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西成ガギグゲゴ【七人の侍 借りぐらしの仮カルマ】

2021年初旬から、蔓延するコロナウィルスの影響で長く大阪では緊急事態宣言が続いていた
少しそれに飽きていたのと慣れてきていた為、もぐりでやっているバラックで飲んでいた
バラックは緊急事態宣言を無視して繁盛していた
そのスタイルに男気を感じた。
飲みに行く面子はいつも同じだった。
議題もか細く論点も見いだせない
ただただお互いに愚かな話題で飲んでいた
わたしは店舗をしてる為、休んでるのに休業補償が出ていた
すっかり怠惰がわたしを侵していた
わたしは怠惰のステージ4だった
ひとしきりバラックで飲んだ後、もぐりのスナックのカウンターに仁王立ちして「島唄」を熱唱した
スナックのマスターはタンバリンの上級者でそんな愚かなわたしを煽ってくれた
わたしはその援護射撃に煽られノリにノッタ
気がついたら興奮しすぎてウンコを漏らしていた
決まって次の日、二日酔いと自暴自棄のWパンチにやられていた
ウンコ付きのパンツを手洗いしてる時、わたしはみじめだった
これっきりで終わろうと思うのだが怠惰からは逃れられない
数日たって自暴自棄が軽くやわらいだ時、わたしはそのどうしようもない愚かにダイブしていた
わたしはその惰性を非常事態宣言の中、何度も何度も繰り返していた
わたしは正真正銘のぽんコツだった
何度もくり返す愚かな飲み方に、ある時それを共有出来る人物は意外と少ない事に気がついた
【愚か】は本来、他人に見せていはいけない事柄
わたしは連れが愚かを見せてくれる度に愚かに好意を持ち始めていた
他人の愚かさでわたしは救われているのか
その時1人の男を思い出していた
わたしの店の屋根裏にはBARがある。
そこの店主もなかなか愚かである
あなたもきっと愚かな部分があるだろう
わたしたちの店は大阪の新世界市場にある。
愚かな深淵を晒して酒のアテにしようじゃないか
前置きが長すぎた彼の物語を共有しよう

