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教科書は捨てない


倫理の教科書を読んでいる


教科書にはさ、本当に大事なことや答えが明確に記されている、そんなわけはないが、なんの役に立たない紙くず、ではないし、用が済んだら捨てるもの、ではないと思う、それを手にした、それが自分のものになった、意味や事実を忘れたくない


お金とは、
それ自体に価値があるわけではなく、それはただ目に見える数字に過ぎず、お金があるだけではお金は使えない、価値が別にあるからこそ、お金が使えるようになる、お金に価値があるわけではなく、そこにある価値の数がお金である


自分には
世界を動かすような力はない
だけれども世界は誰かの力で動いているわけではない
何かに動かされているわけではないし、
世界自身が勝手に動いているわけでもない
小さなぼくら一人一人の動きが世界の動きである

小さな力の集合でしか世界を動かすほどの大きな力は生まれない
力のない小さなぼくらが大きな力をつくるためのエネルギーを持っている

ぼくらにしかその力はない




かつて私は事実、

女子高生であった

遠い昔、一万年くらい前のような気さえする事実であるが、

その事実が本当にあったのか、今となってはもう定かではないくらいの遠い記憶、なのに、昨日のことのように思い起こせる矛盾だらけなぼくの心持ちである


十二年前、私は高校一年生だった
初めてiPhoneを手にし、それからずっとLINEのアカウントを登録してあるから
何度も何度も何度も消そうと思ったが、消してないから

だから確かめられるんだよなぁと
ぼくが本当に女子高生だった過去があるのか
かつての彼氏に聞いてみたくもなるよなぁと

彼はきっと幸せに生きていることだろう
是非とも話したい、彼の幸せな日々の話が聞きたい

人をダメにしてしまうほどの優しさを持っていた彼であった
誰にも気づかれないくらいに当然に誰にでも優しい人だった、それが彼の生き抜くための術だったのだろう

呼吸するように、感謝するのも忘れられちゃうくらいに、当たり前に優しい人であった

彼が一番優しくしたいのは、私にであったろうが、私はその優しさを受け取れないのであった

それは優しすぎだよって、怒るのであった
だけど彼に私の言葉の意味は理解できない
褒められていると思って
もっと優しくなるのだった

私はこの人に絶対に幸せであってほしいと思った

この人は私といては幸せになれない

私はこの人と幸せになってはいけないと思った
私はダメになってはいけない


私は彼のことを特別な感情で好きになってはいなかった

私は全部が好きだった
目に映るもの全てに興味があった

私のことを好きだと言ったごく稀なこの人のことを特別な気持ちで見るようになっただけだったのだと気づいていった

私には誰かの彼女になる能力はなかった



高校一年生の時の夏休みの課題で、
ガウタマ・シッダールタについて調べたことを思い出した

あの時の倫理の先生を思い出している
元気だろうか


一万年も生きると
また会いたい人がたくさんできますね


十二年しか経ってないけど、きっと、永遠くらい長いよ

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。