6/7-掌編 微生物として生きていく

観たい映画、読みたい本、会いたい人がたまっていく
これはなんか貯金みたいだよ
まだ生きていられる、まだ生き延びてしまう、まだぼくは幸せみたいだよ

観れないし、読めないし、会えないし、お金はないのにね


微生物、なんてかっこいい響きなんだろうと、ぼくは思う。なんでだろうね。

ぼくに住む常在菌が
強く逞しく輝いていけるように
ぼくはその環境を整えていかなければならないと思う。


視点を変えれば
微生物も変わる
ぼくの存在意義も変わる

人も微生物だし

一人一人のその人としての尊厳は自分からみてのみのもので、各人にとって他人は無数の微生物で

他人の尊厳を守ることで自分の尊厳を守られるのだという当たり前を
誰に言われずとも学び取れる能力を有しているのがぼくらの頭脳だよ


あり過ぎる映画、あり過ぎる本、溢れる人、増えていくお金は流れないから、
奪い合うための人材としてのみ増えていく人々、その一人一人の時間、
増えていく映画、溢れかえる想い


ぼくは時間をつくらない

時は流れている

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。