3年位前に小洒落た小柄な男と、煮込んだタイ人、戦績0勝4敗みたいな男が客で来た
小洒落た小柄な男の方はさばさばしていて感じが良かった。
煮込んだタイ人の方は西成の名言Tシャツを着ていた
「黙って野垂れ死ぬな やられたらやりかえせ」
雰囲気を見る限り完全にTシャツに負けていた
5敗目である
微量に死臭もした。
今回の主役は煮込んだタイ人の方、名前は「借りぐらしの仮カルマ」長いのでカリにしよう
わたしは大阪のシンボルともいえる通天閣のお膝元、新世界で8年程、商売をしている
新世界はデコラティブな立体看板が散在し、昼間になればできあがった連中がふわふわとしている
名物の串カツをアテに朝から飲める場所がたくさんある
そんな新世界にとりのこされたような場所がある
新世界市場と言う商店街である
そこの南側にわたしのお店がある
「イマジネーションピカスペース」と言う店である
今は「ランバダ」と言う名前に変えているが、正直どちらでもかまわないのでここではピカスペースでいく
そこにはあらゆるジャンルの人間達が出入りしていた
8年の時間軸でピカスペースは経ていた。己を供物としてさしだし己で供養する
そんな感じだろうか
そのお客さんの中で「別格」と言う客が七人いた
それをわたしは勝手に侍と見立て「七人の侍」と呼んでいた
七人の侍をおさらいしよう
一人目:番頭さん→解体業のごん狐
二人目:伍→西成のオアシス
三人目:えるびす→和製エルヴィス・プレスリー
四人目:回路屋→自家発電人間
五人目:ジャブ→蝶のように舞わされ蜂より強い毒をもらった男
六人目:DJリハビリ→牛歩の大剣使い
七人目:はん→苫小牧出身のてんてこ舞い
ROADSIDERS' weeklyと言う有料メールマガジンで公開していた
タイトルは【西成ガギグゲゴ】である
七人全員を紹介して、わたしのなかで消化したはずだったがここは新世界、新しい「侍」が現れていた
自己完結したいが為にNOTEと言うサイトに全て残している
実は発表していないが八人目はすでに書き終えていてNOTEで公開している
八人目はイギリス人のJONである
そして今回で九人目の侍、「借りぐらしの仮カルマ」のカリである
さっそく本編に入ろう
わたしは「死臭」を感じる人間に愛着がある
それが微量でもかすかに感じる死臭にセクシーさを感じる
カリも出会った時にかすかに死臭を感じた
小洒落た小柄な男と来て以来、カリは丁度良い位の常連になっていた
飲み方も周りに気を配り飲んでいた
ピカスペースは生ビールを出していない
変わりに瓶ビールにしているのだが、瓶ビールの良い所は馬が合う人間同士だとお互いにそそぐ事が出来る
カリも馬が合う人間がいたら、率先して杯を重ねていた
友人を連れてきたり、1人できたりして楽しんでいた
毎回、違う女性とも来ていた
いつも女性からは慕われてる様だった
意外と女性には困っていないように感じた
少しだけ儚い顔をする時があった
良い意味で自暴自棄な酔い方をする感じだった
身体を疎かにし魂のみで酔おうとするそんな感覚だろうか
これは店側の目線だが、人間交差点の様な店である為、時に人間同士の化学反応が起きる
これを人間コラージュとわたしは呼んでいるが、マトリョーシカボックスを奥底に内包している人間の方が覗く世界観は面白い
時折、カリのボックスの隙間から覗くのは微かな死臭と共に豊潤なイカ臭さをはっしていた
「はるさん、実は俺、ここの新世界市場でBARやりたかったんですよ」とカリが言いだした
「じゃーやろう」と言い出会って間もないのにピカスペースを会場にしてカリにBARをやってもらった
ある程度、勝算があった
カリは素直な人間だった、どんな質問に対しても素直に自分の言葉で返していた
それに聞き上手だった。
わたしは良くパートナーに怒られるのだが、何か相談されるとその案件に対して理詰めで答えを導き出そうとする所が多々ある
実は、女性は話を聞いてくれるだけでよくて、そこに「答え」なんていらない
カリは女性的な一面があるのか、女性との会話はあくまで「受け」でひたすら聞いていた
煮込んだタイ人見たいな顔してるのに、女性ウケは良かった。
その対応術は常に備わっていた、日々の生活でも女性に対してそうなのだろう
生れも兵庫県尼崎である為、ほぼほぼホームみたいなもんである
サブカル臭のする色々なBARに行く事が週末の遊び方だった
そのひとつに私の店も該当していた
カリの交友関係や地元の仲間などもいれたらざっと50人位はくるんじゃないだろうか
カリの人柄にベットしてみた
SNS上で告知をしてフライヤーもつくった
すべらない話の額の様なデザインにカリの顔をはめ全面的に押し出してやった
本人は嫌がったがそのフライヤーを手に取り、自分自身で行きつけの店にまわりイベントの告知をしていた
BARの名前はFULUELU
ピカスペースのSNS上は何の動きもなかった
それでもわたしは確信していた、カリを通して新規のお客さんがかなりの数が来ると
結果はすごかった
ざっと80人~100人位が来たのではないか
ピカスペースの常連は3人だけ他全ては新規である
予想の倍をカリはわたしに見せてくれた
鮮やかな勝利だった
カリは楽しそうだった
ひたすらたこ焼きを焼いていたわたしは、あまりの忙しさで理不尽にカリに半切れしていた
カリは連敗中で遠ざけていた試合に久々に挑んで初めて勝った。
この1勝はかなり価値のある勝利、わたしはその1勝にセコンドとして立ち会えた事がうれしかった
カリはこの試合以降ノリにノッタ
「お前は店をやった方が良いよ」と伝えてから数カ月で地元の尼崎に店を開いた
屋号は【破壞部屋 震】と言う名前だった
待望の1勝により、ハイキックが当たる当たる
KOの数を量産していた
時にノリとは恐ろしい
恩義があるのか、それからも度々、ピカスペースに顔を出していた
会話の中に「尼崎でBARやってるんですよ。良かったら来てください」としっかり店主になり営業をかけていた
がらんどうの中に何か1つがおさまる
そこから人は少しずつ成長して行く
カリもまたそんな感じだった
微かな死臭は消え去っていた
ピカスペースでは必ず脱ぎキャラがいる、その時代時代で必ず現れる
その意思は受け継がれて行くのか、脱ぎキャラだった客は就職と共に上京していた
カリは脱ぎキャラになった
形の歪なボロニアソーセージをあらわにしながら、当たり前のように店内をうろうろしていた
珍しい光景ではない為、そのままほおっておいた
腹がたつのがカリは全裸になるといつもよりセクシー度が増していた
その理由はなんなのか
そんな事をその時は考えたくもなかった
いつだったか
いつもの悪ノリで店内にいる男連中はカリを中心に全員全裸だった
何も知らず入店してくるお客さんも何とも言えない空気に面くらい
何も言わず服を脱ぎだしていた
8人位の男性陣が各々のボロニアソーセージをお互いの体に「ビシッ!!バシッ!!」とぶつけあい
キャッキャッキャッキャッしていた
女性客は、扉を開いてフリーズしてゆっくり扉を閉めて帰って行った

