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西成ガギグゲゴ【七人の侍 番頭さん】

西成ガギグゲゴ【七人の侍 番頭さん】
5年位前だったろうか
びっこをひいた瞳孔が開いた男と、服の上からモビルスーツのようなコルセットをした
えびす顔の男が訪れた
すぐに2人は、イントネーションで関西人じゃないとわかった。
瞳孔が開いた男の方は、のちの七人の侍の一人【DJリハビリ】
えびす顔の方は、今回の主役のこれまた七人の侍の一人【番頭さん】
わたしが大阪新世界で6年程営業している、イマジネーションピカスペースと言う飲み屋には、新世界の磁場なのか、多種多様な人達が訪れる。
国籍、人種なども関係なく、あらゆるジャンルの人間交差点になっている
どのタイミングでヒューマンコラージュが生まれるのか、わたし自身でさえまったく予想が出来ない
まさにうねりだしたら止まらない新世界である
そんなお客さんの中に、こいつらは別格という連中がわたしの中に七人いて
わたしは、彼らを【七人の侍】と呼んでいる
番頭さんは、その七人の侍の一人である
満面の笑みで、「はるきさん、見てー見てーこんなの持ってきましたよー」
だいたいこの感じが入りである
季節外れのサンタクロースの様に、でっかい袋に自称お宝が山ほど入っていて持ち込んでくる
番頭さんは、北海道の出身で、東京をはさみ20年以上を西成で過ごしている
だいたい西成だと【土木】か【解体】の二種類が基本で、番頭さんは【解体】の方になる
いわゆる、西成の日雇い労働者と言う事だ
わたししか居ない時は、「とりあえず瓶ビール2本」
他にお客さんがいれば、お客さんの人数分とわたしの分とを必ず注文する。
お客さんが20人位いたら
「はるきさーん!!瓶ビール20本お願いねー」と注文してくる
かなり羽振りが良いお客さんである。
「さぁー 今夜は寝かさないぞ―」
「朝までいくぞー」
「飲ーんで飲んで飲んで、飲んで」
「ぐぅーとぐぅとぐぅと、飲んで」とコールをしだして、一気に酒ノリにしてしまう。
番頭さんは、アッパーである。
どんどん酒をバラまき
男女問わず褒めちぎる
男性なら竹之内豊に似ている
女性なら深田恭子に似ている
ほとんどそのラインで押し通してしまう
褒めて褒めて褒めちぎる
全然似てなくてもおかまいなしである。
初見のお客さんも、圧倒されながらも、褒めらる事に対して悪い気もせず、酒も振る舞いの為
終始、笑顔で陽気な雰囲気になる。
それなのに番頭さんは、一番最初に潰れる
ピカスペースが臨界点に達しようとしている時に、こそっとわたしに近づいてきて
「はるきさん帰るね」
「このお金でみんなに飲ませてあげて」
そう言い残して3000円程を置いて
ちどり足で帰って行く。
当時、モビルスーツの様なコルセットをしていたのは、解体現場で解体工として働いていて、大事故にあった為だ
解体中の壁の下敷きになり、背骨をやってしまった
手術をして車椅子生活。
その後、懸命なリハビリにより自活するまでに回復した
ほんの数センチの差で、下半身不随だったみたいだが、幸いにもそれは、免れた
わたしが出会ったのは、回復している最中だった
わたしが住んでるこの新世界近辺は、生活保護の連中を狙ったマンションがいっぱいある
居住者の8割の方は、生活保護であり、番頭さんもそこで療養していた
元々、お酒が好きだった事と、中々、車椅子で飲みに行けないこともあり、
マンションからわたしの店が近い為、そこから良くDJリハビリやマンション仲間と来るようになった。
雇われていた解体会社とは、事故の示談が成立する時にきていて
それなりの金額が番頭さんに支払われる、事になっていた。
その事もあり番頭さんは、ひたすら奢り続けていた。
「はるきさん、快気祝いしてくれないか?」と言われたので了承した
番頭さんは、自分自身の快気祝いを自分で企画した
快気祝い内容
●BBQだいたい30kg~40kg位の肉量
●シャンパンやドンぺリなどのめでたい酒類10本位
