三題噺⑩

練習をしてみる。多分やり方間違ってるよって話もある。つづけることが多分大事なので,やってみる。

※ ライトレというアプリを使ってお題を決めています。

お題:ドーピング 顔 呪い


呪いが始まったのは2か月前。3週間前から学校にも行けなくなった。

この呪いをかけた人間を私がいじめ始めたのは半年前。靴隠しに教科書破り,陰口,仲間外れ,ありそうなところは全部やった。

我ながらよくあんなに酷いことをやったものだと思う。反省しているし,もうやらないし,きちんと謝りたい。

でもそれも難しそうだ。なぜならその呪いをかけた主は死んでしまったから。

彼女が死んで始まったのがこの呪い。初めは記憶喪失かと思った。でも母さんや友人の話を聞いているとどうも違う。全くの別人格になってしまっていて,人格が変わるどころか,顔や髪色まで変わってしまっているらしい。

気味悪がった親はすぐに私を精神病院に入院させ,私も素直に入院して病院暮らしだ。まさかこんなことになるなんて。

でも入院を始めて気づいたことがある。それは入れ替わっている間に出てくる人格は,あのいじめていた彼女のようなのだ。

母さんに入れ替わっている間の私を写真に撮ってもらったが,間違いなくそうだった。しかしこんなに完全に顔まで変わってしまうなんて…

それが発覚した日から私は一縷の望みをかけて,彼女と交換日記を始めてみた。

初めのうちは全く返事をしなかった彼女だが,しばらく話していると,段々と返事をするようになった。そしていつの間にか,友達のように会話をするまでになっていた。

私は彼女に「一緒に生きて行こう」と持ち掛けた。正直孤独な私にとって,彼女の存在は呪いであり,祝福だと思った。

その晩彼女が夢に出てきた。夢の中で私は彼女に自分の人生と,いじめた理由を話して詫びた。彼女は苦々しい顔をしていたが,私をゆるす言った。

彼女は逆に呪いのシステムの説明をした。呪いは頭ごとすり替えるシステムになっていて,身体は変わらない,そしてお互いの合意次第でもう一方の頭になっている間も意識を保つこともできるという事だった。

私は,彼女は私の貧しい人生における,ドーピングのような存在だと思った。

その日から私の生活は変わった。

頭ごと変わってしまうから眠らなくていいことを利用して,テスト前には科目を分担して勉強した。精神は繋がっているから,記憶も同期されるようで,お互いにきちんとやるよう監視した。

そうしていい大学に入り,いい会社に入り,いい人と結婚して,いい家庭を築き…,家族に見守られながら私は幸せに死んだ。


三途の川で顔を突き合わせた彼女は,一緒に生きられてよかったと嬉しそうに言った。こんなに効率の良い罪滅ぼしがあるなんて,果報者だと思った。私の人生における呪いとは,運命だったのだとその時思った。


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