カリは尼崎出身でわたしより3つ位、年下だった
まぁいい年の方である
高校を卒業して、アメ村のアパレルショップで働きながらHIPHOPもはじめた
色々なラッパー達をLIVEで見る度に、怖気づいてしまってすぐに見切りをつけてHIPHOPを辞めた
八百屋などでも働いていた
そんなに悪い日々でも無かったが就職先をカリは探していた
尼崎には町工場がおおかった
実家暮らしのカリは町工場だけは避けたかった
カリの中で町工場のカーストはひくかったのだ
腹がたつ
今の会社に派遣で入り、何とかして社員になりたいと思っていた。
契約社員の時に社員の1人からものすごいパワハラをカリは受けていた
カリは月曜日に出勤しようとしたら毎回、涙があふれていたと言う
辞めようと思い会社側に相談した所、カリは契約社員では異例の部署移動でその災難から逃れる事が出来た
移動先の部署は居心地が良かった
7年間の契約社員を経て社員になった
社員試験に何度も落ちるカリに上司から情けをかけてもらったと言っている
上司の気持ちが少し理解できる。
カリは結構なぽんコツなのだが、持ち前の素直を武器になつかれると可愛かった
なつっこいわけではないと思うのだがカリには、男性にはあまり感じない可愛さが同居していた
製造業のライン作業は高給である
わたしも車のライン作業員をした時あるが中々しんどい仕事だと思う
同じ工程の繰り返しで、最初は色々試行錯誤して作業効率を上げる様に努力はできる
おおきく間違わなければ、リズムよく作業ができる
単純作業の為、色々考え事も出来るが同じ作業の繰り返しは少しずつ精神を削って行った記憶がある
丁度、わたしがライン作業員をしてる時は「リーマンショック」前だったのでかなりの高待遇だった
11ヶ月でおよそ250万円貯めてわたしはライン作業員を辞めた
長くライン作業員をしている年配の方々は、それ以上の高給取りであるがライン作業を30年やって定年を迎える事が
わたしには想像できなかった。
高給の対価として支払う代償は、否定は出来ないし人それぞれだがわたしには出来ない事だった
カリも同じ様なライン作業の正社員だった
ライン作業員になりカリは14年経ていた
長くライン作業をしながら時折よぎる自問自答は発酵していた
「このままで僕は大丈夫なのだろうか?」
それでも部署は居心地は良かった。
長く勤めていたので融通は利いたし人間関係も良好だった
悪くないと思っていた。
カリは週末になると自分の好きな世界の「荒野」にくりだして行った
音楽が好きだったカリはパンクやハードコアのLIVEに行き
前線に陣取り酒をあおりながら体をゆらした
何遍もLIVEに通う為、顔見知りもできていた
再会を喜んで杯を重ねる時、カリの心は満たされていた
好きなミュージシャンのLIVEには毎回顔をだしていた
当然、ミュージシャン側からすれば嬉しい限りだ
カリは好きな事に対しては真直ぐだった
大阪の二大巨頭の不夜城、三ッ寺会館&味園ビルで記憶が無くなり潰れるまで梯子酒をしていた
翌日、路上やラブホ、ゴミだらけの場所で目を覚まし
財布や携帯を度々なくしていた
LIVEハウスや不夜城で出会う人々はどこか欠落していて好きだった
ミュージシャンやBAR店主にはあらがえないナニカを感じた
酔い潰れたトサカ頭の人達、鋲だらけの革ジャンから露出した体の各部位には刺青が無造作に彫られていた
ピンクや水色のツインテールの耳たぶにはジャラジャラとボディピアスがゆらいでいた
露出されすぎた果実達が豊潤な匂いをバラまいていた
週末だけの外灯に群がっている時、カリの頭の中はお祭りだった
月曜日の朝、酒漬けの体をひきずりながら出勤する
頭で考えなくても体はライン作業を覚えている
すこしずつ頭の感覚が戻る頃に月曜日を終える
そこから週末までカリの「荒野」はおあずけだ