●ビンゴゲーム ビンゴゲーム本体、景品など
以下ビンゴゲーム景品一部
【現金2万円】
【松茸】
【ローター】
【ローション】
【ドンペリ】
●その他、ドンキホーテーで売っている大量のPARTYグッズ
●ピカスペースの飲み物は、来場者は全て無料←後で番頭さんが支払う
総額30万円位かかったんじゃないだろうか
それを全て番頭さんが支払うイベントである
快気祝い当日は、中々の世界観だった
番頭さんがお世話になっている連中が、ピカスペースの軒先で肉を焼きまくり
マンション仲間の人達も、番頭さんの快気祝いに各々が食べ物を持ち寄った。
通行人やホームレスにまで、お酒を振る舞い、子供たちは、店内で花火をしていた
店が賑やかな為、一般のお客さんもどんどん入ってきて、その都度、酒が振る舞われた
「いったい、この店は、なんなんだろう?」と通りすがりの人やお客さんは、思った事だろう
なんせ全部無料なんだから
ビンゴゲームは、一等2万円に惹かれ全員、真剣に取り組んでいた。
ピカスペースで行った数あるイベントの中でも、客層も雰囲気もかなり異質な盛り上がり方をしていた
番頭さんは、「きゃー、やめてけれー、お尻からは、飲めないよー」などの下品な言葉を発しながら、めちゃめちゃ楽しんでいた
終始えびす顔で、満面の笑顔だった。
全員、笑顔だったのは、本当に素晴らしかった。
イベントの面白さにハマった番頭さんは、そこから二度ほどイベントの絵図を描いた
一度目は、たまたまピカスペースで意気投合した一見さんが、宗右衛門町の唐揚げ屋の雇われ店主だった為、そこで前回みたいな宴会をしようと考えついた
かなり、胡散臭い人だったのを覚えている。
宴会の打合せの道中に、番頭さんは、雇われ店主との関係性が、悪くなっていった
それでも、一度やると言ったらやらなければいけないと言いだし、番頭さんは、宴会を開催した
「はるきさん 必ずきてね」と言い残し
案の定、15万円ほどかけた宴会は、かなりひどかった
ビールは、缶ビールでアテででたのは、唐揚げがメインの揚げものだけだった
10人程しか集まらず、番頭さんは、当日に飛んだ。
主催もいないし、あまりにも唐揚げ屋の対応も酷かった為、いまいち盛り上がらず早々に切り上げたのを覚えている。
相当、雇われ店主は、ピンハネしただろう
唐揚げ屋の雇われ店主は、それ以降、一切見なくなった。
二度目は、LIVEだった
LIVEハウスを貸切、番頭さんが自身で選んだミュージシャンに声をかけた
ピカスペースで声をかけた、ミュージシャンの繋がりを辿り、何人かが集まった
番頭さんの飲み友達も、音楽をやっている事もあり、彼らにも声をかけた
わたしは、このLive企画は、最初の時点でやめる様に忠告した
なんとなく、番頭さんが最終、飛ぶと思ったからだ
番頭さんは、来る度に、このLIVEイベントの詳細を延々と話しこんできた
LIVEの話しは、お笑い芸人を呼ぶや女子高生に歌わすなど、かなり広がっていて、聞いてる私でさえわけがわからなかった。
当然、相談していた飲み友達のミュージシャン達も、内容がどんどん変更になり、愛想をつかして離れて行った
それでも番頭さんは、場所を押さえて、面子を揃えていった
番頭さんは、LIVEイベントのフライヤーをデザイナーに注文して発注した
一人のミュージシャンにイベント構成も任せて、全フリしだした
演者のギャラだけで、数十万円を準備していた
イベントの当日が近づくにつれ、番頭さんには、かなりのノイズがかかっていた
これは、やばそうだなと思っていた
LIVE当日、やはり番頭さんは、飛んだ
それでも、、演者らが何とかしてイベントをやりきったみたいだ
わたしは、そのLiveには、立ち会わなかった
それから番頭さんは、わたしの店に訪れ無くなった
この近辺の人でさえ、マンション仲間でさえ、番頭さんを見なくなった
わたしは、こうなると途中で予見していた、何度も助言を与えたはず、それなのになぜ
本人も途中で、引き返させなくなったのか
わたしには、番頭さんの意図がわからなかった
