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展覧会レポート

さてさて、朝晩寒さが増して参りましたね。芸術の秋も、程よい季節はあっという間に過ぎ去って、季節はすでに冬です。
展示室もじっと座っている身にはやはり冷え込みが応えます。当館の特別展は年明けて一月十五日まで続きますが、今回は、当館と関係の深い『陶磁ネットワーク』提携美術館の展覧会のレポートをしていこうと思います。

今回私が観覧に訪れたのは、『静中動:韓国スピリットをたどる』開かれた陶のアート 展です。場所は『滋賀県立陶芸の森』、新名神高速道路の信楽ICからは一本道で、名古屋からは二時間弱で行かれます。高速道路からの道沿いには、おなじみの「タヌキ」達が大小様々にお出迎えしてくれますよ。
この展覧会は、タイトルの通り「韓国陶磁」の過去から現在を通覧するものです。出品作品の中で最も古いモノは12世紀から新しいモノでは21世紀まで。いわゆる高麗青磁といわれる作品群の国内に所蔵されているモノで一番著名なのはやはり出光美術館蔵の「青磁半陽刻牡丹唐草文瓢形水注、承盤」でしょうか。翡色青磁の非常に美しい色味と、くびれた部分とねじった持ち手にかかった青磁釉の濃淡と、本体に刻まれた牡丹唐草が優美な逸品が展示されています。そして、同様の瓢形水注、承盤として、当館の管理している作品である「青磁象嵌蓮花文瓢形水注、承盤」も出展しているのです。こちらも出光美術館の作品と趣は違えど、全く遜色ない美しさと完成度を誇る作品です。
その他にも青磁象嵌の様々な形の銘品や優品が、当館からこぞって出品されておりました。通常ですと、これらの作品は常設展示室の韓国陶磁器の総覧的な通史コーナーの一角にさらっと置いてありますので、あっさりと見落とされてしまいがちなのですが、やはりこうして一つ一つをきちんとそれぞれの技法の紹介などと共に見せてもらうと、あらためてそのレベルの高さにため息が出てしまいます。その先の15世紀の作品コーナーに、並んでいるのは日本民芸館の「粉青刷毛目鉄絵草花文俵壺」と愛知県美術館木村定三コレクションの「粉青粉引草花文俵壺」と、どちらも見劣りすることない作品達。

展示室をさらに進んでいくと、出光美術館所蔵の白磁祭器と、愛知県の木村定三コレクションからの同じような作品のそろい踏み。こちらの祭器というのは、儒教で祭祀に使用されていた、高さのある割高台に特徴があるモノです。それらの由緒正しい形の16世紀17世紀の器達の狭間で存在感を放っているのは、「劉炳豪」作 粉青象嵌印花文花形大鉢や、「尹柱哲」作 花器などの現代の作品達。その先にも大和文華館所蔵の、柳枝に止まる何だかユーモラスな表情の鳥が描かれた粉青鉄絵柳鳥文瓶画並んでいたりと、銘品の醸し出す様々な面白さについつい時間を忘れて見入ってしまいます。
さらに展示室を奥に行くと、いわゆる『満月壺ーmoon jar』と呼ばれる白磁壺(今回のポスターのメインビジュアルとなっていました。)が並びます。こちらは日本民芸館や、早稲田大学會津八一記念博物館等が所蔵している、そうそうたる迫力のある作品群で、艶のある丸い曲線の美しさと完成度の高さ、フォルムの美しさには圧倒されました。

どの展示室にもいくつも出没する当館からの作品にも、普段と違う明るい展示室内で、スポットライトを浴びて輝いている姿に、改めて見直したり。
以前、北大路魯山人展でも感じたことですが、本当に当館の所蔵作品達のレベルの高さには驚かされます。これだけの作品群を(約20点以上)一気に貸し出ししても尚、常設展示室の韓国陶磁コーナーにはまだ作品が展示を維持するだけ残っているんですから。借りてきた当の学芸員さんも『見たことがなかった』(以前当館に勤務していた学芸員さん)と言うほどの質量共の充実ぶり、もっと世間にアピールしても良いと思うんですけどねえ。
もちろんその先の現代韓国陶磁作品も非常に刺激的で、考えさせるモノあり、ふふふ・・と笑ってしまうような作品もあり。映像として上映されていた韓国の伝統的な壺の制作風景もじっくり楽しみました。巡回しないのがもったいないような贅沢に韓国陶磁の過去、現在を見ながら未来を見据える、そんな素晴らしい展覧会でした。

残念ながら会期は12月18日までと終了してしまいましたが、毎回趣向を凝らした興味深い展覧会を開催している美術館です。お近くに行かれる予定があれば、是非とも併せてお楽しみ下さいませ。

『滋賀県立陶芸の森』次回展示は2023年3月11日~6月25日
『湯呑茶碗ー日本人がこよなく愛したやきもの展』です。

最後までお読みいただき、有り難うございました。もちろん陶磁美術館も年内は12月25日まで、年明けは1月5日から開館しております。皆様のお越しをお待ちしております。


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