カリは意外と女性関係がおおかった
26歳の時に付き合った女性は「難波秘密クラブのキャストの女性」だった
流石に性技に精通していてカリに対してあらゆる快楽と開発が繰り返された
乳首はもちろん、ペ二バンを装着してもらいガンガン後ろからカリは突かれた
カリは途中から本当のペニスで突かれたいと思う様になった
カリは染まりやすかったのだ
カリが言うには、突かれる事によって女性の気持がわかるようになり
突かれている感情が何とも言えないらしい
「はるさんもペ二バンでいいから突かれて見て下さい」
「突かれてるアナルより、突かれてる現実に心が感じるんですよ」
「女になれます。女の気持ちよさ&受け入れ方がわかりますから」この時の語気は強い
彼女はサブカルなどにも詳しく、当時そこまでサブカルに興味も無かったカリは彼女に突かれる度にサブカルも注入されていった
ある時、カリはコンパで出会った女性をお持ち帰りした
ラブホに着いてさぁ踊ろうかと思った時
その豊満なおっぱいとは裏腹に彼女には神々しくペニスがはえていたのだ
いわゆるニューハーフだった
待望の本物のペニスを前にしたカリは、ひざまずき一瞥すると前のめりに跨りひたすら騎乗位で腰を振り続けていた
その時のカリのあえぎ声ともいえぬ奇声はアナルからオリュンポスの神々に響いていた
カリにとってのOPEN THE GATE
その門はそれ以降、カリにとって開きっぱなしになってしまった
背徳感の快楽にカリはあらがえなかった
カリはペニスの快楽を享受する為に、ライン作業で手に入れた高給を女装子やニューハーフの風俗に注ぎ込み
ひたすらに騎乗位で腰を振り続け背徳感と共に絶頂に達していった。
リュックサックの中には「ローション」「ディルド」「オナホール」「乳首バイブ」の
四種の性具を常備し、いかなる時でも準備オールオッケーにしていた
カリは心も体も開発されていた、完全に染められていた
イカ臭い理由と妙にセクシーな謎は解けた
腹がたつ

