Hz の各周波数において35dB を超える聴力低下並びに3,000Hz の周波数 において50dB を超える聴力低下がないこと。

とされています。
あまり聴力で引っかかったという人は聞かないですし、60歳を超えるパイロットもクリアしているので特に心配する必要はないでしょう。

⑬口腔及び歯牙


虫歯はあっても問題ないみたいですね。同期で虫歯があっても合格した人がいます。
航空身体検査マニュアルにも、
未治療のう歯(虫歯)、歯根のう胞、根尖膿瘍及び歯髄炎等は航空業務(気圧の変化)により新たな歯痛を発生させることがあるため、すみやかに治療を受けさせること
と記載があるため、実際に飛行するまでに虫歯を治療しておけば問題ないようですね。

⑭総合


航空身体検査マニュアルでは
航空業務に支障を来すおそれのある心身の欠陥がないこと。
とだけ記載があります。
お役人が好きな「総合的に判断して」というところでしょう。

自社養成や航大の試験ではこれらに加え独自に心理検査(クレペリン・ロールシャッハ・MMPIなど)を行なっていることが多いです。



3.航空身体検査を突破するための生活


僕は先ほど紹介した平衡機能のトレーニングに加え、

・規則正しい生活
  (決まった時間に起床・就寝・食事)
・3食栄養バランスよく摂取する
・肉は鶏むね。主にタンパク質は魚や豆などから摂取。
・常時マスク着用
・睡眠時間は7〜8時間確保
・油物・スナック類は控える
・一日2L水を飲む
・禁酒禁煙
・スマホやテレビ、PCのスクリーンを見る時間を抑える
・最低でも週3回は30分以上の有酸素運動(ジョギング、水泳)
・黒酢ドリンク(気休め程度)

これを2ヶ月前から続けていました。

<一週間前>
・高強度のトレーニングをしない。
※筋肉のダメージがあると血液検査や尿検査で異常値が出ることがあるようです。
僕は体が温まる程度のジョギングに抑えていました。

<前日>
・食事は油物一切抜き。毎回、前日の夜は山菜そばを食べています。
 

かなり長文となりましたがいかがでしたでしょうか?


本noteの冒頭でも述べましたが、日本の航空業界は教材や情報がやたら高いです。
パイロットを目指す若者向けに数万円もするセミナーを開く業者がありますが、少なくとも航空身体検査に関してはこの記事を読んで対策を行えば問題ない、と言えるくらい情報を充実させたつもりです。
※あくまで需給がマッチした結果の価格設定だと思いますので業者批判ではないですよ!

パイロットという仕事は、「先輩から受けた恩を後輩へ返す」という文化があります。(もちろん先輩にも恩返ししますよ!笑)
だからこそ僕は将来後輩となる皆さんからお金を巻き上げるつもりもないですし、無料だから適当に書いたわけでもありません。
航空身体検査マニュアルと僕の実体験を交え、できるだけわかりやすく解説したつもりです。

見返りを求めるわけでもないですが、もしこの情報が有益だなと感じたらSNSでシェアしたり、周りのパイロットを目指す仲間に教えてあげてください。
また、知りたいことやわかりにくい点があれば気軽に連絡ください。
反応をいただけるとより情報は洗練されていきます。みんなでこの情報を育てていきましょう!


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