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展覧会レクチャー(その2)

特別展『ホモ-ファーベルの断片』、引き続き第2章の解説です。
第2章のテーマは、『技術(アルス)』
ラテン語で「アート」の語源を意味する言葉を第2章のテーマにして、現代の陶芸に見られる様々な技術の発展を総括していきます。
時代ごとの、最先端の求めに応じて、陶芸の『技術』は様々な発展を遂げながら変化し、枝分かれしてきました。この地区(愛知、岐阜)の代表的な陶芸技術の継承者を紐解いていくことで、これからの技術の展望を追っていかれる展示構成になっています。
まず本館第一展示室入り口を入ると見えてくるのは、『人間国宝』の作品二点。
『鈴木 藏』…技法「志野」で重要無形文化財
『加藤 孝造』…技法「瀬戸黒」で同じく。
この地方を代表する二人の作家の、対照的な色味の、作品が並んでいるのを見る事ができます。
そこから先に進むと、
『小形 こず恵』…瀬戸染付の若手作家の作品
鮮やかな青と、美しいグラデーションが目を惹きます。
『前田 正剛』…鉄釉(鬼板、鉄絵とも呼びます
)による力強く、繊細な絵付けの作品。こちらも通常鬼板と呼ばれる鉄分を多く含んだ土を溶いて筆で描くいわゆる鉄絵とは異なり、くっきりとした輪郭が目に留まります。

向かい側の壁ケース内には、瀬戸を代表する「練り込み」技法の実力派の作品。

『水野 教雄』…着色された粘土を組み合わせて紋様のパーツを作って組み合わせることで特徴的な作品を生み出す作家。焼成時の収縮率まで計算に入れた緻密な作品二点。繰り返しながら小さくなっていくパターンで構成された作品は、見ていて吸い込まれるような気持ちになります。

同じく壁ケースに並ぶのは、高浜の瓦産地の技法を使って新しい作風のオブジェを作り出す作家。

『森 克徳』…燻し瓦の技法を継承して、暖かみのある金属光沢 を帯びた銀色に輝く現代的なフォルムのオブジェを作成する。エッジの効いた造形から、一見陶器に見えない存在感を放つ作品です。

その隣にならぶのは、鮮やかな色味の作品。

『鈴木 徹』…織部釉、緑釉を使用した鮮やかな緑色が目を惹き付ける作品。表面のテクスチャーに豊かな表情をつけることによって、流れたり溜まったりした緑釉の様々な表情が見ていて楽しい作品です。

続いて向かい側独立ケース内には、『瀬戸』の技法ではない技法を用いて挑戦をつづける作家の作品も、展示されています。

『樽田 裕史』…瀬戸の伝統的技法ではない、「蛍手」にあえて瀬戸で挑戦している作家。いわゆる一般的な蛍手は、あくまで丸い形の穴を素地に無数に開けていくものが基本だが、樽田の蛍手技法は、素地にスリットを入れるという方法を使用している。それは作品としての強度の限界を試すような方法であるが、スリット部分を覆う透明ガラス釉が光に輝いて非常に繊細な美しさを醸し出している。

その隣は常滑焼の伝統的技法を使用した作品

『伊藤 雅風』…常滑焼の焼き締めの技法を使用した急須と茶器のセットだが、デザイン性は独自の展開をみせており、非常にスタイリッシュな作風となっている。

そのほかの独立ケース内には、

『伊藤 秀人』…黄瀬戸、天目などから、近年青磁釉の作品を作り始めた。シンプルな造作の、中にもフォルムの美しさに定評のある実力派です。

『林 恭助』…鉄釉技法から天目茶碗へと制作をシフトしており、近年、窯変天目に挑戦している。単独ケース内に展示があり、銀河のような、青白い光を纏った星が輝いているような作品が見られます。

第一展示室入り口側最後の作品は、陶芸ではあまり利用されて来なかった技法を使用した作品。

『清水 潤』…萬古焼の地区で素焼き無しの焼き締め技法から焼成した作品の表面に紋様をマスキングしてサンドブラストによって彫刻するという作風を編み出した作家。彫刻の深さを変えることによって、作品に奥行きが現れてくるのがわかります。

ここまでで本館一階展示第2章『アルス』(技法)、前半を終了しました。次回は、第2章『アルス』(技法)後半からスタートです。

お楽しみに😊😊🙏🙏

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