正社員にもなり開発された女性とは仕込まれるだけ仕込まれて別れていた
新しい門も開きっぱなしだったし、新しく彼女も出来て悪くない日常だった。
カリは生活が安定しだすと物欲の浪費に走っていた
カリは毎回、ファッションのジャンルが違う
革ジャンを着ていたり、アジアな派手な柄ものを着たりと思えば、白いシャツにサスペンダーとあらゆるジャンルの出で立ちを見せてくれる
理由を聞くとさらっと一言
「かたよりたくないから」
腹がたつ
釣りやBBQの道具、サブカルな漫画&フィギュアなどを買い漁った
荷物が増えすぎた為、荷物の為だけにコンテナを借りている
サブカルな場所に飲みに行くようにもなった
たまに風俗でネコになり突いてもらっていた
そんな日々にカリは満足していた
ぼんやりと彼女と新世界でBARを開きたいと考える様になった
惰性な日々の中、彼女と軽いいざこざがあり、はずみで投げた鍵が彼女の顔にあたってしまい
取り返しのつかない事になった
その件もあり彼女とは別れてしまう
彼女の残り香と共にふくらんだのが負債である
浪費と風俗でカリは負債をかかえていた
帳尻あわせに週末だけでもお祭りの「荒野」へくりだした
カリは30代後半にもかかわらず、今だに実家暮らしだ
1人暮らしもした事無く、もちろん地元尼崎からでたこともなかった
理由を聞くと
「出ない方が家賃かからなくていいじゃないですか」と少し上からくる
腹がたつ
尼崎に何度も遊びに行った事があるが、新世界や西成と重なる部分が多々あり似ているなぁと感じていた
幼稚園からの友人達も沢山いて友達には恵まれている様だった
回遊するテリトリーもそこまで広くなく、それはそれで過ごしやすくて幸せの様に思えた
個人的にだが30歳がすぎていて実家暮らしは、わたしの中である種のジャンルに該当していてる
カリは負債と新世界で店をやろうとしていた彼女と別れてまもなく
わたしの店にきたのだ
微量の死臭の理由もこの時にいっちょまえに絶望していたのだ
惰性と怠惰と快楽と実家暮らしの男が
ただただ自業自得の愚かな男が
いっちょまえに絶望しやがって
腹がたつ

2020年2月頃より少しずつ世界がコロナウィルスに侵されはじめていた
度重なるコロナウィルスの猛威に飲食店に対して時短営業や営業自粛の要請、それ以上は休業要請など
世界全体の経済や人流はコロナウィルスによってストップしていた
2020年の4月に日本全土で非常事態宣言がだされた
近所の中華屋の香港の鍋をふる音も聞こえなくなった
新世界一帯もまったく人影がなくなった
世界全体でその様な状態が続いたのだ
わたしは、ありあまる時間を今までまとめていなかった時間にあてた
最初は、良かったのだが長期にわたる非常事態宣言の日々がうつろに過ぎて行く度に、少しずつわたしも怠惰に侵されて行った
2ヶ月後、非常事態宣言は解除されたが染み込んだ怠惰にわたしはあらがえなくなっていった
2020年当初の予定や進む道が閉ざされた
それは全ての人達がそうだったのだろう
わたしはイベントスペース&飲み屋だったイマジネーションピカスペースをWithコロナのタイミングで中華そば屋に変更した
その理由や経緯はここでは割愛する
2020年10月、友人達の協力を経て【おかゆと中華そばランバダ新世界総本店】でスタートした
賛否両論があるだろうが今までのやり方では竜骨そのものが折れてしまう為、船首の向きを強引に新しい海にむけた
Withコロナの中でもカリは尼崎でBARを続けていた
普段、ライン作業をしながら夜はBAR営業である
かなり大変だろうな思っていた
そんな時、真面目な感じでカリから電話があった
どうやらおねだりのようだ
ピカスペースには屋根裏部屋があり、昔はそこで軽く生活していた
そこを片付けて店にしたのが2019年の年末、屋根裏の店は3カ月ほどで閉店してしまった
そこでBARをやりたいとの話だった
尼崎のBAR破壞部屋 震を移転したいとの相談だった
わたしはおおまかな理由を聞いて、三ッ寺会館で店をやるように勧めた
その方が今までの経緯や流れなどを組んでいてカリには良いと感じたからだ
カリは即答した
「嫌です。だって三ッ寺会館できあがってるじゃないですか。三ッ寺会館って名前出すのも嫌です」
まぁわからんでもないが、ピカスペースの上でやるのも似たようなもんだろうと思った
腹がたつ
わたしは大きく方向転換したばかりだったので、2つ条件をつけた
年内で尼崎を閉店させる事とクラウドファンディングをする事
これは自論だが何かを手に入れたいなら何かを手放さないと手に入らないと思っている
カリに対してそういう所を考えて欲しいと感じていたからだ
残り数カ月しかないのにカリは尼崎のBARを閉店させて屋根裏に移動して来た
案の定わたしが大変だった
屋根裏にBARカウンターを作り水平の取れてない床をはがしてある程度の水平をだした
元々は梯子であがる仕様だったのだが、危ないので階段を作らなきゃいけない
ランバダに変更する際、完全にここでのスクラップ&ビルドは終了したはずだった
「カルマなのか?わたしのカルマなのか?なんでだ?」そう思っていた
群馬からわざわざ一枚ものの木材を仕入れて、一発勝負の階段制作をした
てこずった てこずった
ようやく完成した時、カリが来て階段の上がり下がりをチェックしていた
「少しきしみますね 頭もぶつかりますね」
わたしはこの時こう思った
「こいつのカルマをわたしが引き受けたのか」

