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基礎のキのオヤ結びの話。

メルハバ。こんにちは。イーネオヤの編み手、pilaringです。
今回のお話は「基礎のキのオヤ結び」です。
イーネオヤの最小単位「糸」のお話は読んでいただけたでしょうか?
最小単位「糸」という意識を持って、今回のお話を読んでいただけたら、よりいっそう理解しやすいかと思います。

■ 基本ではなく基礎

オヤ結びはイーネオヤを編むのに行うたったひとつの結び方です。
何回巻きにするのか、運針が右から左なのか、左から右なのか、渡り糸はあるのかないのか。
その時編むものによって状況は違えど
針の上に糸を置き、巻きつけ、針を抜き取り、結ぶ。
その動作は変わりなく、ひとつだけです。
イーネオヤを美しく編むためには、このたったひとつのオヤ結びというものを正しく行うことが基礎となるオヤ結びになります。

建築物はまずは基礎となる部分をしっかりと作らなければなりません。
基礎がグラグラだと上に建つ柱や壁、床などが傾き、下手をしたら崩れてしまいます。
オヤも基礎となるオヤ結びをまずはしっかり正しく結べるようにならなければ、いくら頑張って目が揃うように手加減をしたところでガタガタになってしまうし
そのうちオヤ結び自体がグズグズで、一度編んだはずのものが崩壊してしまいます。
なので、正しいオヤ結びを基礎として、美しいイーネオヤを編むための目を積みあげていかなければなりません。
私はそんな美しいイーネオヤを編めるオヤ結びを「基礎のキのオヤ結び」と勝手に名付けています。
では、「基礎のキのオヤ結び」とはどんな結び方でしょうか?

オヤ結びは、きっちり、しっかりと。
これが私が思う「基礎のキのオヤ結び」です。

■ オヤ結びのつくり

オヤ結びがどんなつくりで、どういう動きの元に固く結ばれていくかじっくり観察したことはありますか?
どのような目を編む時でも、オヤ結びの構造は単純です。

芯となり、次のオヤ結びへと続き目を構成する糸。
その周りに8の字やらせん状に巻きつき、結び目を構成する糸。

これは最小単位「糸」の中でもお話ししました。
基礎のキのオヤ結びでは、この構造はどうあるべきか。

・芯となる糸は、結び目の中では常に真っ直ぐであること
・結び目を構成する糸は、重なりなく芯の糸に一寸の隙間もなく巻きつくように引き締められていること。

この2点です。

あなたが編んだイーネオヤは、花びらや葉っぱを何枚編んでも
渡り糸が等高線のように揃っていますか?
1段編み終わって次の段へと進んだ時
結び目を引き締めた瞬間に下の段の目の糸がズルッと出てきていませんか?
化繊の糸で編み終わって何日か置いておくと解けてきてしまうから
ライター処理をして無理やり留めておくようにしていませんか?

ひとつでも心当たりがあったなら
それは「基礎のキのオヤ結び」ができていないのです。

■ 「基礎のキのオヤ結び」の結び方 その1

では、実際に基礎のキのオヤ結びを目指して、練習していきましょう。
先ずは自分の結び目を観察しましょう。
観察ポイントは2ヶ所です。

イーネオヤを編む道具一式をご用意ください。
いつもオヤを編む時に使う針
練習用の編み付ける布
糸は出来れば中細と呼ばれる台形型ボビンのポリエステル糸が良いでしょう。

布にオヤ結びをしていきます。
基礎のキのオヤ結びを身に付けるには、2回巻きのオヤ結びの方か良いです。
基本の5目の山はまだ編まなくて大丈夫です。
縁かがりをするように、布に編み続けます。

オヤ結びをしていきましょう。
針の上に糸を置き、針穴から出ている側の糸を2回巻きつけます。
針を抜き、芯となる糸を引き出しながら、
螺旋状に巻きついた結び目となる糸を布側へと降ろしていきます。
螺旋状に巻きついた糸が布側へ着地する時は
芯となる糸はピンと張った状態
にしてください。
螺旋状に巻きついた糸が布側へ着地してから、ゆっくり結び目を引き締めてください。

螺旋状にまきついた糸が布側へ着地し、結び目を引き締めるまで
芯になる糸がピンと張ったままになっているか?

