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『ヰタ・セクスアリス』を読んだ

2021/6/4、電車にて読了。

かなり最近まで『ヲタ・セクスアリス』だと勘違いしていたのだが、正しくは『ヰタ・セクスアリス』だった。“VITA SEXUALIS”、ラテン語で「性欲的生活」の意だ。4月からラテン語文法の授業を取っているので、なぜ“VITA”を「ヴィタ」ではなく「ウィタ」と読むのかがよく諒解された。どうもラテン語においては“W”の文字は存在せず、“V”の文字を[w]と音読するらしいのだ。題名の響きが印象的で、ずっと前から頭の片隅にはあった。だからブックオフで108円で売られているのを見かけた時、魅入られるように購入してしまった。

主人公の哲学教師・金井湛君が、自身の性欲の歴史を自伝的に淡々と描写するという設定の異色作である。今読むとむしろ上品なくらいなのだが、当時の掲載誌『スバル』は発禁処分を喰らったらしい。

当時の上流階級の文化や風俗をうかがい知ることができて興味深い一方で、今も昔も変わらぬ少年の心を思うと微笑ましい。読み終わってみると、きんとんを頬張る美丈夫を、これまた美しい下谷芸者が眺めているエピソードが心に残っている。現代の文脈では理解しにくい箇所に差し掛かると、詳しい注釈は重宝する。舞台となった根津・神田・本郷あたりにはよく足を運ぶので、今度文学散歩をしてみるのもいいかもしれない。

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