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『問題』『敵』『目的』がなければ物語ではない

「誰が読んでも面白いこと」が絶対条件

こんにちは、ぴこ山ぴこ蔵です。

あなたが何かストーリーを書いて、気のおけない友人たちに読んでもらったとします。

あなたのお誕生会にはまず顔を出したりしませんが、あなたが誰かにフラれたと聞くやいなや遠路はるばるうれしそうに集まるような、そしてあなたが出世したところでお世辞の一つも言わないような人たち。つまり本当の友人です。

まさに理想の読者である彼らからは……

「全体的に面白い物語だったけど、登場人物のキャラがちょっと弱いよねえ。まあ、70点だな」

などという優しい評価は絶対にもらえません。

本気の読者にとって70%面白いという感想はあり得ないのです。

そもそもあなたは「70%面白いと思った作品」を再読しますか?

「これは70%は一度読んでおくべき」と友だちに勧めますか?

お気に入り度70%の本を、間違ってメルカリで売らないように、本棚の高いところにある「大事な本」コーナーに置きますか?

面白いか、そうでもないか。YESかNOか。

読者は白黒をはっきり付けます。

しかも、読者が読みたがるのは常に「いま一番面白いもの」なのです。

作者は「面白さ」を軽視する

それなのに、作者の方は「読者が面白がってくれるかどうか」にはあまり気を使っていないようです。

これは不思議な現象です。

私たちは、他人の作品に対しては貪欲に面白さを求めます。では、自分の作品にはいったい何が書かれていてほしいのでしょうか?

もちろん自分の文章でも、大事なのは「面白さ」に決まっています。

なのになぜ私たちは面白い文章を書かないのでしょうか?

それは単純な話です。

「どう書けば面白くなるのか」というノウハウを知らないからです。

多くの初心者は、この「面白さ」という技術的なハードルをクリアすることができないために、創作そのものを「自分には無理」と思い込んで断念します。

誰もが「面白い物語」を読みたがっているのにも関わらず、誰も「ならば面白く書くにはどうすればいいのか」をまともに考えていないために、結局「創作は難しい」ということになっているのです。

そこで、物語の面白さを生み出すための

物語を「面白くする」必要条件とは?

さて、エンターテインメント物語に絶対に必要なのは、鮮烈な「オープニング」、圧倒的な「クライマックス」、感動的な「エンディング」です。どれが抜けても読者は満足してくれません。

そして、その創出に共通する要素が3つあります。物語の最初から最後まで、主人公の行動や意識の変容に深く関わり、作者の書きたいテーマをはっきりと具体化してくれる軸です。

それは、主人公の『問題』と『敵』と『目的』です。

物語を成立させるために不可欠な最小限の条件と言っていいでしょう。

これらの要素さえ押さえておけばストーリーは面白くなるという『物語の基本』です。

100文字以内で文章化するとすれば、こんな感じです。

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「ある問題を解決する義務のある主人公は、敵にいったん敗北するが、再び立ち上がって成長(変化)し、ついに新たな希望となる目的を見つける」

全体像を一目で把握してもらうために、この文章では要点を思いきり圧縮しています。

実際に使用する際には、じっくりと解凍しながら、それぞれの要素の関係性を理解する必要があります。

キーワードは「問題」「解決」「義務」「敵」「挫折」「成長(変化)」「目的」「発見」と言ったところです。

中でも特に注意してほしいのは、主人公が解決すべき『問題』、主人公と対立する『敵』、主人公が達成したい『目的』です。

例えばおなじみの物語を見てみましょう。

『蜘蛛の糸』であれば、主人公カンダタの抱えている『問題』は「地獄の責め苦」、カンダタが克服すべき『敵』は「自分の欲望」、カンダタが発見した『目的』は「極楽への脱出」ということになります。

『笠地蔵』であれば、『問題』は「貧困」、『敵』は「世間の無関心」、『目的』は「無事に年を越す」。

『シンデレラ』であれば、『問題』は「不遇な境遇」、『敵』は「義理の母と姉妹」、『目的』は「幸せな結婚」。

ではこれを使ってあなたの物語をチェックしてみましょう。

まずはあなたの物語にこの三要素『問題』『敵』『目的』がしっかり入っているか確認してください。

「『問題』は「〇〇」、『敵』は「◆◆」、『目的』は「☆☆」」

そんな感じで、長くても50文字以内で明確に言語化できればOKです。

それが出来たら、次はそれぞれの要素を、前述した『物語の基本型』に挿入して、100文字程度で文章化してください。

ここで大事なのは物語の「詳細」ではなく「核心」を抽出することです。あなたが感じ取ったその話の本質をシンプルに言葉にするのです。

目に見える事象よりも、作者が伝えたい抽象的な価値観や感情、そして生きることの実感を掴むのです。

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★「地獄で反省する義務のある主人公は、一匹の蜘蛛の命を助けたことで成長(変化)し、ついに極楽への脱出口を見つける」(蜘蛛の糸)

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★「貧乏な主人公は、笠を売りに行った村で無関心さに打ちのめされたにも関わらず、雪まみれの地蔵に無償の善行を施したことで満足感に浸る」(笠地蔵)

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★「不公平な状況からの脱却を目指す主人公は、義理の家族に妨害を受けるが、めげずに果敢にチャレンジすることで、ついに素敵な王子様と踊る夢が叶う」(シンデレラ)

あらすじ抽出力を磨こう!

いかがでしょうか?

あなたはこの「抽出力」を磨いていますか? 

いくら速く沢山の読書をしても、本質を見抜く力がなければ意味がありません。

それには『問題』『敵』『目的』を読み解くテクニックを身につけるのが大前提なのです。

この力の訓練のために大長編を読む必要はありません。

よくご存知の短いあらすじで充分です。

『問題』『敵』『目的』を抽出して、『物語の基本型』にまとめてください。

けっして天才ではないという自覚はあるけれど、それでも面白い物語を創作したいのであれば、まずはこの努力が要求されます。

いよいよ物語の結末を作ろう!

さて、お気づきになったかと思いますが、この段階では、話がまだ「物語の結末」に至っておりません。

カンダタはどうなるのか? 笠売りの翁は年が越せるのか? そしてシンデレラの運命は?

このままでは未完です。

物語を完成させるためには「結末」が不可欠です。

そして、結末を作るには、もう一つ別のルールが必要なのです。

それはどんなルールなのでしょうか?

ここから先は

「あなたの物語の結末を深遠にする〈ある要素〉とは?

でお伝えします。


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