2020年の年末、【二度じめ】をコンセプトに屋根裏BAR 破壞部屋 震はOPENした
奇しくも同じ時期に半年ぶりの非常事態宣言が大阪に発令した時だった
この時はそこまでよめなかった。
長い長い飲食店の時短営業&休業の始まりだった
その期間、およそ11ヶ月である
わたしは一度目の非常事態宣言を経ていた事で、怠惰にわたしが侵食される前にすぐに動き出した
2021年6月、3~4ヶ月の期間をかけて東大阪の小阪と言う所に【ミユキ珈琲】と言う新規店舗をOPENさせた
ランバダは非常事態宣言の為、休業
カリには申し訳なかったが破壞部屋 震も休業してもらった
ちょくちょくそれでもカリはランバダに来て「はるさん 早くコロナ終焉して店開けたいです」とこぼしていた
カリのガス抜きも必要と感じ2人で飲んだり、カリの案内で三ッ寺会館にも稀に2人で行くようになった
三ッ寺会館はビル一棟が全部、飲み屋みたいな感じで癖の強い店主、癖の強い内装が散らばっていた
梯子酒なら三ッ寺会館で完結してしまう
腹が減ったら、近辺にある飯屋に行けばいい
完全にこの一帯で全てが成立している
確かにカリの言う様に出来上がってると感じた
カリもまたWithコロナに対しての生活で、惰性と怠惰がぶりかえしていた
そこに「愚か」も加わり
2人で飲む酒は愚かな飲み方だった
【ミユキ珈琲】での一仕事を終えたわたしは次の船首の向きを考えていた
開放感もあり充実感もあった為、そのアドバンテージを理由に凪の時間をゆっくり過ごしていた
気づいた時には遅かった
怠惰がしっかりとわたしを取り込んでいた
カリは惰性で店に来ていた
1日の日本での新規感染者数が10000人~25000人を超えていた
それでもLIVEハウスに繰り出し、密も密の三ッ寺会館でつぶれるまで飲んでいた
カリは「コロナが終われば」とつぶやき
今の惰性と怠惰の日々を自己肯定していた
非常事態宣言のある時、カリが来て「女の子呼んで飲みましょう」となった
10代の時良くやっていたノリだ
40代になろうと女の子と飲むのはテンションが上がる
最近、仲良くなった若く可愛らしい女の子が2人きた
わたしたちは大量に酒を準備して屋根裏でもてなした
ただただ楽しかった
「はるさん店やってる理由って何ですか?」と聞かれ
「女の子」と答えた
わたしは完全に愚かだった
カリと過ごす時にわたしは愚かであり怠惰に侵食されているのを、わたしを通して、カリを通してまざまざと感じる
愚かや惰性、怠惰 それはカリといる事ではっきりと自覚できる
その流れで飲む酒は脳を揺らし話した内容などは吐瀉物よりも飛散し饐えた内容だった
どこか2人で飲む事で愚かや、怠惰を共有して人はただただ愚かであると言う事を何度も突きつけられるのだが、
カリと過ごす時は、毎回「愚か」の沼にはまりこんで行った。
人は愚かで怠惰な人に厳しい
愚かで怠惰がそとに漏れ出している人に対して厳しい事を言う
酒のアテにして愚かな人を笑う
わたしもそうするしわからなくない
愚かな人間に会うとわたしはうれしい
ただ自分の愚かさと怠惰をなかなか表に出さない
愚かと怠惰を1人で所有して、できるだけ隠そうとする