自分の背骨と引き換えに手に入れた、大金
この3つのイベントだけで、番頭さんは、100万円を使った
100万円のイベント料は、決して安くないとわたしは、思っていた。
なんの為に、イベントを主催したのか
本当に謎だった。
あのえびす顔の笑顔が見れなくなって、本当に残念だった
個人的には、たまに飲みに来てくれるだけでいいのに
本当に残念な気持ちで、日々がたっていた
稀に店の軒先に、自称お宝が置いてある事が、番頭さんとの唯一の繋がりだった
それがうれしかった
2018年の2月の寒い時期だった
東北人の私でさえ、大阪で底冷えを感じた
当然、客入りも冷え込んだ。
わたしは、客を招くより
開きなおって、ずーと気にいらなかった
トイレの改装工事をおこなった。
トイレを解体しているその最中に、番頭さんは、再びピカスペースにあらわれた
これは、吉兆と思い
番頭さんとの時間にわたしは、ダイブした
番頭さんは、医者に止められてるにもかかわらず、解体工に復帰していた
熊本の大震災以降、熊本で解体業の需要が増え、番頭さんは、解体工に復帰して熊本に長期で出稼ぎに行っていた
マンションも解約しており、西成のドヤに住まいを移していた。
人夫出しの様になり、とりまきの様な労働者を引き連れて、久々にわたしの店に訪れた。
長期の出稼ぎも一段落して、帰って来たようだった
トイレの改装工事の最中だった為、その様子が気になったのか、それから番頭さんは、度々一人で来るようになった
Liveの一件もあり、出来るだけLiveの関係者には、会わないように飲んでいた
Liveの一件以来、この近辺の飲み友達とも溝が出来ていて、彼らも避けていた
番頭さんは、Liveの件を度々、私にこぼしていた。
私的には、もう時効であり、なんの問題も無いはずだと思っていた。
それでも酒ノリは、変わっていなくてお客さんがくれば、ウェルカムビールと称してお客さんにビールを注いでいた。
わたしは、番頭さんが好きだった。
えびす顔で、ニコニコしていて、アッパーで気前が良い
素直で、シャイでサービス精神が旺盛である。
非常に興味深い人間の一人だった
本当に笑顔が素敵だった。
番頭さんは、連日くる度に、解体の中で出てくる自称お宝をピカスペースに毎回、持ち込んでくる
店が空いてない時は、店の入り口付近に、自称お宝が置いてある
まるでごん狐のごんの様である
せっかく屋根裏部屋を片付けたのに、今は、番頭さんの持ち込んだお宝で溢れかえっている
相変わらず「はるきさん、飲んで飲んで飲んでとー」酒をばらまき
だいたい一時間の尺で、お宝のエピソード、西成、解体業についてあれこれしゃべりまくり
「今日、坂本竜馬の掛け軸、鑑定にだして200万円でした」
「がっははははははははは」
「大久保利通の時は、300万円」
「がっはははははははははは」
と大笑いし、誰か客が来ると、さらっと消えていく
番頭さんとの時間は、程良く疲れた体に、酒と大笑いをもたらしてくれる
本当に、気前がいい
必ずおごってくれる
わたしにとってかけがえのない人で、不器用なその生きざまを惜しみなくわたしに捧げるのである
番頭さんは、連日来る中で
「はるきさん、人手が足りないから明日現場を手伝ってくれないかい?」
と言われ、おもしろそうだから、了承した
朝早くに新今宮で待ち合わせた
やはり新今宮は、朝が一番いい
労働者の町だとあらためて、思わしてくれる
番頭さんは、懐からウィスキーの小瓶を取り出し、グイッと飲みこんで
「はるきさんも寒いから、どうぞ」と言われた
満面の笑みだ
現場は、天神橋六丁目の中にある店舗けん住まいだった
かなりのでかさだった
お隣さんとは、両方、家同士がくっついていた
半解体されており、わたしの好きなビジュアルだった
かなりでかいなーと思った
これを手でバラして行くのかと思ってたら
そーでは無く、まず重機を入れる場所を確保するのであった
一階から三階までの同じ軌道上に開口部を開ける
順次、上の階からバラして行く
開口部から、1階にバラした物を放り投げていく
