そこにもここにもお猿がいっぱい(申)

猿はいつも暗闇に青い燐光を纏って現れる。
僕のデスクの少し先で嘲るようにこちらを見ている。

「おいおい妙な考え起こすなよ。言われた通り墨を引いときゃいいんだ。どうせ誰も見やしないんだから。ウキ」

僕が書類の文字を黒いインクで塗り潰すと、猿は満足げにキーキーと笑う。
耳障りで不快だ。
だがとうに慣れてしまっている。
僕はそっと目を閉じる。

出入り口、出勤しようとする僕に胡乱な連中がカメラとマイクを突きつける。公文書の偽造、政治家への忖度。そんな言葉が飛び交うが僕はなにも語らない。

「それでいいんだ。下手なこと言うと後が怖いぜ。お前にも生活があるだろ?ウキ」

大通りではデモが起きている。真実を語れと叫ばれているらしい。が、それも聞こえなければどうということはない。

「耳を塞いで机に向かってろよ。お仲間と同じようにさ」

ああなんだ、猿が沢山いるじゃないか。
右にも左にも、僕自身も。

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