わたしは、現在進行形だがコロナが1年と9ヶ月程、続くと思わなかった
一変したライフスタイルはひと時だけだと感じていた
初めて発令した非常事態宣言の時は少しワクワクもした
Withコロナが当たり前になりコロナが終了したらに目を向けた
しかし中々終了しない
東日本大震災の被災された人々
どこかの国で起きた災害
不特定多数でおこなわれるテロ
アフガニスタンの今
当事者でなければその真意を理解する事が出来ない
「思いやり」と言う心があり各々の器量で思いやる
そうやって助け合い今がある
世界中の人々が分け隔てなく影響を受け、手に入れた大義名分打倒コロナウィルス
全員が当事者だ
各国のコロナ対応、各地域のコロナ対応、企業のコロナ対応、店舗のコロナ対応、個人のコロナ対応
憎むべき敵コロナ、コロナで全てが変わった、コロナを理由にさまざまな出来事が世界中で勃発した
なにもかも共通認識のコロナで片付いている

わたしは店舗をしているので、非常事態宣言の中でも補償がされていた
数か月で終了と思っていた補償は11ヶ月にもおよんだ
何もしなくても補償が給付され続けた
膨大にある時間の中から何とか本流から支流をつくろうと思いベッドした新規店舗ミユキ珈琲
店舗しかやった事がないわたしからうまれるアイデアなどたかが知れていた
コロナ過の中ではあまりにもパンチが無いし真新しさも無い
社会性も備えてない
ひたすらコロナが終焉して前と同じ日常を求めるカリ
コロナ過の中、新しい試みを始める企業&店舗&個人
何もかもの受け皿コロナウィルス
この差異はでかいのか?
きっと誰もが何もしてないわけじゃない
コロナウィルスと同時に蔓延したのは怠惰な人間の性
浮き彫りになったのはさまざまな人間の多種多様な愚かさ
それは誰しもに等しく内包しているカルマ
わたしもカリも等しく同じだった

2021年10月の末およそ1年振りに全ての宣言や時短営業が解除された
開業して8年経ったピカスペースでの日々は、1年も遠ざかると俯瞰して見れた
ただただ流れて行く小さな世界は世界中に沢山あるのだろう
その時は、惰性だなと思うかもしれないが小さな世界は意外と尊いのだろう
近所の中華屋香港の鍋をふる音が小気味よく聞こえる
その音は深夜まで続いていた
カリも久々の営業もあり張り切っていた
懐かしい常連客の顔がそこにあった
屋根裏から乾杯の笑い声が聞こえる
せわしなくカリが動いていた
カリの店を屋根裏に誘致しておよそ1年、初めて1階ランバダと共に全稼働した初日だった
皆が愚かに酔い楽しい日だった。
あくる日、飲み過ぎて煮込んだタイ人の絶頂顔があった
ローションたっぷりのディルドをアナルに突っ込み、両方の乳首にはバイブがうなっている
オナホールをペニスに装着しながらカリはこう言った
「はるさん、やっぱり店って面白いですね」
わたしはディルドを強めにひきぬいて露わになったそれにわたしのカリをつっこんでみた
中はただただあたたかいぞぃ

カリの店詳細
556-0002
大阪市浪速区恵美須1-20-10屋根裏
破壞部屋 震 
営業日:金曜&土曜日
営業時間:18:00~朝方まで

Written by Haruki Kumagai
イマジネーションピカスペースWEB https://pikaspace.tumblr.com/

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