これが第一の観察ポイントです。

芯になる糸が結び目の中で歪まず
螺旋状に巻きついた糸に巻き込まれず
真っ直ぐピンと張った状態で存在できているか?
これが、基礎のキのオヤ結びの構造のひとつの条件

・芯となる糸は、結び目の中では常に真っ直ぐであること。

をクリアするための観察ポイントです。

■ 「基礎のキのオヤ結び」の結び方 その2

では、もう一つオヤ結びをしましょう。
目の大きさは気にしなくて大丈夫です。

先ほどと同じように、2回巻きのオヤ結びをします。
芯になる糸をピンと張ったまま、螺旋状に巻きついた糸を布側へ降ろしていきます。
布側へ着地寸前。
ここで第二の観察ポイントです。
螺旋状に巻きついた糸はお互いが重ならず、順番通りに積みあがるように巻きついていますか?

糸が重なり合っていたり、順番が入れ替わっていたりしたら
芯の糸を引き出すのを一旦中止して、
螺旋の状態を正しく直してから今一度、芯の糸をピンと張って引き出し
結び目を引き締めてください。
結び目を引き締めながら、巻きついた糸がどのように引き締まっていくのか、最後まで目で確認してください。

この第二の観察ポイントが

・結び目を構成する糸は、重なりなく芯の糸に一寸の隙間もなく巻きつくように引き締められていること。

という、もうひとつの条件をクリアするためのものです。

■ きっちり、しっかりと結ぶこと

上記2ヶ所のポイントを実際に観察しながら編むとご理解いただけるかと思うのですが
「基礎のキのオヤ結び」というのは、寸分の隙間もなく糸が糸に巻きつき、結び目には糸単位でしか物事が存在しないように目指す結び方です。
つまり、最小単位「糸」を意識して結ぶということです。

不安定な要素がほとんどのイーネオヤで
揺るぎない「糸」という単位を意識した結び目を作ることにより
糸の倍数(巻きつき回数)で一定の「高さ」を作り出します。
「高さ」は目の一辺となり、目の大きさを揃えるための基準となります。
その基準を元に、次の結び目へと続く糸の長さを揃えるようにすれば
二辺の長さ(高さ)が一定となる編み地ができ、自然に目の大きさが揃うようになり、等高線のような渡り糸が現れます。
不安定な要素の中で、一定したものを積みあげることにより、安定したものを作り出すための結び目が「基礎のキのオヤ結び」の利点です。

なので、「基礎のキのオヤ結び」はきっちり、しっかり結ぶことが大切なのです。

■ 最後に

糸の動きを観察しながら編むという練習は、急がば回れ的な練習方法です。
オヤ結び1回1回にかなり集中して行わなければなりません。
私の経験からいくと、10分でも30分でも集中できるだけの時間で良いので毎日行うことが一番早い身に付け方でした。
早ければ数日で、ああ、この糸の動きが正しい状態なんだ、と目視で理解できるようになるかと思います。

そして毎日正しい状態の動き、正しい結び方を繰り返すことで体感的に覚えることができ、自転車の乗り方などと同じように手続き記憶として身に付けられます。
何週間か編まず久しぶりに編んでも、下手になるということはありません。
編み始めに多少の練習と調整だけで済みます。
どんな糸でもグズグズな目にはなりませんし
ロングループや目の大きさを変える、といったことも簡単にできるようになります。

とにかく結び目。
「基礎のキのオヤ結び」を身に付けることが
美しいイーネオヤを編むための必須条件だと、私は思っています。

読んでくださり、ありがとうございました。テシェッキュレデリム!
素敵なイーネオヤ、楽しんで編みましょう〜。