5/21-掌編 散歩途中

コンドームと思しき自販機の横を通り過ぎ目的地もなく歩く、カラスが頭上を飛んでいく、ここで買う人いるのかな、いるんだよな。


公衆電話を見ると、そうか公衆電話ってまだあるんだなぁと思うと同時に、君の番号にかけてみたくなる、ぼくの番号は着信拒否になっている君のスマホに、ぼくの連絡先から君の名前は削除したんだけど、番号は控えておいたんだ。まだ暗記はしてないけど。

あれ?連絡先から消えてない。登録し直したんだったか。覚えてない。そんなことが増えてきた。それともそんなことに気づけるようになったのか。


視界に入るものが変わっていく。
ぼくの記憶も変わっていく。


ヴォルデモート的な
ぼくは普通に言えるんだよね。

クィディッチ的な
ぼくはまだ知らないんだけど、ぼくはしたことないんだけど、ぼくはたぶん、誰に教えてもらわなくても、恋愛ってスポーツは得意、やらないけど。


何もしてないのにね
君はぼくを遠ざけた

君の気持ちはわかるよ
意中の女性の中身がぼくだったらね
そりゃ避けたくもなるよね

ぼくが恋愛をしてあげていればね
君の浅はかな願いは叶い終わって
ぼくらの関係は修復不可能な終わりを迎えていたろうさ

どのみち着信拒否はされているだろう

ぼくは君と敵同士になる気はなかった
ぼくは君を負かす気はなかった

君の番号はもう変わっているかもしれないな

ぼくは電話は好きじゃない

いつかまたばったり逢えたらいいね


行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。