バール、バチ、セーバーソー、チェーンソー、ガスカッターなどの工具を使い
重機を入れる場所を作っていった
露わになっていった天井裏で、じーと支えていた、この家の柱や梁
屋根が無くなり、何十年ぶりに日光に照らされたそいつらは、なかなかの存在感を放っていた
「おー立派なもんだわ」と思わず吐いてしまった
昼飯でも生ビール見たいなノリだった
仕事終わりは、番頭さんが、両手に缶ビールをどっさっり抱えてきて、電車の中で酒盛りだった
ひたすら酒だった
何日か仕事をして行くうちに、一緒に仕事をしてる連中らと仲良くなっていった
皆、基本的に素直で優しい
色々な話を聞かされる
各々が紆余曲折の道を歩み、盥回しにされ辿り着いたのが西成の【解体】である
泥だらけの作業着で、昼飯に出かける時、この仕事上のカーストを他者から感じる
泥だらけになり、解体物の上で、缶コーヒーを飲みながらくだらない話や下ネタを話してる時がこの仕事のハイライトだと思う
すがすがしいし気持がいい
解体業は、きつい仕事だと思う
重機がはいれない所は、手でバラして行く
粉塵や泥などでかなり汚れる
鼻水は、マスクをしていても、真っ黒だ
肉体的負荷も強いし、釘を踏むのも何度もある
特にしんどいのが、シバ拾いだ
重機などで解体したのを、木くずにわけるのがシバ拾いだ
なかなかしんどい作業だった
番頭さんは、解体業をしながら、解体する時に目ぼしい物をピックアップして持ち帰りピカスペースに持ち込んでくる
西成にまだ、泥棒市が稼働していた時の謎が解けていく
残念ながら、今は、泥棒市はやっていないのだが
あの1人1人の小世界を覗くのが好きだったんだが
本当に残念だ
この建物は、どうやら持主が亡くなって世代が変わったみたいだ
その子供らは、ここで育ち、独立して別の場所で今を生きている
先代が亡くなり、一区切りとして解体業者に全解体をお願いした
彼らの思い出の残骸たちを、解体業者らが各々の選別で持ち帰っていく
それを転売なり、誰かに譲って新しい役割を与える
選ばれなかった、思い出の数々の物達は、解体されていく鉄骨や柱、土壁の下敷きになっていった
ここで生活していた彼らの残像とともに
「解体は、葬式なんだな」と思った
葬式は、家族や親戚、故人のゆかりある人々によって厳かにとりおこなう
家の葬式は、縁もゆかりも無い、我々、解体業者が大胆にとりおこなう
側面一式の土壁が、ユンボのワイヤーで一気に倒れる時の轟音
この家の、柱や梁などが落下した時の衝突音
けたたましい電動工具の連続音
粉塵に差す水しぶきは、綺麗な放物線をえがいていた
どんどん、ドンドン、DONDON、解体していった
アルミ、鉄、電線などは、スクラップ屋に売られていった
グチャグチャに折り重なった、家たちの残骸が見せる景観が、震災の景観に重なった
ただこの家に、なんの縁も無いわたしは、その心情の差異に少し驚いた
思い入れや縁が無いとここまで違うものなのか
折り重なった残骸物にある、うっすら隙間
突き刺さった鉄骨の角度
土着的でもあるが、鮮やかな細やかいろどり
交錯するひしゃげたトタン
その一本だけの釘で、それを維持して最後にわたしのみに、その緊張を見せてくれるのか
割れた鏡破片の、乱れた反射
瓦達は、群がって鋭角な形で抱き合った
わたし達は、いつまでも一緒だからね
鎮座した仏像が、解体物にまぎれて微笑んでいる
天上天下唯家独尊
長年の名も知らない生活残像が、今消えようとしている
一家を受けとめ続けた、【家達】が今、終焉をむかえる
世代変わりしてしまった、ここに住んでいた彼らにこの景観は見てほしいと思った
この瞬間は、立ち会うべきだと思った
「この気持は、なぜ」
「違和感はなんだろう」
「軌跡で臨場感は異なるから」
「差異から、差別してる」
「不可触民」
「ここに川が流れていた」
「甘い甘いチャイを今飲みたい」
「飲みほしたチャイの器を地面に投げつけた」
「パリィーン」
「土埃が真下からあがる」
「見ない、見ない、見ない、見て、見て、見て、見せろ、見たい、見る、見たくない、見
ろ」
