三題噺⑬

練習をしてみる。多分やり方間違ってるよって話もある。つづけることが多分大事なので,やってみる。

※ ライトレというアプリを使ってお題を決めています。

お題:西 料理 踊り狂う


テーブルの上に並ぶ花々は白いクロスの上で自分の色を主張している。その脇で色とりどりのドレスを着た人間たちが談笑している。

僕が働くこの町はずれの教会様の建物では,一風変わったパーティを開催している。正確に言うとこのもともと協会だった建物の持ち主が,変わったパーティを開きたい主催者にこの場所を貸しているのだ。

いったいどこでパーティの主催者を募っているのか見当もつかないが,少なくとも毎週末には何かしらのパーティが開催されている。

先々週はウサギ肉を食べるパーティ,先週は自分の一番好きな参考書について語り合うパーティだった。先週に関しては最早パーティというよりも勉強会に似た雰囲気があった。

今週は置かようだった。け西洋料理の皿を並べ,全て食べきり,食べきったら踊るというパーティだった。

端から見る分には美しいが,テーブルに置かれた花の量は花束3つ分くらいはあり,参加者は20人もいない。裏のキッチンに用意された料理だって30人分以上絶対にある。

主催者は「足りなくなりそうだったら出前でもなんでもいいので,調達してください」と言っていたが,余った場合の話は1つもしなかった。

僕は主催者の言いつけ通りに,全員が花を置き終わったことを主催者が確認するのを聞いて,キッチンへ向かった。キッチンでは僕の雇い主であるオーナーが良く磨かれた白い皿に盛られたローストビーフやピザ,ハンバーグにオムライスを手渡す。皆腹にたまりそうなものばかりだ。

僕は皿をテーブルに運び,色とりどりの衣装を身にまとった男女の隙間を縫って花と料理を交換していく。女性だけじゃな男性もドレスを着ているが,その理由は分からない。

料理が置かれるや否や人間達は料理を食べ始める。皆無言でがっつくものだから光景はより異様さを増した。

皿は瞬く間に空になるから,僕は忙しなく皿を運ぶことになった。10分もしないうちにテーブルの花は半分ほどに減った。キッチンにあった皿の山も1/3まで減った。

オーナーはすべての料理を皿に乗せ終えると,電話をし始めた。新たに注文をしているようだった。その後は1時間は大忙しで,料理が届いてからは盛り付け作業もしなければならず久しぶりに息が上がった。

テーブルの上の最後の花と皿をかえてキッチンへ戻ると,オーナーがいつもの椅子に座って煙草をふかしていた。そして僕を見ると「しばらくこっちで座っておいていいよ」と言った。

僕はお言葉に甘えて適当なパイプ椅子に腰かけて,ブラウン管のテレビに映る会場の様子を眺める。僕が最後に持って行った皿ももう空になりかけていた。

主催者が何か話しているのを尻目に,オーナーにこのパーティーの目的を尋ねてみた。オーナーは「弔いだよ」とだけ答えた。

しばらく主催者はブラウン管の向こうで何か話していたが,おもむろに話すのをやめると持っていたマイクを置いて,ウネウネとよく分からない動きを始めた。それに合わせて参加者たちもウネウネと動き出す。

音楽もない,規則性も感じない。しかし踊り狂っているのだという事は分かった。僕は呆然と眺めていた。

オーナーは「そろそろだな」と言い,キッチンと会場をつなぐ扉をしめて施錠した。何がですかと聞く前に答えは分かった。会場にいた人々は人の形をしていなかった。ある物は黒い霧のように,ある人はタコのように,ある人は何かの動物のように,形を変えてウネウネと踊っていた。

しばらくその状態は続いたが,パンという大きな音がして気づくとすべては元通りになっていた。

主催者が締めの言葉を短く述べると,参加者たちは拍手をし,1人1人荷物を持って帰っていった。

今のは何ですかとオーナーに尋ねると「未来の自分のための弔いだよ」とだけ答え,振り返りにやつきながら「お前も来年は参加するか」と言った。僕は僕は種類が違いますとだけ答えた。

その後3時間ほど皿を洗いながら,オーナーは「皿洗いパーティだな」と笑い「従業員を増やすか」と恐ろしいことを口走り,この人こそ悪魔だなと思ったのであった。

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