「見なきゃいけない、見つめていて、見ないで―」
見せていない部分、スーパーに陳列された肉、見せない文化、隠される事柄、死者、あそこのうち、ブルーシートの中、西成 前科売ります、飛田新地、イスラムの女性、クジラ、twitter、アルツハイマーの母、レバ刺しアリマス、おそうしき、プランターの植物、全盲、いろどりパセリ、歯医者さんのちょっと沁みますよ、先生に言ってやろう、先生に言ってやろう、はないちもんめ、いらっしゃい
「ワタシタチヲワスレナイデネ」
「ワタシタチヲワスレナイデネ」
「ワタシヲワスレナイデネ」
「ワタシヲワスレナイデネ」
「わすれないよ、大丈夫、わすれない」
「もう少し、もう少しだけ見ててもいい」
「ばっくり開いてるから」
「きれいに...」
「はるきさーん、お宝ー、はるきさーん、お宝出ましたよー」
振り返ったら、泥だらけで満面の笑顔の番頭さんが立っていた
「はるきさん 見てー見てー これ見てよ」
わたしは、思わず笑ってしまった
本当に少年の様なキラキラした笑顔だった
「番頭さん見てるから」
残念な事にその家の解体は、途中から人手が足りて最後まで立ち会えなかった
場所は覚えてるので、どこかのタイミングで行かなきゃいけない
そこへわたしは、見にいかなきゃいけない
その天六の解体現場は、本当に笑いの絶えない愉快な面子だった
70才近い、いつもいつも胃を押さえながらイタイイタイ言ってる、フ―さん
60才くらいの、解体業1年程の、解体が今までやった仕事で一番面白いと言ってた、面倒見のいい、在日のハーさん
30才くらいの、足が折れて治りきって無い、リーダー婿養子の二代目 みんなから「若」と呼ばれてた 優しくていいやつだった
それと七人の侍、番頭さん
世を渡り、泥だらけになりながら、辿り着いたは、西成解体業
汗と共に流れるのは、せつなさと郷愁と火血花
解体現場にこだまするのは、破壊音と笑い声
それが番頭さんの日々だった
缶コーヒーの、ぬったりした甘みを流し込みながら、
おもむろに解体物の残骸の上に立ち、わたしは、遮るものがなくなった空を見た
これは、これでわるくない
番頭さん天晴れだ
わたしは、残骸の上で笑った
わたしは、1人で悦に浸りながら、解体物の残骸の上で笑っていた
ただただ笑っていた
「はるきさーん!!ビール買ってきたよ―!!」
満面の笑みが残骸にあった
番頭さんが持ち込んでくる、自称お宝は、止める事が出来ない為、ずーとこの場所でやりたかった無人販売所、番頭屋に着地した
無人販売所、番頭屋として、ピカスペース軒先で番頭さんの持ち込んだ自称お宝は、只今稼働して販売している。
面白い事に、客の8割は、外国人である。
無人販売所、番頭屋の売上で、番頭さんと2人で旅行しようとわたしは、考えている
(2019年5月現在売上は、62500円になっている)
わたしが他者と交わる時に、一番好きなのは、相手の笑顔を見る時だ
笑顔は素敵だ
人は、もっともっと笑うべきだ
笑顔になるべきだ
わたしは、相手と笑いあいたい
「笑え、笑え、笑え」
「笑わそうか」
「笑わしてくれないか」
「あなたの笑顔を見せてくれないか」
わたしは、特に七人の侍の笑顔がたまらなく好きなんだと思う
七人の侍の特殊な道中で、年齢、生き様、閉ざされた道、行き止まり、塞がれた道、自ら閉ざす道
それでも七人の侍の道が、1つ辿り着いたのがこの店である事は、わたしにとってうれしい限りである
その小さな円環の笑い波止場が、ここである事を本当にうれしく思う
陽気になにもかもを笑い飛ばせる店でありたい
七人の侍の一人、番頭さん
あなたの事は、わたしが見ているよ
その笑顔は、きっとわすれないから
わすれないから
ちゃんと見ているから
だから あなたも笑って

Written by Haruki Kumagai
イマジネーションピカスペースWEB https://pikaspace.tumblr.com/

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